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7 1LDK キミをずっと愛し続ける
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ひとしきり泣いて落ち着いてくると、大輔が言いにくそうに切り出した。
「あの、さ。もうオレから硯くんの事愛しても――いい……?]
この期に及んでまでもそんな事を言う大輔。僕がいいと言わなければこの先ずっとキミからは触れてくれない気だったのか?
本当にキミは――。
「大輔は僕に沢山の愛をくれるんだろう? 僕からの制限は解消する。もう教師でも生徒でもないんだ。僕の愛をあげるから、大輔の愛をちょうだい?」
小首を傾げると大輔は顔に手を当てて天を仰いだ。
「――くはっ、もうもうもうっ硯くんのおねだり半端ない! もう一度言うけどオレは硯くんと離れる事はできない。だから一生愛される覚悟をしてね?」
男らしい顔でそんな事を言い口角を上げた。
思えばキミは最初からそうだった。キミは彼とはちがうのに、僕の小さなプライドの為に大輔の事を傷つけようとしてしまった。
「ごめんね……」
「ん」
ちゅっと音を立てて額にキスをくれた。何に対してのごめんなのか大輔は分かっている風だった。だとしたら、僕はどれだけ大輔の事を傷つけてきたのだろう――。
「オレはごめんより、『ありがとう』の方が好きだよ。硯くん、オレの好きを受け入れてくれてありがとう」
「僕も……僕の事好きになってくれてありがとう……」
「うん! じゃあ、その――これから頑張って愛します! 何分不慣れなのでまた失敗するかもしれませんが、何卒宜しくお願い申し上げます!」
「――何それ……? あは、あはは。先は長いんだし、ゆっくりいこう? 僕は大輔とならなんだっていいんだ。それに次は多分ちゃんとできる、と思う……」
最後の方は恥ずかしくなって俯いてしまった。
「うっ……。硯くんツンデレだとは思ってたんだけど……もうデレしかないよね。可愛すぎて死にそう……っ」
「やだ、死なないで!?」
僕の必死な様子に目を丸くする大輔。それを見て僕の方も何だかおかしくなって笑いが込み上げてきた。
「「あはは」」
ふたりで顔を見合わせ笑いあって、僕はこれでもかってくらい幸せを感じていた。
あんなに辛かった卒業の日が、僕の誕生日で僕たちの恋の本当の始まりの日になった。
大輔は卒業して高校生ではなくなった。この学園に通う事はもう二度とない。
*****
授業を終え、学園から10分程の距離の自宅へと急ぐ。
玄関ドアを開けるとそこには愛しい恋人の笑顔があった。
「おかえり」
「ただいま」
もう何度も繰り返した恋人とのやりとり。
キミは夕食の準備をしてくれていたのだろうエプロンをつけていた。
冗談で買ってプレゼントしたフリルのついたエプロンをキミは喜んで使ってくれる。それを見る度こっちの方が何だか照れてしまうのにキミはそんな僕を見るのを楽しんでいるフシがある。本当にまったくもう……好き。
照れて立ち止まったままの僕の事をキミは愛おしそうに見つめ、両手を広げるんだ。
抱き合ってキミの温もりを感じ、唇を重ねる。
ほんのりと、直前に味見したのであろうお出汁の優しい味に口元が綻ぶ。
大輔が高校を卒業して僕たちは同棲を始めた。
あれから5年も経つというのに未だに毎日が嬉しくてくすぐったくて幸せだ。
キミからの愛情がまるでお日さまのように優しく僕に降り注いでいる。
『1LDK』諦めと呪いの言葉だったのに、今では喜びと祝福の言葉になった。
僕の心の中には愛しい小柳大輔が住み続ける。
いくつになっても決して出て行く事はない。
そして僕もキミの中に生涯住み続けるだろう。
僕たちふたりはお互いがお互いの終の棲家となった―――。
-終-
「あの、さ。もうオレから硯くんの事愛しても――いい……?]
この期に及んでまでもそんな事を言う大輔。僕がいいと言わなければこの先ずっとキミからは触れてくれない気だったのか?
本当にキミは――。
「大輔は僕に沢山の愛をくれるんだろう? 僕からの制限は解消する。もう教師でも生徒でもないんだ。僕の愛をあげるから、大輔の愛をちょうだい?」
小首を傾げると大輔は顔に手を当てて天を仰いだ。
「――くはっ、もうもうもうっ硯くんのおねだり半端ない! もう一度言うけどオレは硯くんと離れる事はできない。だから一生愛される覚悟をしてね?」
男らしい顔でそんな事を言い口角を上げた。
思えばキミは最初からそうだった。キミは彼とはちがうのに、僕の小さなプライドの為に大輔の事を傷つけようとしてしまった。
「ごめんね……」
「ん」
ちゅっと音を立てて額にキスをくれた。何に対してのごめんなのか大輔は分かっている風だった。だとしたら、僕はどれだけ大輔の事を傷つけてきたのだろう――。
「オレはごめんより、『ありがとう』の方が好きだよ。硯くん、オレの好きを受け入れてくれてありがとう」
「僕も……僕の事好きになってくれてありがとう……」
「うん! じゃあ、その――これから頑張って愛します! 何分不慣れなのでまた失敗するかもしれませんが、何卒宜しくお願い申し上げます!」
「――何それ……? あは、あはは。先は長いんだし、ゆっくりいこう? 僕は大輔とならなんだっていいんだ。それに次は多分ちゃんとできる、と思う……」
最後の方は恥ずかしくなって俯いてしまった。
「うっ……。硯くんツンデレだとは思ってたんだけど……もうデレしかないよね。可愛すぎて死にそう……っ」
「やだ、死なないで!?」
僕の必死な様子に目を丸くする大輔。それを見て僕の方も何だかおかしくなって笑いが込み上げてきた。
「「あはは」」
ふたりで顔を見合わせ笑いあって、僕はこれでもかってくらい幸せを感じていた。
あんなに辛かった卒業の日が、僕の誕生日で僕たちの恋の本当の始まりの日になった。
大輔は卒業して高校生ではなくなった。この学園に通う事はもう二度とない。
*****
授業を終え、学園から10分程の距離の自宅へと急ぐ。
玄関ドアを開けるとそこには愛しい恋人の笑顔があった。
「おかえり」
「ただいま」
もう何度も繰り返した恋人とのやりとり。
キミは夕食の準備をしてくれていたのだろうエプロンをつけていた。
冗談で買ってプレゼントしたフリルのついたエプロンをキミは喜んで使ってくれる。それを見る度こっちの方が何だか照れてしまうのにキミはそんな僕を見るのを楽しんでいるフシがある。本当にまったくもう……好き。
照れて立ち止まったままの僕の事をキミは愛おしそうに見つめ、両手を広げるんだ。
抱き合ってキミの温もりを感じ、唇を重ねる。
ほんのりと、直前に味見したのであろうお出汁の優しい味に口元が綻ぶ。
大輔が高校を卒業して僕たちは同棲を始めた。
あれから5年も経つというのに未だに毎日が嬉しくてくすぐったくて幸せだ。
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『1LDK』諦めと呪いの言葉だったのに、今では喜びと祝福の言葉になった。
僕の心の中には愛しい小柳大輔が住み続ける。
いくつになっても決して出て行く事はない。
そして僕もキミの中に生涯住み続けるだろう。
僕たちふたりはお互いがお互いの終の棲家となった―――。
-終-
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