6 / 9
5 大輔 三年生
しおりを挟む
幼さも無くなりすっかり青年の顔になった大輔。顔だけじゃなく身体も成長し、僕の背をいつのまにか追い越してしまっていた。少しだけ高い目線になんだか慣れない。
大輔の甘えたように「センセ」と僕を呼ぶ少しだけ掠れた声が嫌い。
僕が手を伸ばすとそれに応えて繋いでくれる大きな手が嫌い。
僕の『待て』を上手に守れる忠犬ぶりが嫌い。
大輔がくれる花が嫌い。
大輔の事を想うだけで熱くなる身体が嫌い。
――――嘘。全部好き……っ。
僕の心に住み着いてしまったキミ。気が付けば僕の心はキミでいっぱいだ。
もう彼の気配なんて微塵もない。
いや……本当は最初から彼の幻影なんて存在しなかったんだ。ただ僕が彼の事を綺麗さっぱり忘れてしまえば、彼らが言うように自分がビッチになってしまったようで嫌だった。僕は捨てられてもずっとずっと彼の事が好きで、僕と彼との事は確かに恋だったのだと思いたかったんだ。だって、そうじゃなきゃ自分があまりにも惨めすぎる……。
復讐だって、本当は最初からそんなつもりなんかなかった。
ただ大輔と付き合う為の言い訳だ。
大輔が好き。好きだから付き合いたい。だけど、きっと卒業と同時に別れはきてしまう。期間限定の恋。
――だから僕は復讐をするという言い訳を自分自身にした。そして卒業時には僕の方から別れてあげようって思ったんだ。
大輔は彼とは違う。同じ別れるにしてもきっと大輔は言い出せないだろう。
それなら年上の僕から言わなきゃ――。
だから、だからさ、思い出をください。
一度だけでもいいから抱いて欲しい――。
このまま何もないままお別れしたら僕の中に大輔は残っても、大輔の中に僕は残れない。本当は僕の事なんて綺麗に忘れてもらった方がいいに決まってる。だけど僕の事を大輔に覚えていて欲しいと思った。
あんな中途半端なものじゃなくて、ちゃんと最後まで……大輔に僕の中で気持ちよくなってもらって、僕の中に大輔の熱を放って欲しい……。
本当は直接がいいけど、それは教師の立場からも言えない。
こんな時だけ教師だなんて、僕はどこまでも自分勝手だ。
3年前のあの日、本当は大輔の笑顔にひと目惚れした。
大輔からの告白がすごく嬉しかった。
大輔が僕の事を花のようだと言ってくれて嬉しかった。
大輔の話は何でも嬉しくて楽しくてもっともっと聞いていたかった。
もっともっと、もっとも――っと大輔とキスをして抱き合って、好きって言いたかった。
だけど僕は大輔が卒業する時別れがくるのを分かっていたから、深入りはしないって決めていたんだ。結局はどっぷりハマってしまったんだけどね……。
大輔……好き、だったよ――。
大輔が卒業するまであと――――――。
大輔の甘えたように「センセ」と僕を呼ぶ少しだけ掠れた声が嫌い。
僕が手を伸ばすとそれに応えて繋いでくれる大きな手が嫌い。
僕の『待て』を上手に守れる忠犬ぶりが嫌い。
大輔がくれる花が嫌い。
大輔の事を想うだけで熱くなる身体が嫌い。
――――嘘。全部好き……っ。
僕の心に住み着いてしまったキミ。気が付けば僕の心はキミでいっぱいだ。
もう彼の気配なんて微塵もない。
いや……本当は最初から彼の幻影なんて存在しなかったんだ。ただ僕が彼の事を綺麗さっぱり忘れてしまえば、彼らが言うように自分がビッチになってしまったようで嫌だった。僕は捨てられてもずっとずっと彼の事が好きで、僕と彼との事は確かに恋だったのだと思いたかったんだ。だって、そうじゃなきゃ自分があまりにも惨めすぎる……。
復讐だって、本当は最初からそんなつもりなんかなかった。
ただ大輔と付き合う為の言い訳だ。
大輔が好き。好きだから付き合いたい。だけど、きっと卒業と同時に別れはきてしまう。期間限定の恋。
――だから僕は復讐をするという言い訳を自分自身にした。そして卒業時には僕の方から別れてあげようって思ったんだ。
大輔は彼とは違う。同じ別れるにしてもきっと大輔は言い出せないだろう。
それなら年上の僕から言わなきゃ――。
だから、だからさ、思い出をください。
一度だけでもいいから抱いて欲しい――。
このまま何もないままお別れしたら僕の中に大輔は残っても、大輔の中に僕は残れない。本当は僕の事なんて綺麗に忘れてもらった方がいいに決まってる。だけど僕の事を大輔に覚えていて欲しいと思った。
あんな中途半端なものじゃなくて、ちゃんと最後まで……大輔に僕の中で気持ちよくなってもらって、僕の中に大輔の熱を放って欲しい……。
本当は直接がいいけど、それは教師の立場からも言えない。
こんな時だけ教師だなんて、僕はどこまでも自分勝手だ。
3年前のあの日、本当は大輔の笑顔にひと目惚れした。
大輔からの告白がすごく嬉しかった。
大輔が僕の事を花のようだと言ってくれて嬉しかった。
大輔の話は何でも嬉しくて楽しくてもっともっと聞いていたかった。
もっともっと、もっとも――っと大輔とキスをして抱き合って、好きって言いたかった。
だけど僕は大輔が卒業する時別れがくるのを分かっていたから、深入りはしないって決めていたんだ。結局はどっぷりハマってしまったんだけどね……。
大輔……好き、だったよ――。
大輔が卒業するまであと――――――。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~
大波小波
BL
第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。
ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。
白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。
雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。
藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。
心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。
少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる