1LDKの恋

ハリネズミ

文字の大きさ
上 下
4 / 9

② @大輔

しおりを挟む
 そんな事があった日、珍しく職場の飲み会で先生の帰りが遅くなった。
 いつも夜はオレから電話したりしていたけど、流石に迷惑だと思い今日は早目に寝ようとベッドに入ったところだった。
 マナーモードにしていたスマホが着信を知らせ震えた。
 23時過ぎに珍しくかかってきたセンセーからの電話。
 酔っぱらっているのか少し呂律が回っておらず、話してる内容も支離滅裂なところがあった。だけど、センセーの話の中に出て来た『1LDK』。オレはこれを聞いて昼間聞いたセンセーと元彼の話を思い出していた。
 センセーが愛すのはオレが高校生でいる間だけ。
 昼間の話がなければオレの方が卒業したら捨てられるって思っていたかもしれない。だけど、多分違う。センセーが捨てられるって思ってるんだ。
オレの気持ちがセンセーにちっとも届いていなかった事が寂しくて、それと同時にそんな事を考えなくちゃいけなかったセンセーの気持ちを思うと胸が痛くて痛くて堪らなかった。


 数日後、センセーの様子が少しおかしいと感じた。
 オレがいつものようにセンセーの所に行くと、どこかその瞳は濡れていて、だけど身体は強張っているような、そんな感じだ。
 訊いても教えてはくれない事は分かっていたから、気づかないフリでセンセーの出方を見る事にした。
 素知らぬ顔でソファーに座ると、センセーはそっとオレにしなだれかかってきて、誘うようにオレの事を見た。
 こないだ昔の話を聞いたばかりだけど、そんな姿を見てもやっぱりセンセーがビッチだなんて思えなかった。
 センセーの身体が僅かに震えていたからだ。
 何で急にそんな事をするのか、何に対して震えているのか、分からなくて戸惑ったけどオレはセンセーの事を愛したいと思ったから、センセーがそれを望むなら、とこくりと頷いた。

 それはセンセーのリードで始まった。
 キス自体初めてなのに大人のキスに息ができなくて苦しい。
 センセーには翻弄されっぱなしだ。だけどオレだってやられっぱなしではいなかった。

 センセーの傷ついた心を癒してあげたい。
 センセーの中をオレでいっぱいにして嫌な事全部忘れさせてあげたい。
 そんな想いを込めて大事な宝物を扱うように優しく触れた。
 聞こえてくるセンセーの色っぽい吐息に自分の欲を優先させてしまいそうになるけど、必死に我慢してセンセーに優しく触れ続けた。
 途中くすぐったかったのかセンセーが笑ったので、オレは少しだけ拗ねて口を尖らせた。
 真剣なのにすぐ子ども扱いする……ひどいや。

「もっと触って? 気持ちいいよ……」

 拗ねるオレの手を取って指先に唇を寄せた。
センセーのオレを見る瞳が優しくて、色っぽくて。
 気を取り直して続きをする。
 センセーの硬く閉ざされた後ろを執拗に解し、猛りまくって限界に近いモノを挿入れようとして、少し入ったところでセンセーが「痛い……」って小さく啼いたんだ。

 オレはその声を聞いて、まだ半分も挿入っていなかったけどオレのモノは完全に力を失った。

 感じからして多分これはオレのモノが痛かったわけじゃなさそうだった。
 きっとこれはセンセーの心の痛み。
 センセーは本当はオレとこういう事したいって思っていなかった?

 センセーはオレのモノが復活の兆しもないのを見て、慌てて何度も「痛くないよ。大丈夫だから」って言ったけど、今のセンセーに本当に必要なのはコレじゃないって思えたから、オレは黙ってセンセーの事を抱きしめ続けた。

 センセ、好きだよ。愛してる。



 ――――だからお願い。オレの事……捨てないで……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

愛しているかもしれない 傷心富豪アルファ×ずぶ濡れ家出オメガ ~君の心に降る雨も、いつかは必ず上がる~

大波小波
BL
 第二性がアルファの平 雅貴(たいら まさき)は、30代の若さで名門・平家の当主だ。  ある日、車で移動中に、雨の中ずぶ濡れでうずくまっている少年を拾う。  白沢 藍(しらさわ あい)と名乗るオメガの少年は、やつれてみすぼらしい。  雅貴は藍を屋敷に招き、健康を取り戻すまで滞在するよう勧める。  藍は雅貴をミステリアスと感じ、雅貴は藍を訳ありと思う。  心に深い傷を負った雅貴と、悲惨な身の上の藍。  少しずつ距離を縮めていく、二人の生活が始まる……。

好きな男が他の女と結婚する

和泉奏
BL
俺達は、ずっと友達で、同級生で、…男同士で、 だから…「好き」だなんて感情、言葉にできるはずもなかった。 社会人×社会人

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

忘れられない君の香

秋月真鳥
BL
 バルテル侯爵家の後継者アレクシスは、オメガなのに成人男性の平均身長より頭一つ大きくて筋骨隆々としてごつくて厳つくてでかい。  両親は政略結婚で、アレクシスは愛というものを信じていない。  母が亡くなり、父が借金を作って出奔した後、アレクシスは借金を返すために大金持ちのハインケス子爵家の三男、ヴォルフラムと契約結婚をする。  アレクシスには十一年前に一度だけ出会った初恋の少女がいたのだが、ヴォルフラムは初恋の少女と同じ香りを漂わせていて、契約、政略結婚なのにアレクシスに誠実に優しくしてくる。  最初は頑なだったアレクシスもヴォルフラムの優しさに心溶かされて……。  政略結婚から始まるオメガバース。  受けがでかくてごついです! ※ムーンライトノベルズ様、エブリスタ様にも掲載しています。

処理中です...