18 / 34
第三章 小さな願い (少年視点)
二話 ①
しおりを挟む
ゆっくりと意識が覚醒していく。どうやら僕は眠っていたようだ。だけどベッドに入った記憶はないんだけどな……。ソファーでうたた寝してしまってノイア様がベッドに運んでくださったんだろうか。だとしたら申し訳ないな。
まだ完全に覚醒しきらないぽやぽやの頭を軽く振り、両手で目を擦った。するとすぐにその手を止められた。
「擦ってはいけないよ」
────え? ノイア様であるはずの声が違って聞こえ焦る。ズイ様でもなく──。目をしっかりと開けて、声の主を見て固まった。
「どうしたの? 僕だよ。ルイスだよ。忘れちゃったの? つれないなぁ。愛しいきみとやっと一緒にいられるんだ。もっと喜んでくれないと。きみだって僕のことを恋しく思ってくれていたんだろう? ここには誰もきみを怒る人なんていないんだから素直に喜んでくれていいんだよ」
そう言ってルイス様は僕を抱きしめた。少しの身じろぎも許さないとばかりにギュッと。強く抱きしめられて痛いとかではなく、なんだか背筋がゾワゾワとして気持ちが悪い。好意を向けられていると思うのに、どろりとした嫌なものが全身に纏わりつくようで──本当に気持ち悪い。
なんでこんなことに? そういえば僕は本当にうたた寝をしてベッドに──? ──違う。僕がいた部屋のドアがノックされて、それで現れたのはルイス様で──。えっとそれからどうなったんだっけ……?
抱きしめられたままもぞりと動き、なんとか目だけで辺りの様子を伺ってみた。
目が覚めたときから違和感はあったけれど、どうやらここはノイア様のお屋敷じゃないみたい。ノイア様のお屋敷はすべてのインテリアが統一されていたけど、ここはぜんぜん違う。インテリアも気配も匂いさえもなにもかも。
「…………!」
パクパクと必死で口を動かしたが声が出るわけではないので、僕の言いたいことはルイス様には伝わらなかった。
「よかった。きみが素直だと僕も嬉しいよ」
僕がルイス様と一緒にいられて嬉しいって言ってるみたいに思われたみたいだ。そんなこと少しも思っていないのに、笑顔でそんなことを言うルイス様が僕は怖かった。以前お嬢様が僕をお怒りになったのはルイス様が関係しているのは知っていた。だからといって文句を言うつもりはないけれど、こんな風に僕の気持ちを勝手に決めつけて必要以上に身体に触れられると困ってしまう。
ふとノイア様の笑顔が頭に浮かんだ。ノイア様に助けてって言ったら助けてくださるだろうか……。それとも僕をルイス様の元へやったのはノイア様? あのお屋敷は領主様のお屋敷、警備だって厳重なはず。ならノイア様もご存じだってこと? だとしたら僕はルイス様の元にいるべきなんだろうか……。それに僕だってノイア様の元から去るつもりだったわけだし……予定とは違うけれどそれがノイア様の幸せに繋がるなら──。
僕はルイス様の腕の中で、諦めたみたいに力を抜いた。
まだ完全に覚醒しきらないぽやぽやの頭を軽く振り、両手で目を擦った。するとすぐにその手を止められた。
「擦ってはいけないよ」
────え? ノイア様であるはずの声が違って聞こえ焦る。ズイ様でもなく──。目をしっかりと開けて、声の主を見て固まった。
「どうしたの? 僕だよ。ルイスだよ。忘れちゃったの? つれないなぁ。愛しいきみとやっと一緒にいられるんだ。もっと喜んでくれないと。きみだって僕のことを恋しく思ってくれていたんだろう? ここには誰もきみを怒る人なんていないんだから素直に喜んでくれていいんだよ」
そう言ってルイス様は僕を抱きしめた。少しの身じろぎも許さないとばかりにギュッと。強く抱きしめられて痛いとかではなく、なんだか背筋がゾワゾワとして気持ちが悪い。好意を向けられていると思うのに、どろりとした嫌なものが全身に纏わりつくようで──本当に気持ち悪い。
なんでこんなことに? そういえば僕は本当にうたた寝をしてベッドに──? ──違う。僕がいた部屋のドアがノックされて、それで現れたのはルイス様で──。えっとそれからどうなったんだっけ……?
抱きしめられたままもぞりと動き、なんとか目だけで辺りの様子を伺ってみた。
目が覚めたときから違和感はあったけれど、どうやらここはノイア様のお屋敷じゃないみたい。ノイア様のお屋敷はすべてのインテリアが統一されていたけど、ここはぜんぜん違う。インテリアも気配も匂いさえもなにもかも。
「…………!」
パクパクと必死で口を動かしたが声が出るわけではないので、僕の言いたいことはルイス様には伝わらなかった。
「よかった。きみが素直だと僕も嬉しいよ」
僕がルイス様と一緒にいられて嬉しいって言ってるみたいに思われたみたいだ。そんなこと少しも思っていないのに、笑顔でそんなことを言うルイス様が僕は怖かった。以前お嬢様が僕をお怒りになったのはルイス様が関係しているのは知っていた。だからといって文句を言うつもりはないけれど、こんな風に僕の気持ちを勝手に決めつけて必要以上に身体に触れられると困ってしまう。
ふとノイア様の笑顔が頭に浮かんだ。ノイア様に助けてって言ったら助けてくださるだろうか……。それとも僕をルイス様の元へやったのはノイア様? あのお屋敷は領主様のお屋敷、警備だって厳重なはず。ならノイア様もご存じだってこと? だとしたら僕はルイス様の元にいるべきなんだろうか……。それに僕だってノイア様の元から去るつもりだったわけだし……予定とは違うけれどそれがノイア様の幸せに繋がるなら──。
僕はルイス様の腕の中で、諦めたみたいに力を抜いた。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
僕の罪と君の記憶
深山恐竜
BL
——僕は17歳で初恋に落ちた。
そしてその恋は叶った。僕と恋人の和也は幸せな時間を過ごしていたが、ある日和也から別れ話を切り出される。話し合いも十分にできないまま、和也は交通事故で頭を打ち記憶を失ってしまった。
もともと和也はノンケであった。僕は恋仲になることで和也の人生を狂わせてしまったと負い目を抱いていた。別れ話をしていたこともあり、僕は記憶を失った和也に自分たちの関係を伝えなかった。
記憶を失い別人のようになってしまった和也。僕はそのまま和也との関係を断ち切ることにしたのだが……。
【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー
葉月
BL
オメガバース。
成瀬瑞稀《みずき》は、他の人とは違う容姿に、幼い頃からいじめられていた。
そんな瑞稀を助けてくれたのは、瑞稀の母親が住み込みで働いていたお屋敷の息子、晴人《はると》
瑞稀と晴人との出会いは、瑞稀が5歳、晴人が13歳の頃。
瑞稀は晴人に憧れと恋心をいただいていたが、女手一人、瑞稀を育てていた母親の再婚で晴人と離れ離れになってしまう。
そんな二人は運命のように再会を果たすも、再び別れが訪れ…。
お互いがお互いを想い、すれ違う二人。
二人の気持ちは一つになるのか…。一緒にいられる時間を大切にしていたが、晴人との別れの時が訪れ…。
運命の出会いと別れ、愛する人の幸せを願うがあまりにすれ違いを繰り返し、お互いを愛する気持ちが大きくなっていく。
瑞稀と晴人の出会いから、二人が愛を育み、すれ違いながらもお互いを想い合い…。
イケメン副社長秘書α×健気美人訳あり子連れ清掃派遣社員Ω
20年越しの愛を貫く、一途な純愛です。
二人の幸せを見守っていただけますと、嬉しいです。
そして皆様人気、あの人のスピンオフも書きました😊
よければあの人の幸せも見守ってやってくだい🥹❤️
また、こちらの作品は第11回BL小説大賞コンテストに応募しております。
もし少しでも興味を持っていただけましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる