お前の好きは軽すぎる

ハリネズミ

文字の大きさ
上 下
7 / 10

重すぎる男(3)

しおりを挟む
 そこに立っていたのは珍しく不機嫌な顔をした相模だった。

「――相模……。どうして……?」

「それはこっちのセリフです」

 相模は不機嫌な顔のままずんずんと部屋に入って来た。
 俺は突然の事で止める事もできなくて、相模の進入を許してしまう。

「約束しましたよね? 先輩とふたりっきりで食事できるの楽しみにしてたんですよ? なのに……どうして別の人が来るんですか? どうして俺を別の人に譲ったりするんですか? どうして? 先輩答えて? どうしてですか?」

 相模の怖いぐらいの質問攻めにたじろぎ黙っていると、相模が俺の両腕を掴みぐいぐいと押していき、ソファーの上に押し倒される形で倒れてしまった。

「いくら俺に興味がなくてもこれはあんまりです。ひどすぎます」

 そう言って俺の上に覆い被さったままくしゃりと顔を歪めた。

「相模?」

 俺は名前を呼ぶ事しか出来なくて、相模の顔をじっと見つめた。

 相模の顔が近づいてきて、あっと思った時には相模の口で乱暴に口を塞がれていた。

 ぼろぼろと涙を溢しながら唇を貪られ、舌を割り入れられる。
 口内を動き回る相模の舌。口の中が熱い。
 こんな時だというのに相模がもたらす甘い痺れに下腹部が疼きをおぼえる。

「ん」

 思わず漏れる甘い吐息。

 俺を押さえつける力が強くて、相模の下から逃れる事が出来ない。

 俺の気持ちなんかお構いなしに動き回る相模の舌。
 こんな風に奪われてしまうのはキスの相手は相模なのに、怖いと感じる。

 なんでこんな事に?

 俺の瞳からも涙が溢れた。
 それを見て相模は我に返ったのか、ばっと身体を離した。

「先輩……俺……すみませんでした」

 俯きそう言うと相模は部屋を飛び出して行った。
 ひとり残される俺。




 追わなくちゃ。
 相模を追いかけて話をしなくちゃ。
 今度は逃げちゃダメだ。

 キスの意味を相模に訊かなくちゃ。

 震える身体に喝を入れ、相模の後を追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君はキラキラを背負ってない

寺音
BL
高校二年生、空賀昴(くがすばる)は惚れっぽく、キラキラ王子様系イケメン男子に一目惚れしては短時間でフラれる、ということを繰り返していた。そしてその度に同級生、大木麦人(おおきむぎと)に失恋の愚痴に付き合ってもらっていた。 ある日昴は自分の恋愛遍歴を知る姉に、「いっそ麦人くんと恋愛すれば?」と提案される。 どう考えても「タイプ」じゃない麦人と恋愛なんてあり得ないと答える昴だが……? 『フラれた男と慰める男』をテーマにした全年齢BLアンソロジー『傘をさしかけるひと』に寄稿した作品です。 告知サイト↓ http://kasawosasikakeruhito.ltt.jp/ こちらの表紙イラストは、云野サク様(https://yunomizu33.wixsite.com/website)に描いていただきました。 素敵なイラストをありがとうございました。

用法用量を守って正しくお使いください

煮卵
BL
エリートリーマン✖️老舗の零細企業社長 4月2日J庭にて出した新刊の再録です ★マークがHシーン お気に入り、エールいただけると嬉しいです

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

愛人は嫌だったので別れることにしました。

伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。 しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

勃起できない俺に彼氏ができた⁉

千歳
BL
大学三年生の瀬戸結(セト ユイ)は明るい性格で大学入学当初からモテた。 しかし、彼女ができても長続きせずにすぐに別れてしまい、その度に同級生の羽月清那(ハヅキ セナ)に慰めてもらっていた。 ある日、結がフラれる現場に出くわしてしまった清那はフラれて落ち込む結を飲みへと誘う。 どうして付き合ってもすぐに別れてしまうのかと結に尋ねてみると、泥酔した彼はぽつりと言葉を零した。 「……勃起、できないから」 衝撃的なその告白と共に結は恋愛体質だから誰かと付き合っていたいんだとも語った。 酔っ払いながら泣き言を零す結を見ながら清那はある一つの案を結に提示する。 「誰かと付き合っていたいならさ、俺と付き合ってみる?」

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

ダメリーマンにダメにされちゃう高校生

タタミ
BL
高校3年生の古賀栄智は、同じシェアハウスに住む会社員・宮城旭に恋している。 ギャンブル好きで特定の恋人を作らないダメ男の旭に、栄智は実らない想いを募らせていくが── ダメリーマンにダメにされる男子高校生の話。

処理中です...