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恋する金平糖

幕間 金平糖の思い出

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「金平糖ってさ、どうやって作るか知ってるか?」

 俺を拾ってすぐのころ、静夜さんが俺に言った言葉だ。簡単に言うとザラメなどを核に加熱しながら溶かした糖蜜を少しずつかけて、かき混ぜて作られるのだと教えてくれた。小さな突起ができてあの形になるまで数週間。大事に大事に作られる。そして、金平糖は『糖花』とも呼ばれることもあるのだとか。
 確かに花のようにかわいく美しい。
 そんな金平糖に俺に似てるって静夜さんは言った。だから腐るなって、まだできあがる途中なんだからって。色々なでこぼこがあって初めて立派な金平糖になるんだって。そして俺が沢山胸焼けするくらい甘い糖蜜をかけてあげるから綺麗な金平糖になれ……って。
 なに言ってるんだ? って睨みながらも、本心ではどんなに嬉しかったか。そう言って口の中に放り込むようにしてくれた金平糖は驚くほど甘くて――泣きたくなった。
 こんななにも持たない俺が綺麗で甘いお菓子みたいだって。
 でも俺はただでられる花ではなく、あなたの傍で瞬き夜空を彩る星でありたいと願う。

 そんな身の程知らずな俺の願い。
 それから俺の部屋にはあなたから貰った手つかずのままの、金平糖の入った瓶がいくつも並んでいる――。


*****

「ちょっと目閉じて?」

「は? なんでですか?」

 突然そんなことを言われてどこかにやついた笑顔を向けられ、目を閉じるように言われ仕方なく目を閉じると、唇にあたるものが――。そしてコロリと口の中に広がった甘くて優しい味。
 驚いて目を開けると、至近距離の静夜さんの綺麗な笑顔に心臓がバクバクと煩く騒ぐ。
 こんなのいつもの悪戯――、特別な意味なんてない――。揶揄われただけだ。

「――金平糖。なにを遠慮してるのか知らないけど甘いの好きだったろ? 俺があげたやつ食べてないみたいだからさ」

 そう言って悪戯が成功したみたいに笑うから、

「こ、子どもじゃないんですからっ」

「ほら、これ星に見えないか? 前に糖花って呼ばれることもあるから花だって言ったけどさ、やっぱ星だよなー。そう思ったらもう星以外には見えなくてさ」

 瓶から新しく金平糖を摘まみ上げ、俺に掲げて見せる。

「俺、名前に夜が入ってるからかが好きなんだよね。だから金平糖これも好きになった」

 わざとなのかなんなのか、そう言って金平糖にちゅっと唇を寄せて見せた。

 俺のことを金平糖に似てるって言った口で、星が好きだから金平糖が好きだなんて、まるで俺のことを好きだって言われてるみたいでドキドキと心臓が煩い。日+星、で『暒』俺の名前。

 真っ赤になる顔を意識して、もっと赤くなるから気づかれないように怒ったフリをしてそっぽを向くんだ。

 本当に、本当にもう、この人のこういうところが――本当に……嫌いすき




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