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3 付き合うって何すんの?
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あの後何をどうしゃべったのか、どうやって帰って来たのか分からないが俺は今自分のベッドの上で大の字で寝っ転がっていた。
頭がふわふわとして気分がいいのは何も酒のせいだけではないだろう。
俺と和が恋人……?マジで?
くふふふふと気持ち悪い笑い声がひとりの部屋に響く。
「あ!」
そこで重大な事を思い出す。
付き合うって何すんの?
今まで付き合った人は数えきれないくらい居る、事になっている。だけど、実際付き合ったのは一人だけで、手も握らないし勿論キスなどもした事がない。デートどころか彼女と二人ででかけた事もない。
それに比べて和は相当な人数と付き合ってきた。だから和に訊けばいいのかもしれないが、それだけはしたくなかった。
和と恋人になれて浮かれておかしなテンションだった俺も、落ち着いてくるとある事が気になり始めた。
今まで見ないようにしてきた自分の中の嫉妬心が自己主張して仕方がないのだ。
和主導でデートなんかしたって、いつ誰と来たんだろうか、そいつとはどんな風に何を話して笑い合って……と考えてしまう。
長年押し殺していた気持ちが勝手に溢れてきて、自分ではどうする事もできない。
とりあえず、と気持ちを切り替える為に世間一般の恋人たちのデートについてスマホで急いで検索する。
その内容に愕然となる。
――――本当にこんな……?
俺は何度も何度も同じワードで検索を繰り返す。
出てくる結果は同じ。落ち着いて考えてみれば同じワードで検索したって結果が同じなのは当たり前の話だった。だけど、そんな事にも気づけないくらいその時の俺は浮かれていて、そしてどうしようもなく落ち込んでもいた。
付き合うという事は当然キスもするしそれ以上の事だってする。
長い間目を背け続けていた事実がそこにはあった。
スマホの画面に浮かぶ『ホテル』『キス』『セックス』の文字に眉間に皺が寄る。
――――もう和は……。
流石に今まで付き合ってきた全員とそういう関係だったとは思わない。だけど、何人かとはしているはずで――――。俺が知らない和にどうしようもなく胸が痛くて痛くて……堪らなかった。
そうなってしまうともう無理だった。スマホを放り出し何も考えたくなくて、寝れもしないのにそのまま瞳を閉じた。
世界が閉ざされた気がして、底の知れない沼のような闇にどこまでもどこまでも落ちていく、そんな気がした。
*****
結局俺の方からはどうすればいいのか分からず、仕事が忙しい事を言い訳にして和の事を放置していた。葉介から何度も連絡がきたがすべて適当に誤魔化した。
なかなか自分の気持ちに折り合いをつける事ができないまま一ヶ月が過ぎた頃、ポケットに入れていたスマホにメッセージが届いたと振動がそれを知らせる。葉介からに違いないと確認すると、付き合い始めて初めての和からのメッセージだった。
ドキンと跳ねる心臓。ドキドキしながらスマホの画面を震える指でタップした。
開かれたメッセージ。
内容は――
『帰り、ごはん食べないか?』
連絡をしない事を責めるものでも別れを告げるものでもない。
シンプルで短い文だった。
和からの初めての誘い。初デートだ。
そろそろ逃げてばかりはいられないと感じていた。
不安と期待がせめぎ合う。未だこんな、前に進む事も後ろに下がる事もできないが、俺はどうあってもやっぱり和の事が好きで、このまま無かった事になんかしたくはない。いい加減覚悟を決めなくては――。
だから、一歩踏み出す。
何度も何度もやり直し、結局は『OK』とだけ返事を送った。
頭がふわふわとして気分がいいのは何も酒のせいだけではないだろう。
俺と和が恋人……?マジで?
くふふふふと気持ち悪い笑い声がひとりの部屋に響く。
「あ!」
そこで重大な事を思い出す。
付き合うって何すんの?
今まで付き合った人は数えきれないくらい居る、事になっている。だけど、実際付き合ったのは一人だけで、手も握らないし勿論キスなどもした事がない。デートどころか彼女と二人ででかけた事もない。
それに比べて和は相当な人数と付き合ってきた。だから和に訊けばいいのかもしれないが、それだけはしたくなかった。
和と恋人になれて浮かれておかしなテンションだった俺も、落ち着いてくるとある事が気になり始めた。
今まで見ないようにしてきた自分の中の嫉妬心が自己主張して仕方がないのだ。
和主導でデートなんかしたって、いつ誰と来たんだろうか、そいつとはどんな風に何を話して笑い合って……と考えてしまう。
長年押し殺していた気持ちが勝手に溢れてきて、自分ではどうする事もできない。
とりあえず、と気持ちを切り替える為に世間一般の恋人たちのデートについてスマホで急いで検索する。
その内容に愕然となる。
――――本当にこんな……?
俺は何度も何度も同じワードで検索を繰り返す。
出てくる結果は同じ。落ち着いて考えてみれば同じワードで検索したって結果が同じなのは当たり前の話だった。だけど、そんな事にも気づけないくらいその時の俺は浮かれていて、そしてどうしようもなく落ち込んでもいた。
付き合うという事は当然キスもするしそれ以上の事だってする。
長い間目を背け続けていた事実がそこにはあった。
スマホの画面に浮かぶ『ホテル』『キス』『セックス』の文字に眉間に皺が寄る。
――――もう和は……。
流石に今まで付き合ってきた全員とそういう関係だったとは思わない。だけど、何人かとはしているはずで――――。俺が知らない和にどうしようもなく胸が痛くて痛くて……堪らなかった。
そうなってしまうともう無理だった。スマホを放り出し何も考えたくなくて、寝れもしないのにそのまま瞳を閉じた。
世界が閉ざされた気がして、底の知れない沼のような闇にどこまでもどこまでも落ちていく、そんな気がした。
*****
結局俺の方からはどうすればいいのか分からず、仕事が忙しい事を言い訳にして和の事を放置していた。葉介から何度も連絡がきたがすべて適当に誤魔化した。
なかなか自分の気持ちに折り合いをつける事ができないまま一ヶ月が過ぎた頃、ポケットに入れていたスマホにメッセージが届いたと振動がそれを知らせる。葉介からに違いないと確認すると、付き合い始めて初めての和からのメッセージだった。
ドキンと跳ねる心臓。ドキドキしながらスマホの画面を震える指でタップした。
開かれたメッセージ。
内容は――
『帰り、ごはん食べないか?』
連絡をしない事を責めるものでも別れを告げるものでもない。
シンプルで短い文だった。
和からの初めての誘い。初デートだ。
そろそろ逃げてばかりはいられないと感じていた。
不安と期待がせめぎ合う。未だこんな、前に進む事も後ろに下がる事もできないが、俺はどうあってもやっぱり和の事が好きで、このまま無かった事になんかしたくはない。いい加減覚悟を決めなくては――。
だから、一歩踏み出す。
何度も何度もやり直し、結局は『OK』とだけ返事を送った。
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