いとおしい

ハリネズミ

文字の大きさ
上 下
9 / 22

(9)

しおりを挟む
俺だけの愛しい人を絶対に奪わせない!!

俺は自分のフェロモンを染み込ませたスーツの上着を脱ぎ七星を包み込んだ。
他のαに見つからないように。
愛する人を全ての目から隠した。

それから急いで社内にあるΩ用の緊急避難シェルターに運んだ。
部屋に入りしっかりと施錠する。
室内には俺と七星の二人きり。
これから俺は七星と番う。

高校の卒業式の日に番う約束になっていたが、それは七星に俺から逃げる猶予を与えただけの話だ。
その必要がないのなら今日ここで……。
だが、一応七星に確認を取る。まだ僅かではあるがヒートの波に完全に飲み込まれてしまってはいないようだから。

「七星、七星答えて。俺は今から七星のここを噛みたい」
そう言って七星の項にそっと触れる。

七星の身体はぴくりと跳ね、快感に身を震わせる。

「七星、いいか?俺が噛んでもいいか?」
「―――ん。かん…で…?ぼく……、まこ…とさ…ん……ずっと…いっしょ……」
七星の言葉と言えるものを聞いたのはこれが最後だった。
ぶわりと広がっていくお互いのフェロモン。

あとはひたすら声にもならない嬌声と喘ぐ息づかいだけ。
俺の方も「愛してる」を繰り返すしかできなかった。


何時間にも及ぶ交わりの後、七星の一番奥の奥に俺は精を放った。
そしてほっそりとした項にがぶりと牙を立てた。
柔らかな肌に食い込んでいく己の牙。
血の味がする。
それでも深く、深く沈みこませる。


身体が造りかえられていくようなそんな感覚。
二人が一つになったそんな感覚。
多幸感が全身を突き抜けていく。


あぁ………俺の何を差し出してもいい。
命さえキミに捧げるよ。

狂おしいほどに愛おしい人、ずっと傍にいて。
繋いだこの手を離さないで。




-終-
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それはとても、甘い罠

ゆなな
BL
年上バーテンダー×優等生な高校生。 危険な大人の男にゆっくり墜とされる話。

花に酔う

ハリネズミ
BL
二次性も分からないまま突然起こったヒートによって番関係になってしまう二人。 誤解によって歪められてしまった二人の関係はどうなるのか…? 視点未来はM、静流はSで表記しています。

【完結】片翼のアレス

結城れい
BL
鳥人族のアレスは生まれつき翼が片方しかないため、空を飛ぶことができずに、村で孤立していた。 飛べないアレスは食料をとるため、村の西側にある森へ行く必要があった。だが、その森では鳥人族を食べてしまう獣狼族と遭遇する危険がある。 毎日気をつけながら森に入っていたアレスだったが―― 村で孤立していた正反対の2人が出会い、そして番になるお話です。 優しい獣狼ルーカス × 片翼の鳥人アレス ※基本的に毎日20時に更新していく予定です(変更がある場合はXでお知らせします) ※残酷な描写があります ※他サイトにも掲載しています

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

【完結】友人のオオカミ獣人は俺の事が好きらしい

れると
BL
ずっと腐れ縁の友人だと思っていた。高卒で進学せず就職した俺に、大学進学して有名な企業にし就職したアイツは、ちょこまかと連絡をくれて、たまに遊びに行くような仲の良いヤツ。それくらいの認識だったんだけどな。・・・あれ?え?そういう事ってどういうこと??

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...