いとおしい

ハリネズミ

文字の大きさ
上 下
2 / 22

(2)

しおりを挟む
あれから十年が経ち俺は28歳になっていた。

あの後すぐ、元婚約者と元親友は勘当されたらしい。
俺が「許す」と言えば話は違っていたかもしれないが、どうしても言えなかった。
若い二人が勘当されてうまくやっていけるのか分からないが、俺が心配するような事でもない気がするし、考えたくもなかった。

俺は親に敷かれたレールの上を黙って歩き、会社を継いだ。
仕事に精力的に取り組んで、順調に業績を伸ばしている。

それに反してプライベートは……未だに誰とも番っていない。
あれ以来誰のフェロモンも感じる事が出来ないのだ。
それ以前に俺は誰かを愛する事が怖くなっていた。
信じて、愛して、裏切られるのが怖い。



*****
今、俺の目の前には広げられたお見合い写真が10枚程ある。簡単な釣書つきだ。
そろそろ結婚して跡継ぎを作って欲しいと両親に懇願されてしまった。
親が決めた以前の婚約者の一件があり、これまで強く出られなかった両親だったが今回はおじい様からの話らしく、どうしても決めなくてはいけないらしい。

はぁ…。

一応釣書に目を通す。
ざっと見た感じ一番条件の悪い人に決めた。


「この人で」

名前を登戸七星のぼりとななせといい、年齢は18歳。男性Ωだ。
七星は綺麗とも可愛いとも言い難い愛嬌のある顔立ちをしていた。
家柄も平凡で俺の元にくる他のΩたちとは明らかにランクが2つも3つも下だった。

俺は誰の事ももう好きにはなれないだろう。
誰の事も信じる事ができないだろう。
フェロモンも感じないし、誰に対しても魅力を感じる事なんてない。
だったら貰い手のなさそうな人と結婚して、一生何不自由ない生活を送れるようにする事でこんな俺と結婚してくれる事へ報いよう。


そんな相手に対して失礼な理由で見合い相手が決まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

僕の罪と君の記憶

深山恐竜
BL
 ——僕は17歳で初恋に落ちた。  そしてその恋は叶った。僕と恋人の和也は幸せな時間を過ごしていたが、ある日和也から別れ話を切り出される。話し合いも十分にできないまま、和也は交通事故で頭を打ち記憶を失ってしまった。  もともと和也はノンケであった。僕は恋仲になることで和也の人生を狂わせてしまったと負い目を抱いていた。別れ話をしていたこともあり、僕は記憶を失った和也に自分たちの関係を伝えなかった。  記憶を失い別人のようになってしまった和也。僕はそのまま和也との関係を断ち切ることにしたのだが……。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

幸せのカタチ

杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。 拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。

処理中です...