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番外編
5 突然の告白
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そういうやり取りが何度か続いて、勿論二度目以降はちゃんとお金を払って自分から買い求めた。予想通りデイジーは俺に安らぎをくれた。
仕事が忙しく花屋が開いていなくて彼に会えない日も、花瓶に生けたデイジーがあれば俺はぐっすりと眠る事ができたのだ。
*****
ある日、青年がいつものデイジーの花束を手渡しながら言った。
「オレ、あなたの事が好きです」
「――え?」
突然すぎてびっくりしてしまった。まるで何も特別じゃなく当たり前の事のように言うのだ。
俺だってこの青年、杉本 喜久乃くんの事は憎からず思っている。少しツンとした印象を受ける綺麗な顔も笑うととても柔らかく、人を惹きつける。性格もとても気さくで親切だ。クルクルと変わる表情はまるで万華鏡のようで見ているだけで楽しく、とても好ましい。
「別に応えて欲しいとは思っていませんよ。ただあなたを大切に想ってるヤツがいるって事だけ知っていて欲しかっただけだから、これからも今まで通りここで花を買ってくれると嬉しいな」
本当にそう思っているのかいつものように柔らかく微笑む杉本くん。多分杉本くんが言うようにこのままこの告白に応えなくても表面上は今まで通りだろう。だけどどこかギクシャクとしてしまうと思う。俺はそこまで無神経ではないつもりだ。そして自然とフェイドアウトして――。
そんなのは嫌だと思った。
何かの時に訊いた事だが杉本くんはβだ。βとの恋愛。俺が望んでいたものだ。流石にβであれば誰でもいいというわけではないが、杉本くんであれば何の問題もない。
「――その……俺たち……付き合うって事でいいのかな?」
「え? 無理してません?」
俺の答えを少しも予想も期待もしていなかったのか、杉本くんは驚いたように目を見開いて素っ頓狂な声をあげた。その様子が可愛くて、おかしくて――自然と口角が上がる。
「無理なんかしていないよ」
「本当に? 絶対です?」
「本当に、絶対だよ。付き合おう」
「やったっ!」
そう言っていきなり抱き着かれて戸惑う。誰かと抱き合うなんて本当に久しぶりの事だったから。先日の一条さんには俺が勝手に抱き着いてしまったから抱き返しては貰えなかった。今みたいにお互いが気持ちを持って抱き合っているのとは違う。
やっぱり人の温もりというのは抱き合うとひどく温かく感じるんだな――。
仕事が忙しく花屋が開いていなくて彼に会えない日も、花瓶に生けたデイジーがあれば俺はぐっすりと眠る事ができたのだ。
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ある日、青年がいつものデイジーの花束を手渡しながら言った。
「オレ、あなたの事が好きです」
「――え?」
突然すぎてびっくりしてしまった。まるで何も特別じゃなく当たり前の事のように言うのだ。
俺だってこの青年、杉本 喜久乃くんの事は憎からず思っている。少しツンとした印象を受ける綺麗な顔も笑うととても柔らかく、人を惹きつける。性格もとても気さくで親切だ。クルクルと変わる表情はまるで万華鏡のようで見ているだけで楽しく、とても好ましい。
「別に応えて欲しいとは思っていませんよ。ただあなたを大切に想ってるヤツがいるって事だけ知っていて欲しかっただけだから、これからも今まで通りここで花を買ってくれると嬉しいな」
本当にそう思っているのかいつものように柔らかく微笑む杉本くん。多分杉本くんが言うようにこのままこの告白に応えなくても表面上は今まで通りだろう。だけどどこかギクシャクとしてしまうと思う。俺はそこまで無神経ではないつもりだ。そして自然とフェイドアウトして――。
そんなのは嫌だと思った。
何かの時に訊いた事だが杉本くんはβだ。βとの恋愛。俺が望んでいたものだ。流石にβであれば誰でもいいというわけではないが、杉本くんであれば何の問題もない。
「――その……俺たち……付き合うって事でいいのかな?」
「え? 無理してません?」
俺の答えを少しも予想も期待もしていなかったのか、杉本くんは驚いたように目を見開いて素っ頓狂な声をあげた。その様子が可愛くて、おかしくて――自然と口角が上がる。
「無理なんかしていないよ」
「本当に? 絶対です?」
「本当に、絶対だよ。付き合おう」
「やったっ!」
そう言っていきなり抱き着かれて戸惑う。誰かと抱き合うなんて本当に久しぶりの事だったから。先日の一条さんには俺が勝手に抱き着いてしまったから抱き返しては貰えなかった。今みたいにお互いが気持ちを持って抱き合っているのとは違う。
やっぱり人の温もりというのは抱き合うとひどく温かく感じるんだな――。
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