俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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番外編

待っていて 番外編2 運命? それって美味しいの? 1 『運命』に負けた男

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「俺は運命に嫌われているんだ」

 俺がそう言うと彼は一瞬だけ眉間に皺を寄せ、すぐにニィっと不敵に笑った。


*****

 俺には番が

 アイツとは高校からの付き合いで、けんかと呼べる程のものは小さなものでもした事がなかった。アイツはいつも穏やかだったし、感情のふり幅もそんなにある方ではなかった。ただ時々理由も分からない何かに落ち込んで、部屋の隅でひとりで涙を流している事があった。
 アイツの悲しみの原因を取り除いてやりたくて、涙の理由わけを訊いてみたが何度訊いても教えてはくれなくて、だから俺はただアイツを抱きしめた。抱きしめる事しかできなかった。
 アイツは気を抜くとすぐにでも消えてなくなりそうなくらい儚く、俺の何に代えても守ってやりたいと思っていたのに――。

 αのただひとりのΩひと

 俺は世間的には頂点に位置するαだというのに、愛する人のひとりも幸せにできない事が歯がゆくて仕方がなかった。


 大学を卒業してお互いに就職をし、生活が軌道に乗った頃俺たちは番になり結婚した。俺としては結婚が遅くなったとしてももっと早くに番になりたかった。どうせ俺たちが番になる事は決まっていたし、待つ意味が分からないくらいだった。番になっていないΩには『事故』の危険が付きまとう。いきなり発情期ヒートになり見知らぬ誰かに番にされてしまうかもしれないのだ。番にされてしまえば間違いでも何でも、いくら望まない番関係だったとしてもΩの方から解消なんてできないし、タチの悪いαだったりしたら目も当てられない。
 運よく解消できたとしてもΩはもう二度と番を持つ事はできないし、精神的に不安定になってしまい衰弱していき生命の危険さえある。それにヒートによって起こりうる危険はずっとあり続けるのだ。
 だから番っていないΩは少なからず恐怖を感じているはずで、普通は俺たちのように相手が決まっていたら特別な理由がない限りΩの方が番いたがるのだ。なのに先延ばしにする意味が俺には理解できなかった。
 それでも確かにΩにとってはとても重要な事なので無理を通そうとは思わなかった。アイツが納得するまで俺はいつまででも待つ事にしたのだ。勿論ヒートの周期は把握していたし、突発的なものにも対応できるように見守りアプリをスマホに入れたりもしていた。そうやって守ってきた。

 そして25歳で番になって結婚して――その8年後、アイツは俺の元を去った。



 ――俺は『運命』に負けたのだ。


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