俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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番外編

番外編 愛し愛される幸せ① R-18少し。無理矢理表現あり

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※奏が小さい頃のお話です。


俺とかえで君との間に授かった宝物であるかなでには少しだけ困ったのようなものがあった。



*****
初めての妊娠に不安でいっぱいで、少しのすれ違いから楓君の事を信じ切れずに心を痛めた事もあったけど、誤解が解けたその後はいつも傍に楓君がいたから俺は苦しくても痛くてもちっとも辛くはなかったし、我が子との誕生が楽しみで仕方がなかった。


奏が無事生れて、思ってた以上に俺に似てしまっていて奏がもしΩだったら……と不安になった。生まれる前はαでもβでも、Ωでも元気に生きてさえいてくれれば何でもいいと思っていたけど、奏は俺に似すぎていたから――。あんな……俺が味わった思いを奏には味って欲しくなかった。
奏が成長してしばらくして楓君は「奏は恐らくαですよ」って言ってくれたけど、その時の俺は楓君の言葉は俺を安心させる為に言っただけだって思っていた。

楓君だって奏が生まれてすぐは「かおるさんに似過ぎてる。Ωだったらどうしよう。心配で心配で眠れなくなりそうですっ」って俺とはの意味で心配していた。楓君は俺に似た奏があまりにも可愛すぎて襲われるんじゃないかって、そんなありもしない事を心配していたのだ。
でも、そんな心配も奏のあるを初めて見た頃から言わなくなった。流石に親の贔屓目でも、俺に似た奏が襲われるわけないって分かったのかな?

俺ひとりが拭いきれない不安を抱えたまま月日が流れて、奏も幼稚園に通う年齢になっていた。
成長した奏は同世代の子よりもひと周りくらい身体が小さく、性格もおっとりしていた。楓君の幼馴染で親友の一条 遥いちじょう はるか君とその番の桜花おうか君のひとり息子で、奏と同い年の彼方かなた君と比べてもひどく小さく見えた。だから余計に奏はΩなんだと強く思った。
ふたりが並ぶと奏がΩで彼方君はαに見え、将来はふたりが番になったりして?とみんなが冗談で言っているのを俺だけは本当にそうなったらいいのに、と思っていた。もしそうであればきっと彼方君が奏の事を守ってくれて奏が悲しい思いをする機会が減ると思ったからだ。
だけど、ふたりの間には友愛や家族愛みたいなものはあるものの恋愛感情は皆無に見えた。それとなく誘導した事もあったけどふたりの気持ちが変わる事はなくて、身勝手にもがっかりしてしまった。親が番を勝手に決めてもいいわけじゃないのに。遥君たちが番になった時の事も俺は楓君に聞いて知っていたし、自分だって心から愛する人と番になった。だから無理にふたりをくっつけようとする事はしてはいけない事だったのに。


そんな事を僅かでも考えてしまってバチが当たったのか、ある日の事。
俺は人生最大のピンチを迎えていた。

俺は楓君と番っていて、発情期でもフェロモンをαであっても嗅ぎ取る事はできないし誘惑する事なんてできるはずもなかった。それに今の俺はヒート中ではないし、そもそもがあり得ない話だった。
それなのに今俺は人気のない公園の公衆トイレの傍の茂みで押し倒されていた。


幼稚園からの帰り道、急に催してしまった奏を公園のトイレに連れて行った。もうすこしで家なので我慢させようとも思ったが、どうにももちそうになかったので仕方なく公衆トイレを使う事にしたのだ。
ひとりでするっていう奏を個室の便座に座らせドアの外で待っていた。最近の奏は色々な事をひとりでやりたがった。折角芽生えた自立心を大事にしようと傍で見守りながらも奏の希望通りにさせていた。

――そしてすぐに事件は起こった。
個室の中の奏に集中していて気づけなかった。
突然首の辺りにチクリとした痛みを覚え振り向くと、大きな手で口を塞がれてしまった。
すぐには何が起こったのか理解できなかった。
見覚えのない男の目が怪しく光り、俺の心に恐怖心を植え付ける。
逃げなきゃと思うのに身体が言う事をきいてくれない。
そのうち身体が熱くなって力が入らなくなって、男の腕の中へと倒れ込んでしまった。そして信じられない事に俺の後ろが疼きだし蜜がこぽりこぽりと溢れ出した。この感じ……ヒートはまだ先のはずなのに。
そこで初めて首に感じたあの痛みは即効性の発情促進剤を注射されたのだと分かった。
抵抗ができなくなった俺に、男はにやりと厭らしい笑いを浮かべすぐ傍の茂みへと連れ込んだ。

ヒートのせいで回らない頭で考える。
なぜ?どうして俺が?
これがΩを狙った犯罪なら可愛くもない俺がその対象になるのはおかしいのに、なんで?
こんな無理矢理ヒートを起こしても番以外を誘惑する事もないし、嫌悪感しかないのに――。一体これにどんな意味があるって言うんだ。
どんなでも俺がΩ……だから?


こんな絶望的な状態でもヒートを起こしてしまった俺は、番である楓君の事を想い身体の奥がキュンキュンと疼くのを感じていた。


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