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俺のかわいい後輩さま どこかの世界線で
7 俺のかわいい婚約者さま
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俺たちはお互いの事を何日も何時間もかけて教え合った。
その度に薫君の事がどんどん好きになっていく。どんどん愛おしくなっていくんだ。
そして予定していた顔合わせの日、俺たちは互いに告白し合って改めて正式な婚約者となった。
その後は計画をそのまま実行する事はせず、自分たちのペースで進める事にした。もう俺たちの気持ちは固まっていたから、焦る必要なんてないのだから。
今思えばあの時あの人たちの中から番を選ばなくてよかった。
あの時の俺はまるで義務か何かのように相手を選ぼうとしていた。
口ではもっともらしい事を言いながら――。そんなんじゃ俺が欲しかった愛なんて一生手に入りっこないのに。
それなのに二次性によって心変わりされた事にいつまでもこだわって、あの人たちの事を裏切り者だと思っていた。
ただお互いに本当の『恋』じゃなかっただけだったのに。
今日は遥と駆と俺は薫君を連れてお祝いをする事になっている。
以前言っていた『ずっ友パーティ』だ。
俺の隣りでガチガチに緊張して俯いている薫君。
また余計な事を考えているのかな。
大丈夫だよ。遥も駆も俺の大切な幼馴染で友だちなんだ。
だから大事な薫君の事を紹介したい。薫君もきっと遥たちの事を好きになるよ。
俺は薫君と手を繋ぎ、安心させようと親指ですりすりと薫君の手の甲を撫でた。
薫君は驚いて顔を上げ、微笑む俺と瞳が合うと安心したように微笑んだ。
そう、俺が傍に居るから大丈夫。ずっとずっと傍に居るよ。
傍に居て、薫君が笑っていられるように守るから。だから笑っていて?
そして俺たちはふたりの元へとゆっくりと歩いて行く。
俺たちの姿を認め笑顔になるふたり。大切な友だちと大切で愛しい人と。
俺は、俺たちは幸せの中に居た。
「遥、駆、紹介するよ。この人が俺の愛する婚約者、及川 薫君。どうだ、かわいいだろう?」
*****
「――んぅ……あれ……俺寝ちゃってた――?」
「はい、気持ちよさそうに寝ていたので起こしませんでしたが、いい夢でも見ましたか? 顔が笑ってますよ」
そう言ってふわりと笑う楓君。
「ん――夢、なのかな……? 内容までははっきりとは覚えていないんだけど、何かとても大切な事があった気がするよ。あ、それと楓君によく似た子が居た――気がする」
「むぅ? 似た、という事は俺ではないんですね?」
少しだけむぅっと唇を尖らせる楓君。
夢にまで焼きもち? ふふふ。そんな心配少しもいらないのに。
「ふふふ。その子にはちゃんと大事な人が居た……と思う。俺に楓君が居るようにね」
俺は少しだけ拗ねてしまった王子さまをうしろから抱きしめ愛を囁く。
「楓君、大好きだよ……」
途端に笑顔になる楓君。本当にきみは――。
大好きで大事な愛しい俺の唯一。俺の幸せはきみの傍にしかないんだよ。
俺は楓君との幸せを噛みしめながら、夢に見た楓君によく似た子もどうか幸せでありますようにと心の中でそっと願った。
-おわり-
その度に薫君の事がどんどん好きになっていく。どんどん愛おしくなっていくんだ。
そして予定していた顔合わせの日、俺たちは互いに告白し合って改めて正式な婚約者となった。
その後は計画をそのまま実行する事はせず、自分たちのペースで進める事にした。もう俺たちの気持ちは固まっていたから、焦る必要なんてないのだから。
今思えばあの時あの人たちの中から番を選ばなくてよかった。
あの時の俺はまるで義務か何かのように相手を選ぼうとしていた。
口ではもっともらしい事を言いながら――。そんなんじゃ俺が欲しかった愛なんて一生手に入りっこないのに。
それなのに二次性によって心変わりされた事にいつまでもこだわって、あの人たちの事を裏切り者だと思っていた。
ただお互いに本当の『恋』じゃなかっただけだったのに。
今日は遥と駆と俺は薫君を連れてお祝いをする事になっている。
以前言っていた『ずっ友パーティ』だ。
俺の隣りでガチガチに緊張して俯いている薫君。
また余計な事を考えているのかな。
大丈夫だよ。遥も駆も俺の大切な幼馴染で友だちなんだ。
だから大事な薫君の事を紹介したい。薫君もきっと遥たちの事を好きになるよ。
俺は薫君と手を繋ぎ、安心させようと親指ですりすりと薫君の手の甲を撫でた。
薫君は驚いて顔を上げ、微笑む俺と瞳が合うと安心したように微笑んだ。
そう、俺が傍に居るから大丈夫。ずっとずっと傍に居るよ。
傍に居て、薫君が笑っていられるように守るから。だから笑っていて?
そして俺たちはふたりの元へとゆっくりと歩いて行く。
俺たちの姿を認め笑顔になるふたり。大切な友だちと大切で愛しい人と。
俺は、俺たちは幸せの中に居た。
「遥、駆、紹介するよ。この人が俺の愛する婚約者、及川 薫君。どうだ、かわいいだろう?」
*****
「――んぅ……あれ……俺寝ちゃってた――?」
「はい、気持ちよさそうに寝ていたので起こしませんでしたが、いい夢でも見ましたか? 顔が笑ってますよ」
そう言ってふわりと笑う楓君。
「ん――夢、なのかな……? 内容までははっきりとは覚えていないんだけど、何かとても大切な事があった気がするよ。あ、それと楓君によく似た子が居た――気がする」
「むぅ? 似た、という事は俺ではないんですね?」
少しだけむぅっと唇を尖らせる楓君。
夢にまで焼きもち? ふふふ。そんな心配少しもいらないのに。
「ふふふ。その子にはちゃんと大事な人が居た……と思う。俺に楓君が居るようにね」
俺は少しだけ拗ねてしまった王子さまをうしろから抱きしめ愛を囁く。
「楓君、大好きだよ……」
途端に笑顔になる楓君。本当にきみは――。
大好きで大事な愛しい俺の唯一。俺の幸せはきみの傍にしかないんだよ。
俺は楓君との幸せを噛みしめながら、夢に見た楓君によく似た子もどうか幸せでありますようにと心の中でそっと願った。
-おわり-
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