俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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俺のかわいい婚約者さま・続

1 ぷろろーぐ

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「そんな事があったんだね。それはやらかしたねぇかける

「はぁー、彼方かなたをそこまで怒らせるなんてよっぽどだぞ」

と俺、次に長男のかなでに呆れ顔で言われしょんぼりと肩を落とす翔。

翔の20歳の誕生日に彼方君と番う事は、随分前から俺たちと一条さん(遥君と桜花君)は知っていた。大学に合格したその日、翔は彼方君には内緒であちらにお願いにあがったのだそうだ。
20歳の誕生日に番う事、それに関する諸々の事は自分で全部やりたいという事。
俺と楓君は後からその話を聞いて翔の意外な行動力に驚いたけど、我が子の成長ぶりを嬉しく思ったものだ。
翔と彼方君の間には今まで色々な事があった。その事で翔は少しずつでも成長していたという事なのだろう。

言われた通り俺たちは、口出しも手助けもしなかった。奏には相談して協力してもらっていたようだけど、それも翔が自分で考えて決めた事なので文句はない。ただ、翔の手には負えないような事になったら勿論手助けはするつもりでいたのだが――よもやそういう事になっていたとは――――。
ちょっとこれは――かなり……彼方君に申し訳ないな。
ちらりと彼方君を窺えば、何の憂いもなく幸せそうに微笑んでいた。
その顔を見て、まぁこれも二人の歴史になっていくんだなと思った。

我が家の次男である翔の番の彼方君は、俺の番で夫のかえで君の幼馴染の一条 遥いちじょう はるか君とその番の桜花おうか君のひとり息子で、奏と同じ年に生まれた。
同い年でαとΩという事もあって、奏と彼方君が番になったらいいなぁなんて、勝手に俺たちは思ったりした事もあった。だけど、当人たちは『親友』『家族』とそんな深い絆で結ばれていたけど『番』にというのは考えられなかったらしい。
ずっと一緒にいてもそういう反応は少しも見られなかった。

そして翔を俺が身籠って、彼方君がまだ生まれてもいない俺のお腹の中にいる翔に反応したんだ。
あれは本当にびっくりした。
でも多分翔はあんな頃から彼方君が欲しかったんだ。だからあんな自分に注意を向けるような事――。発情期ヒートを起こさせるなんて、一歩間違えばになりかねない事だから褒められた事じゃないけど、でもその気持ちは分かるから――。
あの時すでに彼方君は年齢的に言って、すぐにでも番を見つけちゃう可能性はあった。だからあれは翔からの精一杯の「待ってて」だったのかもしれない。
それから彼方君はずっとずっと待っていてくれた。
俺と楓君のように縁が切れたような日々を過ごす事はなかったけど、それでも20年もの間傍にいて番う事もできずにいたんだ。彼方君もどんなにかつらかっただろうか。
楓君の愛をこの身に受けてからは、好きな人が傍にいるのにそういう事ができないつらさはΩとしてよく分かる。
年老いてヒートもなくなってしまった今でも、楓君に抱かれると身も心も嬉しくて震える。

――本当によく我慢したね。
落ち込む翔に優しく話しかけている彼方君を見て瞳を細めた。


今日はやっと結ばれた二人を祝う為に俺と楓君と息子たち、それにそれぞれの番たちで6人が久しぶりに我が家に集まっていた。一条さんたちは仕事の都合で欠席だけど、また折を見て集まるつもりだ。

さっきは彼方君とやっとの事で番えるという段になって、翔がやってしまった色々なやらかしについてみんなで聞いていたところだった。

「彼方君、うちの愚息が申し訳なかったね」

そう言って彼方君に謝る楓君を見て、俺はなんだかおかしくてくすくす笑ってしまった。

「――かおるさん?」

少し困惑気味に俺の事を見る楓君。

「いや、父子おやこなんだなぁって改めて思ってさ。ふふふ」

楓君は心当たりが沢山あるのだろう。ひどくバツの悪そうな顔をした。

「え?なになになに?父さん何かやらかしたの?」

翔は何も言い返せずに小さく縮こまっていたのだが、矛先が楓君に向いた途端水を得た魚のように元気になった。
よく似た顔で対照的な表情のふたりに、口元が緩む。

「そうだなぁ――あれはまだ奏を授かったって分かってからそんなに経っていない頃だったかな――」

そうして俺は5人が見守る中、当時の事を話し始めた。

和やかな雰囲気の中語り始めた俺だったけど、当時はとてもつらくて苦しかった――。
今では笑い話でしかないけれど。
ふっと息を吐く。


――これは、俺たち夫夫ふうふがまだ未熟だった頃のお話……。
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