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もう少しだけ待っていて
8 答えを求めて
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「あのね、やっぱりこれ変じゃない?」
彼方は難しい顔をしてベッドにうつ伏せになって、二次性判定結果報告書を真剣に見ていたかと思うと俺の目の前でぴらぴらと振って見せた。
「変って?」
「うん。だってね、何か―ー匂うんだ」
「匂うって?」
「誰かのフェロモンがべっとりついてる。これってさ、厳重に管理されてて誰のフェロモンも付かないようになってるよね?翔が僕の知らない人にこれを触らせたんなら……おかしくはないんだけど……さ」
唇をむぅと少しだけ突き出してそんな事を言う。
そんなわけないじゃん。
「そんなわけないじゃん。これ見せたの彼方だけだよ」
「そうだよね。分かってた」
ふふと笑う彼方。また彼方の冗談だと分かり苦笑する。
すんすんと匂いを嗅ぐと確かに彼方と俺以外の誰かの匂いが付いているように思う。
厳重に管理保管されていて取り扱う人間は防護服を着ており、フェロモンがつくなんて事はありえないのだ。その事に意味なんてないのだが、前も言ったように対外的なアピールの一環なのだろう。
なのにべっとりと付いたこのフェロモンは一体どこでついた誰のモノなのか?
そこで考えられるのは――
「――すり替えられた……?」
彼方の言葉に二人顔を見合わせて息を飲んだ。
『すり替え』だなんてあり得ないし、あってはならない事だ。
だけど、そう思ってしまえばもうそれしか考えられなかった。
でも、一体誰が――?
そこで思い浮かぶ人物がひとり――――。
でもまさか、と思う。本当にすり替えなんて事をしてしまったらその後の人生が詰むからだ。
大した確証もなく疑うのはよくないと、頭に浮かんだ人物を頭を振って消し去った。
本当ならΩである彼方の番であるなら俺はα以外考えられない。だけど母さんのお腹にいる頃から自分の存在をアピールしていた俺の事だから、たとえ自分がΩでもΩの事を求めてしまうと思ったのだ。
だから俺の二次性はこの二次性判定結果報告書に書かれていたΩだと信じてしまった。
「――父さんに相談したらいいのかな……?」
「うん、そうだね。楓さんなら色々伝手もあるだろうしきっと力になってくれる。もし、もしもの話だけど、このフェロモンが何かの間違いでついちゃっただけで何の偽装もなくて翔がΩだったとしても――僕たちは何も変わらない。これだけは覚えておいて?」
「――分かった。俺もう大丈夫だよ。彼方の愛を疑ったりしない。彼方、愛してる」
「僕も愛してるよ。翔」
俺たちはお互いの気持ちを確かめるように互いの首に残る噛み跡にキスを贈った。
*****
俺はその日父さんが帰るのを待ち、二次性について相談した。
父さんは難しい顔で俺の話を聞いていたけど、全てを聞き終わるとすぐに行動に移した。
あちこちに連絡を入れてくれて厳しい言葉も聞こえてくる。母さんはその間ずっと俺の事を抱きしめてくれていた。
そして一通り連絡が終わると父さんも母さんと一緒に抱きしめてくれた。
「大丈夫だから。何があってもお前は俺と薫さんの大事な息子だ」
そう言って見せたその笑顔に、結果がどうであれもう大丈夫だって思ったんだ。
最初からこうすればよかったんだ。
俺はどう足掻いてもまだ14の子どもで、父さんと母さんに守られるだけの子どもで。
ひとりではどうする事もできずに震えていただけで、両親に相談するきっかけをくれたのだって彼方だった。
今は自分が子どもだという事を素直に受け入れるしかないんだ。
受け入れて大人を頼って、そして大きくなったら心配や迷惑をかけたその何倍もお返しをすればいい。
俺は父さんと母さんに抱きしめられながら子どもらしく声をあげて泣いた。
彼方は難しい顔をしてベッドにうつ伏せになって、二次性判定結果報告書を真剣に見ていたかと思うと俺の目の前でぴらぴらと振って見せた。
「変って?」
「うん。だってね、何か―ー匂うんだ」
「匂うって?」
「誰かのフェロモンがべっとりついてる。これってさ、厳重に管理されてて誰のフェロモンも付かないようになってるよね?翔が僕の知らない人にこれを触らせたんなら……おかしくはないんだけど……さ」
唇をむぅと少しだけ突き出してそんな事を言う。
そんなわけないじゃん。
「そんなわけないじゃん。これ見せたの彼方だけだよ」
「そうだよね。分かってた」
ふふと笑う彼方。また彼方の冗談だと分かり苦笑する。
すんすんと匂いを嗅ぐと確かに彼方と俺以外の誰かの匂いが付いているように思う。
厳重に管理保管されていて取り扱う人間は防護服を着ており、フェロモンがつくなんて事はありえないのだ。その事に意味なんてないのだが、前も言ったように対外的なアピールの一環なのだろう。
なのにべっとりと付いたこのフェロモンは一体どこでついた誰のモノなのか?
そこで考えられるのは――
「――すり替えられた……?」
彼方の言葉に二人顔を見合わせて息を飲んだ。
『すり替え』だなんてあり得ないし、あってはならない事だ。
だけど、そう思ってしまえばもうそれしか考えられなかった。
でも、一体誰が――?
そこで思い浮かぶ人物がひとり――――。
でもまさか、と思う。本当にすり替えなんて事をしてしまったらその後の人生が詰むからだ。
大した確証もなく疑うのはよくないと、頭に浮かんだ人物を頭を振って消し去った。
本当ならΩである彼方の番であるなら俺はα以外考えられない。だけど母さんのお腹にいる頃から自分の存在をアピールしていた俺の事だから、たとえ自分がΩでもΩの事を求めてしまうと思ったのだ。
だから俺の二次性はこの二次性判定結果報告書に書かれていたΩだと信じてしまった。
「――父さんに相談したらいいのかな……?」
「うん、そうだね。楓さんなら色々伝手もあるだろうしきっと力になってくれる。もし、もしもの話だけど、このフェロモンが何かの間違いでついちゃっただけで何の偽装もなくて翔がΩだったとしても――僕たちは何も変わらない。これだけは覚えておいて?」
「――分かった。俺もう大丈夫だよ。彼方の愛を疑ったりしない。彼方、愛してる」
「僕も愛してるよ。翔」
俺たちはお互いの気持ちを確かめるように互いの首に残る噛み跡にキスを贈った。
*****
俺はその日父さんが帰るのを待ち、二次性について相談した。
父さんは難しい顔で俺の話を聞いていたけど、全てを聞き終わるとすぐに行動に移した。
あちこちに連絡を入れてくれて厳しい言葉も聞こえてくる。母さんはその間ずっと俺の事を抱きしめてくれていた。
そして一通り連絡が終わると父さんも母さんと一緒に抱きしめてくれた。
「大丈夫だから。何があってもお前は俺と薫さんの大事な息子だ」
そう言って見せたその笑顔に、結果がどうであれもう大丈夫だって思ったんだ。
最初からこうすればよかったんだ。
俺はどう足掻いてもまだ14の子どもで、父さんと母さんに守られるだけの子どもで。
ひとりではどうする事もできずに震えていただけで、両親に相談するきっかけをくれたのだって彼方だった。
今は自分が子どもだという事を素直に受け入れるしかないんだ。
受け入れて大人を頼って、そして大きくなったら心配や迷惑をかけたその何倍もお返しをすればいい。
俺は父さんと母さんに抱きしめられながら子どもらしく声をあげて泣いた。
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