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僕のかわいいこぐまさま
こぐまさま 番外編 僕のかわいい運命さま(1)
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僕の初ヒート騒動の後、薫さんのお腹の中に僕の番が居るんだと分かってから毎日のように及川家にお邪魔していた。
まだ生まれてもいない僕の『運命』
僕の『好き』は全部キミの物だよ。
会いたくて会いたくて、ただ感じていたくて僕は薫さんのお腹に思わずすり寄ってしまう。
薫さんは少しも嫌がらずに僕の好きなようにさせてくれた。
時々楓さんからするどい視線を向けられるけど、薫さんが「気にしなくて大丈夫だよ」って言ってくれるのでそれに甘えた。
人を愛するってこんなに幸せな事だったんだ。
以前の迷子のような僕の事はもう思い出せない。
キミに会いたいよ――。早く僕に会いに来て?
*****
それから月日は流れ、翔が生まれた日は僕の人生の中で一番幸せな日だった。
――――はずなんだけど。
「はぁ……」
今の僕は溜め息しか出なかった。
翔が生まれて10年。僕は28歳で翔は10歳。
この差はどうあっても縮める事はできない。
そんな事は生まれる前から分かっていたし、それでも僕たちは大丈夫って思っていた。
小さな翔との触れ合いは勿論性的なものなんか一切ないけど、僕は傍に居られるだけで幸せだったんだ。
翔の方も最近まで懐いてくれていたのに、急にそっけなくなってしまった。
生れる前はあんなに僕の事を求めてくれていたのに、今では同じ小学校の子が気になるんだって。
友だちと遊ぶのも忙しいし、僕と会う時間なんてないんだってさ。
どういう事だよ。
僕は翔より18歳も年上なんだ。このまま待ってても脈がないのなら――なんて、そんな事できるくらいならとっくにしてる。僕には翔しかいないのに――――。
はぁ……とまた大きな溜め息が出た。
「あーなんか俺の弟が悪いな」
僕の運命の兄である幼馴染で親友の奏が言った。
今僕が居るのは喫茶店で、カウンターを隔てた向う側には奏とその番の律さんが居る。
奏は喫茶店で学生時代バイトをしていて、コーヒーの魅力に魅せられて生涯の仕事にしたいと思ったんだそうだ。大学で司書の仕事をしていた律さんも仕事を辞めて一緒にこの喫茶店で働いている。
コーヒーを好きな奏と本好きの律さん。二人が営む喫茶店は店内の壁一面が棚になっていて、沢山の本が並べられている。コーヒー一杯で好きに手に取って読む事ができ、時間に制限はない。
ふかふかのソファーに邪魔にならない音楽。細部にまで拘ったセンスのいい調度品。
仕事の疲れも色んな悩みも吹き飛ぶようなほっとする空間を提供している。
「しょうがないとは思うんだ。僕なんて翔にとったらもうおじさんだし、おじさんと運命とか番とかわけわからないよね」
「それは――ないと思うんだけどな。母さんのお腹の中に居た頃から彼方に執着してたのに、今更年齢がーとかありえないって。それに彼方はいくつになっても美人だぞ?」
「うん。本当彼方君は綺麗で可愛いよ」
にこやかにそんな事をいう奏と律さん。
――今はその気遣いが痛いなぁ……。
「まぁ僕の容姿はともかく、それだけ翔も大きく成長したって事なんじゃない?それで僕が番とかあり得ないってさ」
「――彼方……」
奏はまだ何か言いたそうにしてたけど、僕はお勘定をカウンターに置くと「じゃあまた来るよ」と店を後にした。
まだ生まれてもいない僕の『運命』
僕の『好き』は全部キミの物だよ。
会いたくて会いたくて、ただ感じていたくて僕は薫さんのお腹に思わずすり寄ってしまう。
薫さんは少しも嫌がらずに僕の好きなようにさせてくれた。
時々楓さんからするどい視線を向けられるけど、薫さんが「気にしなくて大丈夫だよ」って言ってくれるのでそれに甘えた。
人を愛するってこんなに幸せな事だったんだ。
以前の迷子のような僕の事はもう思い出せない。
キミに会いたいよ――。早く僕に会いに来て?
*****
それから月日は流れ、翔が生まれた日は僕の人生の中で一番幸せな日だった。
――――はずなんだけど。
「はぁ……」
今の僕は溜め息しか出なかった。
翔が生まれて10年。僕は28歳で翔は10歳。
この差はどうあっても縮める事はできない。
そんな事は生まれる前から分かっていたし、それでも僕たちは大丈夫って思っていた。
小さな翔との触れ合いは勿論性的なものなんか一切ないけど、僕は傍に居られるだけで幸せだったんだ。
翔の方も最近まで懐いてくれていたのに、急にそっけなくなってしまった。
生れる前はあんなに僕の事を求めてくれていたのに、今では同じ小学校の子が気になるんだって。
友だちと遊ぶのも忙しいし、僕と会う時間なんてないんだってさ。
どういう事だよ。
僕は翔より18歳も年上なんだ。このまま待ってても脈がないのなら――なんて、そんな事できるくらいならとっくにしてる。僕には翔しかいないのに――――。
はぁ……とまた大きな溜め息が出た。
「あーなんか俺の弟が悪いな」
僕の運命の兄である幼馴染で親友の奏が言った。
今僕が居るのは喫茶店で、カウンターを隔てた向う側には奏とその番の律さんが居る。
奏は喫茶店で学生時代バイトをしていて、コーヒーの魅力に魅せられて生涯の仕事にしたいと思ったんだそうだ。大学で司書の仕事をしていた律さんも仕事を辞めて一緒にこの喫茶店で働いている。
コーヒーを好きな奏と本好きの律さん。二人が営む喫茶店は店内の壁一面が棚になっていて、沢山の本が並べられている。コーヒー一杯で好きに手に取って読む事ができ、時間に制限はない。
ふかふかのソファーに邪魔にならない音楽。細部にまで拘ったセンスのいい調度品。
仕事の疲れも色んな悩みも吹き飛ぶようなほっとする空間を提供している。
「しょうがないとは思うんだ。僕なんて翔にとったらもうおじさんだし、おじさんと運命とか番とかわけわからないよね」
「それは――ないと思うんだけどな。母さんのお腹の中に居た頃から彼方に執着してたのに、今更年齢がーとかありえないって。それに彼方はいくつになっても美人だぞ?」
「うん。本当彼方君は綺麗で可愛いよ」
にこやかにそんな事をいう奏と律さん。
――今はその気遣いが痛いなぁ……。
「まぁ僕の容姿はともかく、それだけ翔も大きく成長したって事なんじゃない?それで僕が番とかあり得ないってさ」
「――彼方……」
奏はまだ何か言いたそうにしてたけど、僕はお勘定をカウンターに置くと「じゃあまた来るよ」と店を後にした。
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