38 / 87
僕のかわいいこぐまさま
9 (4)
しおりを挟む
もしもまた薫さんに反応してしまっても、僕では薫さんをどうこうする事なんてできないんだし、そもそも薫さんは僕に反応していなかった。だから大丈夫。
なんて随分と自分に都合のいい言い訳だと苦笑するが、それでもやっぱり会いたいんだ。
念の為抑制剤を前もって飲み、緊急抑制剤も手に握りしめている。
奏と一緒に及川家に行くと薫さんはすぐに僕を隔離部屋へと連れて行った。勿論奏は抜きで二人きりだ。
ドキドキと胸が高鳴るのを抑えられない。
薫さんは僕から少し距離をとった場所に立った。
大丈夫。ドキドキとはするけどこないだみたいな反応はしていない――。やっぱりあれは何かの間違いだった……?
安心しかけたところで薫さんは
「彼方君、あの日キミは俺に反応したように見えた」
ギクリとなる。
やっぱりそういう話だよね……。
僕の顔面から色が抜けていくのが自分でも分かった。
薬を握りしめる指も冷たく、凍ってしまったかのように動かない。
薫さんの話――。
もしかしたらもう二度と薫さんにも奏にも関わるなって言うのかな?
だとしたら……辛いなぁ――。
「えーっとそうじゃなくてね?彼方君、俺を上から順番に見てみて?」
「……」
上から……?
僕は言われるがまま薫さんの頭のてっぺんから徐々に下に向って視線を――。
ひゅっと喉が鳴った。
ある一点に視線がたどり着いた途端、またあの時のように激しい動悸とぶわりと広がる僕のフェロモン。
「はっは……っかはっ!?」
息が……っ
呼吸が上手くできなくて苦しい。
「彼方君目を閉じてっ落ち着いてっ。大丈夫だから――。ゆっくり息をして……」
言われた通りにすると段々楽になっていく呼吸。
切なく苦しい想いも段々落ち着いていく。
「あーこれは確定かなぁ……」
「確定……?」
「今彼方君は俺のお腹を見て反応したよね?」
「――――はい」
そうなのだ。確かに僕は薫さんのお腹を見て反応した。
顔でも他の部分でもない。僕が反応したのは薫さんのお腹限定なのだ。
「それで、何で分かったかと言うとね、こないだ彼方君がヒートになった翌日身体がおかしくて病院に行ったら妊娠してますって言われたんだ。妊娠16週だって」
「おめでとう……ございます?」
照れたようにはにかみながらそう言う薫さん。
赤ちゃんはおめでたいけど、今関係ある事なんだろうか?
「だからね。彼方君は俺に反応したんじゃなくて、俺のお腹の子に反応してしまったんだと思うんだ」
「――――は?」
あまりにも荒唐無稽な……。
まだ生まれてもいない子に『運命』でも感じたとでも言うの……?
「とても珍しい事だと思うし俺もすぐには信じられなかったんだけど、彼方君に自分の存在を知って欲しかったんだと思うんだ。ほら、楓君の子どもだし?生まれる前から自分の番に執着しちゃったんじゃないかなー?って」
なんだそれ?なんだそれ?――――なんだそれ!?
『運命』?
生れる前から僕が欲しいって?
そんなの……愛おしくて堪らない――っ。
僕の『愛』は全てキミの物だったから誰の事も好きにならなかった――?
僕は震える手で薫さんのお腹にそっと触れた。とくんとキミが僕の手に応えた気がした。
不思議と自分の番がそこに居ると思うと過剰に反応する事はなく、ただただ愛おしいと感じるだけだった。
早くでておいで……僕の愛しい番――。愛しているよ。
-おわり-
なんて随分と自分に都合のいい言い訳だと苦笑するが、それでもやっぱり会いたいんだ。
念の為抑制剤を前もって飲み、緊急抑制剤も手に握りしめている。
奏と一緒に及川家に行くと薫さんはすぐに僕を隔離部屋へと連れて行った。勿論奏は抜きで二人きりだ。
ドキドキと胸が高鳴るのを抑えられない。
薫さんは僕から少し距離をとった場所に立った。
大丈夫。ドキドキとはするけどこないだみたいな反応はしていない――。やっぱりあれは何かの間違いだった……?
安心しかけたところで薫さんは
「彼方君、あの日キミは俺に反応したように見えた」
ギクリとなる。
やっぱりそういう話だよね……。
僕の顔面から色が抜けていくのが自分でも分かった。
薬を握りしめる指も冷たく、凍ってしまったかのように動かない。
薫さんの話――。
もしかしたらもう二度と薫さんにも奏にも関わるなって言うのかな?
だとしたら……辛いなぁ――。
「えーっとそうじゃなくてね?彼方君、俺を上から順番に見てみて?」
「……」
上から……?
僕は言われるがまま薫さんの頭のてっぺんから徐々に下に向って視線を――。
ひゅっと喉が鳴った。
ある一点に視線がたどり着いた途端、またあの時のように激しい動悸とぶわりと広がる僕のフェロモン。
「はっは……っかはっ!?」
息が……っ
呼吸が上手くできなくて苦しい。
「彼方君目を閉じてっ落ち着いてっ。大丈夫だから――。ゆっくり息をして……」
言われた通りにすると段々楽になっていく呼吸。
切なく苦しい想いも段々落ち着いていく。
「あーこれは確定かなぁ……」
「確定……?」
「今彼方君は俺のお腹を見て反応したよね?」
「――――はい」
そうなのだ。確かに僕は薫さんのお腹を見て反応した。
顔でも他の部分でもない。僕が反応したのは薫さんのお腹限定なのだ。
「それで、何で分かったかと言うとね、こないだ彼方君がヒートになった翌日身体がおかしくて病院に行ったら妊娠してますって言われたんだ。妊娠16週だって」
「おめでとう……ございます?」
照れたようにはにかみながらそう言う薫さん。
赤ちゃんはおめでたいけど、今関係ある事なんだろうか?
「だからね。彼方君は俺に反応したんじゃなくて、俺のお腹の子に反応してしまったんだと思うんだ」
「――――は?」
あまりにも荒唐無稽な……。
まだ生まれてもいない子に『運命』でも感じたとでも言うの……?
「とても珍しい事だと思うし俺もすぐには信じられなかったんだけど、彼方君に自分の存在を知って欲しかったんだと思うんだ。ほら、楓君の子どもだし?生まれる前から自分の番に執着しちゃったんじゃないかなー?って」
なんだそれ?なんだそれ?――――なんだそれ!?
『運命』?
生れる前から僕が欲しいって?
そんなの……愛おしくて堪らない――っ。
僕の『愛』は全てキミの物だったから誰の事も好きにならなかった――?
僕は震える手で薫さんのお腹にそっと触れた。とくんとキミが僕の手に応えた気がした。
不思議と自分の番がそこに居ると思うと過剰に反応する事はなく、ただただ愛おしいと感じるだけだった。
早くでておいで……僕の愛しい番――。愛しているよ。
-おわり-
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。
【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。
表紙絵
⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)


花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる