俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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俺のかわいい幼馴染さま

5 幸せになろう

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大騒ぎで俺たちが番になり結婚して4年が経った頃、楓が元婚約者の及川 薫おいかわ かおるさんと番になったと楓と共通の友人から教えてもらった。
俺たちのいきさつを知るこの友人にも随分と心配をかけてしまっている。
いつかお詫びとお礼ができたら、と思う。

俺は二人が番になった話を聞いて泣いてしまった。
それで俺の罪が消えるわけじゃないけど、二人が元ある形に戻った事が心から嬉しかったんだ。
二人にあわせる顔はないけれど、何か贈り物をしたいと思った。
受け取っては貰えないかもしれないが精一杯の気持ちを込めて贈りたい。

『ごめんなさい』『おめでとう』『お幸せに』

願いを込めて作った天使と熊と猫のオブジェ。周りには俺が選んだ花を桜花に飾ってもらった。
俺の罪を桜花も一緒に背負いたいと言ってくれたのだ。
俺の罪を桜花にもだなんて、いい事だとは思わないけど桜花の気持ちは嬉しくて、桜花にも手伝ってもらう事にした。

できあがったオブジェを持って楓のマンションに行くが、なかなか呼び鈴を鳴らす事ができないでいた。
オブジェに咲く花を見つめ桜花の笑顔を想い勇気を貰う。
大きく深呼吸をして一度だけ呼び鈴を鳴らした。室内から人の気配がして、俺はオブジェをその場に置いて逃げてしまった。
家に帰ってその事を桜花に話すと、俺をぎゅーっと抱きしめて「頑張ったなぁ。えらいでぇ」と言って頭を撫でてくれた。どこまでも俺に甘い俺の愛しい番。
そんな子ども扱いも俺には嬉しくてありがたかった。


それから数日して、母さんの代理でホテルのロビーに活ける花について商談した帰り、楓から声をかけられた。
突然の事にびっくりして固まっていると、事前に連絡をすると逃げてしまうかもしれないから連絡しないで突撃したという事だった。
確かにその通りだろう。事前に連絡があったなら絶対に俺は逃げていた。

「遥、久しぶり」

そう言って楓が笑顔を見せたから、

「ああ、久しぶりだな楓」

俺も自然と笑顔になっていた。

ふたり連れ立って居酒屋に入り色々な話をした。
最初に俺がふたりを傷つけた事を謝って、楓がそれを許した。
絶縁していた間の事やお互いの番の話。

「へぇ、じゃあ噂で聞いたΩの子に押し切られたんじゃなくて、お前が他のαからかっさらったのか」

揶揄いも交じった昔向けられたような懐かしい笑顔に胸がじんとなる。
そして急に真面目な顔でこう言った。

「なぁ、お前さ、子ども――――俺たちに遠慮してないか?」

「え……?」

突然そんな事を言われて誤魔化す事もできず言いよどむ。

「もうお互い許しあおう。俺もお前を傷つけた。お前の想いを俺は踏みにじってたわけだし……長い間ごめん」

と、頭を下げた。

「楓……」

「だから、お前も俺たちに遠慮なんかせずにさ、お互いもっともっと幸せになろう」

「――うん……。うん、うん……幸せ、に……、なろ、う」

俺は人目もはばからず泣いた。涙が後から後から溢れ出て、自分がこんなに泣き虫だなんて知らなかった。
見ると楓の瞳にも涙がうっすら浮かんでいて優しく俺を見る瞳に、俺は本当に許されたんだと感じた。


桜花、返ったら抱きしめて「長い事待たせてごめん。愛してる」って伝えるよ。
俺の愛しい唯一の人。
キミが俺の番でよかった……。



-おわり-
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