25 / 87
俺のかわいい幼馴染さま
5 幸せになろう
しおりを挟む
大騒ぎで俺たちが番になり結婚して4年が経った頃、楓が元婚約者の及川 薫さんと番になったと楓と共通の友人から教えてもらった。
俺たちのいきさつを知るこの友人にも随分と心配をかけてしまっている。
いつかお詫びとお礼ができたら、と思う。
俺は二人が番になった話を聞いて泣いてしまった。
それで俺の罪が消えるわけじゃないけど、二人が元ある形に戻った事が心から嬉しかったんだ。
二人にあわせる顔はないけれど、何か贈り物をしたいと思った。
受け取っては貰えないかもしれないが精一杯の気持ちを込めて贈りたい。
『ごめんなさい』『おめでとう』『お幸せに』
願いを込めて作った天使と熊と猫のオブジェ。周りには俺が選んだ花を桜花に飾ってもらった。
俺の罪を桜花も一緒に背負いたいと言ってくれたのだ。
俺の罪を桜花にもだなんて、いい事だとは思わないけど桜花の気持ちは嬉しくて、桜花にも手伝ってもらう事にした。
できあがったオブジェを持って楓のマンションに行くが、なかなか呼び鈴を鳴らす事ができないでいた。
オブジェに咲く花を見つめ桜花の笑顔を想い勇気を貰う。
大きく深呼吸をして一度だけ呼び鈴を鳴らした。室内から人の気配がして、俺はオブジェをその場に置いて逃げてしまった。
家に帰ってその事を桜花に話すと、俺をぎゅーっと抱きしめて「頑張ったなぁ。えらいでぇ」と言って頭を撫でてくれた。どこまでも俺に甘い俺の愛しい番。
そんな子ども扱いも俺には嬉しくてありがたかった。
それから数日して、母さんの代理でホテルのロビーに活ける花について商談した帰り、楓から声をかけられた。
突然の事にびっくりして固まっていると、事前に連絡をすると逃げてしまうかもしれないから連絡しないで突撃したという事だった。
確かにその通りだろう。事前に連絡があったなら絶対に俺は逃げていた。
「遥、久しぶり」
そう言って楓が笑顔を見せたから、
「ああ、久しぶりだな楓」
俺も自然と笑顔になっていた。
ふたり連れ立って居酒屋に入り色々な話をした。
最初に俺がふたりを傷つけた事を謝って、楓がそれを許した。
絶縁していた間の事やお互いの番の話。
「へぇ、じゃあ噂で聞いたΩの子に押し切られたんじゃなくて、お前が他のαからかっさらったのか」
揶揄いも交じった昔向けられたような懐かしい笑顔に胸がじんとなる。
そして急に真面目な顔でこう言った。
「なぁ、お前さ、子ども――――俺たちに遠慮してないか?」
「え……?」
突然そんな事を言われて誤魔化す事もできず言いよどむ。
「もうお互い許しあおう。俺もお前を傷つけた。お前の想いを俺は踏みにじってたわけだし……長い間ごめん」
と、頭を下げた。
「楓……」
「だから、お前も俺たちに遠慮なんかせずにさ、お互いもっともっと幸せになろう」
「――うん……。うん、うん……幸せ、に……、なろ、う」
俺は人目もはばからず泣いた。涙が後から後から溢れ出て、自分がこんなに泣き虫だなんて知らなかった。
見ると楓の瞳にも涙がうっすら浮かんでいて優しく俺を見る瞳に、俺は本当に許されたんだと感じた。
桜花、返ったら抱きしめて「長い事待たせてごめん。愛してる」って伝えるよ。
俺の愛しい唯一の人。
キミが俺の番でよかった……。
-おわり-
俺たちのいきさつを知るこの友人にも随分と心配をかけてしまっている。
いつかお詫びとお礼ができたら、と思う。
俺は二人が番になった話を聞いて泣いてしまった。
それで俺の罪が消えるわけじゃないけど、二人が元ある形に戻った事が心から嬉しかったんだ。
二人にあわせる顔はないけれど、何か贈り物をしたいと思った。
受け取っては貰えないかもしれないが精一杯の気持ちを込めて贈りたい。
『ごめんなさい』『おめでとう』『お幸せに』
願いを込めて作った天使と熊と猫のオブジェ。周りには俺が選んだ花を桜花に飾ってもらった。
俺の罪を桜花も一緒に背負いたいと言ってくれたのだ。
俺の罪を桜花にもだなんて、いい事だとは思わないけど桜花の気持ちは嬉しくて、桜花にも手伝ってもらう事にした。
できあがったオブジェを持って楓のマンションに行くが、なかなか呼び鈴を鳴らす事ができないでいた。
オブジェに咲く花を見つめ桜花の笑顔を想い勇気を貰う。
大きく深呼吸をして一度だけ呼び鈴を鳴らした。室内から人の気配がして、俺はオブジェをその場に置いて逃げてしまった。
家に帰ってその事を桜花に話すと、俺をぎゅーっと抱きしめて「頑張ったなぁ。えらいでぇ」と言って頭を撫でてくれた。どこまでも俺に甘い俺の愛しい番。
そんな子ども扱いも俺には嬉しくてありがたかった。
それから数日して、母さんの代理でホテルのロビーに活ける花について商談した帰り、楓から声をかけられた。
突然の事にびっくりして固まっていると、事前に連絡をすると逃げてしまうかもしれないから連絡しないで突撃したという事だった。
確かにその通りだろう。事前に連絡があったなら絶対に俺は逃げていた。
「遥、久しぶり」
そう言って楓が笑顔を見せたから、
「ああ、久しぶりだな楓」
俺も自然と笑顔になっていた。
ふたり連れ立って居酒屋に入り色々な話をした。
最初に俺がふたりを傷つけた事を謝って、楓がそれを許した。
絶縁していた間の事やお互いの番の話。
「へぇ、じゃあ噂で聞いたΩの子に押し切られたんじゃなくて、お前が他のαからかっさらったのか」
揶揄いも交じった昔向けられたような懐かしい笑顔に胸がじんとなる。
そして急に真面目な顔でこう言った。
「なぁ、お前さ、子ども――――俺たちに遠慮してないか?」
「え……?」
突然そんな事を言われて誤魔化す事もできず言いよどむ。
「もうお互い許しあおう。俺もお前を傷つけた。お前の想いを俺は踏みにじってたわけだし……長い間ごめん」
と、頭を下げた。
「楓……」
「だから、お前も俺たちに遠慮なんかせずにさ、お互いもっともっと幸せになろう」
「――うん……。うん、うん……幸せ、に……、なろ、う」
俺は人目もはばからず泣いた。涙が後から後から溢れ出て、自分がこんなに泣き虫だなんて知らなかった。
見ると楓の瞳にも涙がうっすら浮かんでいて優しく俺を見る瞳に、俺は本当に許されたんだと感じた。
桜花、返ったら抱きしめて「長い事待たせてごめん。愛してる」って伝えるよ。
俺の愛しい唯一の人。
キミが俺の番でよかった……。
-おわり-
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。


たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。
表紙絵
⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる