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俺のかわいい幼馴染さま
3 桜花
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「桜花!桜花っ!桜花――――っ!」
三条邸に着くなり無断で中に入ると桜花の名前を呼んだ。
騒ぐ俺に三条家の護衛が何人も出てきてすぐに取り押さえられそうになるが、無我夢中で護衛を殴り飛ばし桜花の香りを追った。
優しいミルクティのような香り。いつも微かに香っていた大好きな香り。
邸内の奥へ進むと段々香りが濃くなっていく。
「おうか――――っ!!!」
香りの濃さにもうあまり時間がない事が分かった。
焦り足を縺れさせながらたどり着いた先は強固な扉で守られた隔離部屋、ヒート部屋のようだった。
「桜花っ!桜花ーっ!!!」
俺は何度も何度も桜花の名前を呼び扉を叩いた。
自分の手が血で染まろうがそんな事は関係ない。
痛みも感じず、ただこの扉を開けなくてはという思いだけが俺をつき動かしていた。
桜花を取り戻さなくては。
桜花は俺の……俺の大事な――――っ。
桜花っ桜花っ桜花――!
必死に叩き続けた扉はピクリとも動く事はなくて、それでも俺に諦める事なんかできなくて。
どれくらいの時間が経ったのか、キィーと突然重い扉が開いて30代くらいの大きな男が姿を見せた。
着衣は少し乱れていて、それが目に入った途端目の前が赤く染まった。
桜花は?遅かったのか?もう番ってしまった???
この香りはただの残り香?
「桜花……?桜花!?」
俺は堪らず部屋の中へ駈け込もうとしたが、男に簡単に阻止されてしまった。
「小僧がうるそうて集中できひん。今更惜しいて子どもみたいに騒ぐなや。お前が桜花を拒んだんやろが。桜花は俺が幸せにしたる。邪魔すんなやっ」
男はそう言うと俺の腹に強烈な一撃を加えた。
「うぐっ……!」
げぼっと胃の中の物を全て吐いてしまった。
同じαでもこの男は自分よりはるかに上位のαで、敵わないと分かった。
だけど、分かったからなんだと言うのだ。
俺は戦う為にここに来た。
心から欲する自分の番の為にここに来たんだ。
俺はひるむ事なくキッと男を睨みつけると殴り掛かった。
しかし一発も当たる事はなく、男に何度も殴られ続けた。意識も朦朧としてきたがそれでも俺は男に挑み続けた。
「やめてや!お願いや……っ!」
殴られて床に倒れ込むがそれでも起き上がろうとする俺の上に桜花が覆いかぶさってきた。
ふわりと香る大好きな香り。
「おぅ……か――っ」
「僕なんでもするさかい遥君を殴らんといてっ!お願いや!」
涙で顔をぐちゃぐちゃにさせた桜花。
また俺が泣かせてしまったんだな……。
俺はお前の笑った顔が好きだよ。
笑って……?
泣き続ける桜花の頬にそっと触れ、微笑んで見せた。泣き止ませる為だったのにそれで更に桜花が泣く事になり、わたわたとしてしまう。
「遥君……うぇええん……」
男はしばらく俺たちの事を見ていたが、大きなため息をひとつ吐くと
「――このくらいで許しといたる。桜花に感謝しぃや小僧。今度こそ大事にせーへんかったら俺がまたどついたるからな」
それだけ言い残しその場から去って行った。
「桜花……桜花……ごめん。ごめんな……」
「なんでぇ?なんで来たん……?」
「桜花が大事、だったから……とられたくなかった……」
「僕遥君の事、諦めようと頑張ったんよ……?」
「もう頑張らなくていいんだ。桜花、好きだよ。俺のものになって――?」
桜花は俺の言葉に顔をくしゃりとさせて、こくこくと何度も大きく頷いた。
三条邸に着くなり無断で中に入ると桜花の名前を呼んだ。
騒ぐ俺に三条家の護衛が何人も出てきてすぐに取り押さえられそうになるが、無我夢中で護衛を殴り飛ばし桜花の香りを追った。
優しいミルクティのような香り。いつも微かに香っていた大好きな香り。
邸内の奥へ進むと段々香りが濃くなっていく。
「おうか――――っ!!!」
香りの濃さにもうあまり時間がない事が分かった。
焦り足を縺れさせながらたどり着いた先は強固な扉で守られた隔離部屋、ヒート部屋のようだった。
「桜花っ!桜花ーっ!!!」
俺は何度も何度も桜花の名前を呼び扉を叩いた。
自分の手が血で染まろうがそんな事は関係ない。
痛みも感じず、ただこの扉を開けなくてはという思いだけが俺をつき動かしていた。
桜花を取り戻さなくては。
桜花は俺の……俺の大事な――――っ。
桜花っ桜花っ桜花――!
必死に叩き続けた扉はピクリとも動く事はなくて、それでも俺に諦める事なんかできなくて。
どれくらいの時間が経ったのか、キィーと突然重い扉が開いて30代くらいの大きな男が姿を見せた。
着衣は少し乱れていて、それが目に入った途端目の前が赤く染まった。
桜花は?遅かったのか?もう番ってしまった???
この香りはただの残り香?
「桜花……?桜花!?」
俺は堪らず部屋の中へ駈け込もうとしたが、男に簡単に阻止されてしまった。
「小僧がうるそうて集中できひん。今更惜しいて子どもみたいに騒ぐなや。お前が桜花を拒んだんやろが。桜花は俺が幸せにしたる。邪魔すんなやっ」
男はそう言うと俺の腹に強烈な一撃を加えた。
「うぐっ……!」
げぼっと胃の中の物を全て吐いてしまった。
同じαでもこの男は自分よりはるかに上位のαで、敵わないと分かった。
だけど、分かったからなんだと言うのだ。
俺は戦う為にここに来た。
心から欲する自分の番の為にここに来たんだ。
俺はひるむ事なくキッと男を睨みつけると殴り掛かった。
しかし一発も当たる事はなく、男に何度も殴られ続けた。意識も朦朧としてきたがそれでも俺は男に挑み続けた。
「やめてや!お願いや……っ!」
殴られて床に倒れ込むがそれでも起き上がろうとする俺の上に桜花が覆いかぶさってきた。
ふわりと香る大好きな香り。
「おぅ……か――っ」
「僕なんでもするさかい遥君を殴らんといてっ!お願いや!」
涙で顔をぐちゃぐちゃにさせた桜花。
また俺が泣かせてしまったんだな……。
俺はお前の笑った顔が好きだよ。
笑って……?
泣き続ける桜花の頬にそっと触れ、微笑んで見せた。泣き止ませる為だったのにそれで更に桜花が泣く事になり、わたわたとしてしまう。
「遥君……うぇええん……」
男はしばらく俺たちの事を見ていたが、大きなため息をひとつ吐くと
「――このくらいで許しといたる。桜花に感謝しぃや小僧。今度こそ大事にせーへんかったら俺がまたどついたるからな」
それだけ言い残しその場から去って行った。
「桜花……桜花……ごめん。ごめんな……」
「なんでぇ?なんで来たん……?」
「桜花が大事、だったから……とられたくなかった……」
「僕遥君の事、諦めようと頑張ったんよ……?」
「もう頑張らなくていいんだ。桜花、好きだよ。俺のものになって――?」
桜花は俺の言葉に顔をくしゃりとさせて、こくこくと何度も大きく頷いた。
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