俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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俺のかわいい幼馴染さま

2 さよぅなら?

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次の日、稽古の時間が終わっても桜花は姿を現さなかった。
不思議に思い、お弟子さんたちを見送っていた母さんに訊いてみた。

「母さん、桜花休み? 風邪でもひいた?」

「あら、桜花ちゃんから聞いてないの? 今日お見合いなのよ。まぁお見合いっていっても形だけの物でそのまま番になる事は決まっているんですって。番になったら今ほど自由にできないから辞めさせてもらうって昨日挨拶に来たのよ。桜花ちゃんあなたの事探してたからてっきり話したものだと思っていたわ」

ハンマーでガツンと思い切り頭を殴られた気がした。

「あんないい子今時なかなかいないから、うちの嫁に欲しかったのにねぇ。本当残念だわー」

上手く回らない頭で考える。
桜花がお見合い……? 俺以外と番う――? 何で?
「また明日」って言って昨日別れたろ?
それで桜花も……

――――いや、桜花は言ってない。

「さよぅなら」って言ってた。
俺に「さよぅなら」って――――。

番ったΩはその番う相手によってはよほどの事がない限り表へは出て来なくなると聞く。うちだって母さんがαで、Ωである父さんは家に居て滅多に表に出る事はない。
俺はαだし、桜花の見合い相手がどういうヤツか知らないけど前みたいに気軽に会う事はできないだろう。いや、活け花うちも辞めるくらいだし二度と会えないかもしれない。
桜花は可愛い。あんな可愛い番を他のαに会わせるなんて事――俺なら絶対にしない。

「――あなた……なんて顔してるの」

「顔――――――?」

母さんは溜め息をつくと俺の頬を優しく撫でた。

「この世の終わりみたいな、そんな顔をしてるわよ」

「だって……桜花は……桜花は俺の事が……好きだって――」

うわ言のように呟く俺に母さんは厳しい顔つきになって言った。

「あなたが桜花ちゃんをふったんでしょう? 応える気も無いのに自分に桜花ちゃんを縛り付けるつもりだったの?」

「――ち、ちがっ……俺は――っ!」

「じゃあどうするの? あなたはどうしたいの?」

俺は――――!

母さんに答える時間も惜しくて、桜花の家に向って走り出していた。

その時の俺の頭の中は桜花の事でいっぱいで。
桜花を誰にも取られたくない。
桜花を取り返さなくては。

ただそれだけだった。
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