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俺のかわいい婚約者さま
婚約者さま 番外編6 デートをしよう。
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奏が生まれて父さんのデレデレっぷりがひどい。所謂爺バ〇というやつで、俺たち以上に奏を可愛がっていた。
産後の体調も落ち着いた頃、父さんが楓君とデートにでも行ってきなさいと奏を預かってくれた。
俺と満足に触れ合えない楓君がそろそろ限界に近かった事が分かっての提案なのだろう。
本当父さんには頭が上がらない。
俺たちは父さんの優しさに甘える事にして、朝早くからお弁当を持って動物園に来ていた。俺たちが婚約者だった頃一緒にきた動物園だ。
どこへ行こうかという話になった時、二人同時に出た言葉は「動物園」だった。
俺たちは思わず顔を会わせて笑った。きっと楓君も同じ想いなんだ。
「楓君、まずどこに行こうか?」
「熊を見たいです」
熊……あの時も熊を見に行ったね。手を繋いではしゃぐキミ。キラキラの瞳で熊の事を見ていた。
そして俺が質問をしたんだ。
「楓君、熊は……好きかい……?」
あの頃不安でいっぱいだった。キミのまっすぐな気持ちをそのまま受け取る事ができなくて、いつも不安で不安で――――。あの頃向けられていた奇異の目はもうない。ただ楓君の美しさをうっとりとみつめる人はいるけれど。
「熊ですか? 勿論好きですよ。大きくて抱きしめると温かそうですよね。えいっ」
あの時と同じ、いたずらっ子のように瞳を輝かせて俺に抱き着く楓君。
何年経ってもキミはキミのままで、可愛い天使で、恰好いい俺の番。
逞しい腕でしっかりと抱き込まれる。
キミの腕の中は世界で一番安心できる場所。
「楓君、大好き。昔も今も――」
「俺も薫さんの事が世界で一番大好きです。勿論昔も今も、これから先も――」
そう言って笑顔を見せたのに、すぐに少しだけ寂しそうな顔をした。
「どうしたの?」
「――――もっと色々な場所で薫さんとデートしたかった、です……」
少しだけ涙を浮かべながらそんな事を言う。俺もそれにつられてじわりと涙が浮かぶ。
俺たちが離れてしまっていた8年という年月は決して短くはない。
その時間を共に過ごせなかった事は楓君にとって俺が思っていた以上に大きな傷になってしまっているようだ。
俺にとっても楓君と共に過ごせたかもしれなかった8年という失ってしまった時間は、心を抉るような傷になってしまっている。
だけど、過去の事をいくら悔やんでも悲しんでももう戻らないんだからしょうがないじゃないか。
代わりに俺たちには未来がある。
二人で……今じゃ奏という子どもまで授かって、大切なものが増えたこれからの時間。
だからね、楓君。
「ふふ。いいじゃない。これからずーっと一緒でしょう? 何度だってどこへだって行けるよ。二人でも、奏を連れて三人でも。沢山沢山デートをしよう?」
俺たちのこれからの事を想うと笑顔でしかいられない。
「――――――はい……っ!」
俺たちは涙を拭い、笑顔で互いを見つめた。
晴れた日だって雨の日だって、どんな日でもデートをしよう。
俺たちはこれからずーっとずっと一緒だよ。
-おわり-
産後の体調も落ち着いた頃、父さんが楓君とデートにでも行ってきなさいと奏を預かってくれた。
俺と満足に触れ合えない楓君がそろそろ限界に近かった事が分かっての提案なのだろう。
本当父さんには頭が上がらない。
俺たちは父さんの優しさに甘える事にして、朝早くからお弁当を持って動物園に来ていた。俺たちが婚約者だった頃一緒にきた動物園だ。
どこへ行こうかという話になった時、二人同時に出た言葉は「動物園」だった。
俺たちは思わず顔を会わせて笑った。きっと楓君も同じ想いなんだ。
「楓君、まずどこに行こうか?」
「熊を見たいです」
熊……あの時も熊を見に行ったね。手を繋いではしゃぐキミ。キラキラの瞳で熊の事を見ていた。
そして俺が質問をしたんだ。
「楓君、熊は……好きかい……?」
あの頃不安でいっぱいだった。キミのまっすぐな気持ちをそのまま受け取る事ができなくて、いつも不安で不安で――――。あの頃向けられていた奇異の目はもうない。ただ楓君の美しさをうっとりとみつめる人はいるけれど。
「熊ですか? 勿論好きですよ。大きくて抱きしめると温かそうですよね。えいっ」
あの時と同じ、いたずらっ子のように瞳を輝かせて俺に抱き着く楓君。
何年経ってもキミはキミのままで、可愛い天使で、恰好いい俺の番。
逞しい腕でしっかりと抱き込まれる。
キミの腕の中は世界で一番安心できる場所。
「楓君、大好き。昔も今も――」
「俺も薫さんの事が世界で一番大好きです。勿論昔も今も、これから先も――」
そう言って笑顔を見せたのに、すぐに少しだけ寂しそうな顔をした。
「どうしたの?」
「――――もっと色々な場所で薫さんとデートしたかった、です……」
少しだけ涙を浮かべながらそんな事を言う。俺もそれにつられてじわりと涙が浮かぶ。
俺たちが離れてしまっていた8年という年月は決して短くはない。
その時間を共に過ごせなかった事は楓君にとって俺が思っていた以上に大きな傷になってしまっているようだ。
俺にとっても楓君と共に過ごせたかもしれなかった8年という失ってしまった時間は、心を抉るような傷になってしまっている。
だけど、過去の事をいくら悔やんでも悲しんでももう戻らないんだからしょうがないじゃないか。
代わりに俺たちには未来がある。
二人で……今じゃ奏という子どもまで授かって、大切なものが増えたこれからの時間。
だからね、楓君。
「ふふ。いいじゃない。これからずーっと一緒でしょう? 何度だってどこへだって行けるよ。二人でも、奏を連れて三人でも。沢山沢山デートをしよう?」
俺たちのこれからの事を想うと笑顔でしかいられない。
「――――――はい……っ!」
俺たちは涙を拭い、笑顔で互いを見つめた。
晴れた日だって雨の日だって、どんな日でもデートをしよう。
俺たちはこれからずーっとずっと一緒だよ。
-おわり-
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