俺のかわいい婚約者さま リメイク版

ハリネズミ

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俺のかわいい婚約者さま

婚約者さま 番外編3 いつだってキミは。 R-18少しだけ

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あれから楓君は及川の系列会社で平社員として社会人生活をスタートさせた。
俺は楓君を支えると決めたから、仕事を辞めて家に入った。
二人で暮らすのは楓君が用意してくれていたマンションで、俺たちが番になった場所だ。
楓君は頑張って働いてもっと大きな家に住めるようにします!って言ってくれたけど、俺はここが気に入ってるんだ。住んでみて分かった。家具の配置やシンクの高さなんか全て俺に合わせてある。
もしもの時の為に鍵付きの頑丈な扉の部屋まであるんだから。
そこにキミがいて、これ以上何を望むと言うんだろう。俺はキミと居られたらどこでだって幸せだよ。

楓君は慣れない仕事に帰りはいつも午前様で、日に日にやつれていっているように見えた。
最近では夕食の途中で寝てしまう事もしばしばで、それでも俺は「無理はしないで」とは言えなかった。
その代わりこの家が、俺の傍が少しでもキミにとって過ごしやすい場所でありますように、疲れを癒す場所でありますように、と願いを込めて整えた。
食事も少しでも栄養が取れるものを調べ一生懸命作った。
慣れない家事は存外大変なものだったが、俺もキミと一緒に戦うと決めたから。弱音は吐かない。


その日は朝から少し熱っぽく、そろそろアレが始まる事が分かった。

「やっぱり来てはくれなかったんだね……」

――赤ちゃん……。そんな呟きと共に自分の下腹部をさすった。

36歳になるまでヒートらしいヒートも来た事がなかったのに、一度のヒートですぐに妊娠なんてしない事は分かっていた。定期的に受けていた検診でも妊娠は難しいかもしれないとやんわりと言われてもいた。
簡易式の検査も自分で薬局で買ってこっそりとやっていたし、結果は分かっていた。
だけど、それでも、もしかしたら……なんて。

楓君との赤ちゃんが――――。

涙が零れそうになるが勢いよく頭を振って、両頬を思いっきり叩いた。

「気合を入れろ!」

そうだ。泣いてる場合じゃないんだ。

俺は一週間分のごはんを作り小分けにして冷凍庫へと入れた。そして次は一日毎にまとめた衣類を置いていく。
俺はこのヒートをひとりで乗り切るつもりでいた。だからこれはその間の楓君のごはんや着替えの準備だ。
忙しくて大変な楓君に俺のヒートの相手なんてさせられない。
ひとりでも大丈夫。
俺は自分に何度も言い聞かせて、楓君が用意してくれた鍵のかかる部屋に入ってガチャリと鍵をかけた。



*****
振り向くと部屋の隅に置かれた大きなベッドの端に、楓君が長い脚を組んで座っているのが目に入った。

「――――え?」

だって今日も朝早くから見送ったのに……どうして?
ぶわりと広がるフェロモン。

「俺が薫さんの考える事が分からないとでも思いましたか?」

そう言うと楓君はふっと笑い、両手を広げた。あの時のように。
ふらふらと誘われるまま楓君の腕の中に納まる。これもあの時と同じだ。

「ひとりで頑張らないで……」

楓君は俺を抱きしめ頭にキスの雨を降らせながらそんな事を言う。

「それは、楓君の方がっ」

「頑張るとこが違いますよ。薫さんが俺の為に家の事を色々頑張ってくれているの本当に感謝しています。本当は何もしないで俺の傍に居てくれるだけでもいいんだけど、それは違うと思うから、だから何もしなくていいとも無理しないでとも言わないでしょう?だけど、これはダメ。番がいるのにひとりでヒートを乗り切ろうだなんてあり得ません」

「――――だって楓君仕事頑張ってるから……。一週間もヒートに付き合わせられない……」

「薫さん、怒りますよ? ヒートに付き合うとか付き合わないとか、そういうものじゃないでしょう? 番のヒートは二人のものです。愛を深め合う大切な大切な時間なんですよ? ヒート休暇を勝ち取る為にここ最近特に忙しくしていたので気を遣わせてしまったんでしょうけど……。でも、気を遣うんじゃなくて、頑張った俺にをくれませんか?」

「ご褒美……?」

「そうですよ。大好きな薫さんと一週間もずーっと一緒に居られるんですから、ご褒美以外の何物でもありませんよ。そう思いませんか?」

そう言ってキミがあんまり綺麗に笑うものだから、俺はキミしか見えなくなる。キミの事しか考えられなくなる。
俺はまた間違えてしまうところだった。

「楓君……」

自分から楓君の唇に自分の唇を重ねた。
それが合図となってお互いのフェロモンが部屋中に広がり、満たす。

ヒートが始まった。



*****R-18少しだけ
「愛してる……薫さん。舌を出してみて?」

「ん」

言われるがまま舌を出すと、楓君ははむっと俺の舌を食べた。
吸ったりはむはむしたり、それだけで気持ちがいい。
はしたなく揺れる腰。乱れる息。

「薫さん、かーわいい……」

そう呟き、くすりと笑う楓君。
まだ少しだけ理性の残る俺は、それが恥ずかして仕方がないがそれでも止める事はできない。
それどころかもっとと強請ってしまう。

「かえでぇ……もっとぉ‥………」

自分からも舌を絡ませ、楓君を味わう。
好き。

「もっとなのぅ……」

ぐずぐずと涙を浮かべその先を強請る。
楓君はごくりと唾を飲み込み、ふわりと笑った。

「喜んで……」

深くなるキス。口内を余すところなく楓君の舌が蹂躙していく。飲み込み切れず口の端から零れる唾液は、もはやどちらのものとも分からない。
キスだけで立ち上がってしまった俺の中心と、後ろの蜜壺はご褒美を今か今かと待ちわびて蜜を零す。


それから――――の記憶はない。
ぼんやり覚えているのは楓君の「愛してる」の言葉と俺の中をかき回す楓君の――――。
俺の中に注がれ、満たす熱いものがお腹を少しだけ膨らませていた。
俺は幸せな気持ちで自分のお腹をそっと撫でた。


この時の交わりで俺の中に新しい命が芽吹く事になる事を今はまだ知らない。




-おわり-
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