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俺のかわいい婚約者さま
7 @遥
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「一条君、北山君が朝からすごく機嫌が悪いんだけど……何か知らない?同じ教室に居るのがつらくて……」
朝、教室に入るなりそう声をかけて来たのはうちのクラスの委員長だった。
あの男を待ち伏せした翌日の事だ。
委員長の言葉に少しだけ期待して胸が躍る。
「いや……? 知らない、けど?」
そう言いながら楓の方を見ると確かに全身にぴりぴりとした空気を纏っており、αの威圧を抑えきれていない様子だった。もしかしたら威圧が出ている事も楓は気づいていないのかもしれない。
楓の威圧はクラス全体に重くのしかかり、クラスメイトたちの顔色も悪い。
俺は十中八九あの事が原因だとは思ったが、楓の口から聞きたいと何食わぬ顔で訊ねてみた。
「楓、怖い顔して……ど、した?」
「学校なんて……来てる場合じゃないんだよ……っ。薫さんが……薫さんが……っ電話も通じないし、――会って話さなきゃっ!」
震える声でそう言うと、今すぐにでもあの男の会社に乗り込んで行きかねない勢いの楓を俺は必死に抑えた。
あの男の元へなんか行かせてなるもんかっ!
「落ち着けよ! むこうだって仕事中だろ? 邪魔したら……嫌われる、ぞ?」
「――――っ!」
楓ははっとしてすとんと椅子に座り、それきり黙ってしまった。
クラスを支配していた威圧は消えたけど、本当に俺はコレを望んでいたのか――――?
*****
それから何日も過ぎたが、楓はあの男に会う事ができていないようだった。
二人の婚約話が無くなっても決して俺の方を見ない楓。ただただ憔悴していく楓の姿に胸が痛んだ。
こんな事になるなんて思ってもみなかった。
俺はただ楓の事が好きで、自分の事を見て欲しかった――だけ。
「ごめん……! 本当にごめんっ楓!」
力のない瞳で俺の事を見る楓。
俺は震える声で自分があの男に会い、言ってしまった事を伝えた。
泣きながら伝える俺の事を楓は温度のない瞳で黙って見下ろしていた。
楓の家が経済的に困っている事実はない。
俺と将来結婚の約束をしている話もない。俺の一方的な想いだ。
その事を伝えながら、自分がすごくひどい事をしてしまったのだと分かった。
全てを話し終え、まるで死刑宣告を待つような思いで楓を見つめる。
「――分かった。お前が何を言ったとしても僕らがこうなってしまったのは、僕の気持ちを薫さんに信じてもらえていなかったという事だ。あんなに愛される事を不安がっていたのに――――。僕の力不足だ。だけど、お前が薫さんを傷つけた事は許す事はできない。二度と僕たちの前に姿を現すな」
静かな口調だった。だけど、それがかえって楓の怒りを表わしているようで、俺はこの時初めて楓の事が怖いと思った。同じαではあるが俺よりも上位のα。俺の憧れで大好きな人――。
大好きだったキラキラの瞳はもう二度と俺の姿を映す事はない。
俺は恋人になるどころか、幼馴染みで友人という立場すら失ってしまったのだ。
朝、教室に入るなりそう声をかけて来たのはうちのクラスの委員長だった。
あの男を待ち伏せした翌日の事だ。
委員長の言葉に少しだけ期待して胸が躍る。
「いや……? 知らない、けど?」
そう言いながら楓の方を見ると確かに全身にぴりぴりとした空気を纏っており、αの威圧を抑えきれていない様子だった。もしかしたら威圧が出ている事も楓は気づいていないのかもしれない。
楓の威圧はクラス全体に重くのしかかり、クラスメイトたちの顔色も悪い。
俺は十中八九あの事が原因だとは思ったが、楓の口から聞きたいと何食わぬ顔で訊ねてみた。
「楓、怖い顔して……ど、した?」
「学校なんて……来てる場合じゃないんだよ……っ。薫さんが……薫さんが……っ電話も通じないし、――会って話さなきゃっ!」
震える声でそう言うと、今すぐにでもあの男の会社に乗り込んで行きかねない勢いの楓を俺は必死に抑えた。
あの男の元へなんか行かせてなるもんかっ!
「落ち着けよ! むこうだって仕事中だろ? 邪魔したら……嫌われる、ぞ?」
「――――っ!」
楓ははっとしてすとんと椅子に座り、それきり黙ってしまった。
クラスを支配していた威圧は消えたけど、本当に俺はコレを望んでいたのか――――?
*****
それから何日も過ぎたが、楓はあの男に会う事ができていないようだった。
二人の婚約話が無くなっても決して俺の方を見ない楓。ただただ憔悴していく楓の姿に胸が痛んだ。
こんな事になるなんて思ってもみなかった。
俺はただ楓の事が好きで、自分の事を見て欲しかった――だけ。
「ごめん……! 本当にごめんっ楓!」
力のない瞳で俺の事を見る楓。
俺は震える声で自分があの男に会い、言ってしまった事を伝えた。
泣きながら伝える俺の事を楓は温度のない瞳で黙って見下ろしていた。
楓の家が経済的に困っている事実はない。
俺と将来結婚の約束をしている話もない。俺の一方的な想いだ。
その事を伝えながら、自分がすごくひどい事をしてしまったのだと分かった。
全てを話し終え、まるで死刑宣告を待つような思いで楓を見つめる。
「――分かった。お前が何を言ったとしても僕らがこうなってしまったのは、僕の気持ちを薫さんに信じてもらえていなかったという事だ。あんなに愛される事を不安がっていたのに――――。僕の力不足だ。だけど、お前が薫さんを傷つけた事は許す事はできない。二度と僕たちの前に姿を現すな」
静かな口調だった。だけど、それがかえって楓の怒りを表わしているようで、俺はこの時初めて楓の事が怖いと思った。同じαではあるが俺よりも上位のα。俺の憧れで大好きな人――。
大好きだったキラキラの瞳はもう二度と俺の姿を映す事はない。
俺は恋人になるどころか、幼馴染みで友人という立場すら失ってしまったのだ。
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