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④ @佐藤 千歳
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俺にとって紫央は『天使』だ。何者にも穢させてはいけない。勿論それは俺にも言える事だ。7つ年下のふわふわの無垢な天使。
俺の背をいつの間にか超える程成長して、イケメンに育った今もそれは変わらない。可愛いかわいい俺の天使――。
*****
あれは俺がまだ中学生の頃、隣りに紫央が引っ越してきた。当時の紫央はまだ6歳で、本当に可愛かった。
紫央の両親が共働きで忙しかった事もあり俺の家で紫央を預かる事も多かった。最初は戸惑ったけど、突然できた可愛い天使のような紫央をめちゃくちゃ可愛がった。紫央も俺によく懐いて、そのうち紫央の両親がいても俺の家に来るようになった。俺たちは学校以外はいつも一緒だった。
紫央に対する想いは俺自身が13歳にしては幼く、その先に何があるのかなんて考えた事もなかった。何がきっかけだったのか忘れたが紫央のほっぺにチュウをして紫央がニコニコと笑って、お返しに同じように俺の頬にチュウをしてくれた。それだけで胸がいっぱいで、くすぐったくて、ふたりしてくすくすと笑い合った。
そして俺が高校生になって事件(事件という程の事ではないかもしれないが、俺にとっては大事件だった)は起こった。
その日はいつものように紫央がうちに遊びに来ていて、ふたりでおやつを食べていた。紫央は俺の膝の上にちょこんと座ってシュークリームを食べていた。こうする事に特に意味はなく、ただ何となくくっついているとお互いに安心しての事だった。
俺もシュークリームをぱくつきながら「美味しいね」なんて事を言っていたら、急に紫央が振り向いて、その顔と手にクリームがべっとりとついていた。
力加減が分からずシュークリームの中身が飛び出してしまったのだろう。
それを見た瞬間、俺の心臓がドキリと跳ねた。それが妙にエロく見えてしまったのだ。というのもその日友人たちがしていた明け透けな性の話。その中に出てきた――――。
もうダメだった。
俺もいつの間にか紫央の事をそういう対象として見ていた事に気づいた。気づいてしまった。
天使みたいに可愛くて綺麗な紫央を俺の欲望が穢してしまう事が怖かった。
そう思っていたのにその夜俺は夢の中で紫央を穢した――――。
そんな事が何度も続き俺は絶望した。いつか現実でも同じ事をしてしまいそうで怖かった。
そうならないように俺は紫央と少し距離を置こうとした。だけど、ダメだった。いくら距離を置こうとしても紫央は隣りに住んでいるし、学校が終わるとすぐにうちに来てしまう。抱き着いてきて頬にチュウしてくる。「ダメだよ」って何度注意しても「どうして?」って言って更にチュウしてくる。
わざと遅く帰ってみても紫央は俺の顔を見た途端へにゃへにゃと笑って、ぎゅーっと抱き着いて来るんだ。可愛くて、大好きで――堪らない。
だから俺は高校を卒業して進路はうちから遠い学校を選んだ。それも普通の大学ではなく製菓専門学校だ。俺には将来の夢なんてものはなかったけど、俺が家庭科の授業で一度だけ作ったへたっぴなクッキーを口いっぱいに頬張って、美味しいと笑う紫央を思い出し、パティシエになろうと思ったのだ。
あんな失敗作なんかじゃなくて、もっと本当に美味しいお菓子を紫央に食べさせてあげたい。
俺は紫央から離れなきゃと思うのに紫央の笑顔を見たいと思ってしまう。
結局、紫央の傍にいても離れたとしても、俺の全部は紫央を中心に回っているという事だ。
俺の背をいつの間にか超える程成長して、イケメンに育った今もそれは変わらない。可愛いかわいい俺の天使――。
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あれは俺がまだ中学生の頃、隣りに紫央が引っ越してきた。当時の紫央はまだ6歳で、本当に可愛かった。
紫央の両親が共働きで忙しかった事もあり俺の家で紫央を預かる事も多かった。最初は戸惑ったけど、突然できた可愛い天使のような紫央をめちゃくちゃ可愛がった。紫央も俺によく懐いて、そのうち紫央の両親がいても俺の家に来るようになった。俺たちは学校以外はいつも一緒だった。
紫央に対する想いは俺自身が13歳にしては幼く、その先に何があるのかなんて考えた事もなかった。何がきっかけだったのか忘れたが紫央のほっぺにチュウをして紫央がニコニコと笑って、お返しに同じように俺の頬にチュウをしてくれた。それだけで胸がいっぱいで、くすぐったくて、ふたりしてくすくすと笑い合った。
そして俺が高校生になって事件(事件という程の事ではないかもしれないが、俺にとっては大事件だった)は起こった。
その日はいつものように紫央がうちに遊びに来ていて、ふたりでおやつを食べていた。紫央は俺の膝の上にちょこんと座ってシュークリームを食べていた。こうする事に特に意味はなく、ただ何となくくっついているとお互いに安心しての事だった。
俺もシュークリームをぱくつきながら「美味しいね」なんて事を言っていたら、急に紫央が振り向いて、その顔と手にクリームがべっとりとついていた。
力加減が分からずシュークリームの中身が飛び出してしまったのだろう。
それを見た瞬間、俺の心臓がドキリと跳ねた。それが妙にエロく見えてしまったのだ。というのもその日友人たちがしていた明け透けな性の話。その中に出てきた――――。
もうダメだった。
俺もいつの間にか紫央の事をそういう対象として見ていた事に気づいた。気づいてしまった。
天使みたいに可愛くて綺麗な紫央を俺の欲望が穢してしまう事が怖かった。
そう思っていたのにその夜俺は夢の中で紫央を穢した――――。
そんな事が何度も続き俺は絶望した。いつか現実でも同じ事をしてしまいそうで怖かった。
そうならないように俺は紫央と少し距離を置こうとした。だけど、ダメだった。いくら距離を置こうとしても紫央は隣りに住んでいるし、学校が終わるとすぐにうちに来てしまう。抱き着いてきて頬にチュウしてくる。「ダメだよ」って何度注意しても「どうして?」って言って更にチュウしてくる。
わざと遅く帰ってみても紫央は俺の顔を見た途端へにゃへにゃと笑って、ぎゅーっと抱き着いて来るんだ。可愛くて、大好きで――堪らない。
だから俺は高校を卒業して進路はうちから遠い学校を選んだ。それも普通の大学ではなく製菓専門学校だ。俺には将来の夢なんてものはなかったけど、俺が家庭科の授業で一度だけ作ったへたっぴなクッキーを口いっぱいに頬張って、美味しいと笑う紫央を思い出し、パティシエになろうと思ったのだ。
あんな失敗作なんかじゃなくて、もっと本当に美味しいお菓子を紫央に食べさせてあげたい。
俺は紫央から離れなきゃと思うのに紫央の笑顔を見たいと思ってしまう。
結局、紫央の傍にいても離れたとしても、俺の全部は紫央を中心に回っているという事だ。
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