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突然千歳くんが進学の為に家を出て行って傍にいられなかった1年。そして留学による再びの1年の会えなかった時間。
俺はその間毎日考えていた。どうすれば千歳くんと一緒にいられるのか。進路や将来について相談もして貰えないただの幼馴染なんかじゃなく、もっと千歳くんの傍で千歳くんを支えていくにはどうしたらいいのか。
一番いいのは結婚だけど、あいにく俺たちは同性で結婚はできない。じゃあどうしたら?
『恋人になればいい』
俺は千歳くんの事が本当に好きだったから自分の行きついた答えに心が弾んだ。
何も知らずひとり残されて、ただ待ち続ける事が嫌だった。
千歳くんと恋人になれるなら、連絡がなかったとしても俺は信じて何年でも待っていられる。ただの幼馴染やお隣りさんという繋がりよりは強く繋がれる。そう思っての告白だった。俺が13歳、千歳くんが20歳。
俺の告白を受けて千歳くんも真剣な顔で「修行中はお菓子の事だけ考えていたい。修行を終えて帰って来たら……真剣に考える」って言ってくれたから、俺はその言葉を胸に寂しくても我慢して待っていられたんだ。先の2年間とは違い『約束』をくれたから。
何事にもきっちりとしている千歳くんはいい加減な事は言わないと信じられたから。
今度は国内だから外国に比べて連絡を取るハードルだって低いはずだった。
だから少しは期待していた。だけど千歳くんからの連絡は一度もなかった。
でもきっと忙しいんだって思って我慢できたんだ。修行を終えて帰って来たら晴れて俺たちは恋人になれるって思ってた。自分がフラれる事なんて少しも考えていなかった。だって千歳くんは俺の元を離れるまではいつもいつだって優しかった。俺を抱きしめて頬にキスしてくれた。そんな事好きじゃないとしないはず。
だけど――千歳くんは答えをくれない。恋人にもなれないし、かと言ってフラれもしない。そんな宙ぶらりんの状態だ。
クッキーだってサクサクで美味しく作る為には生地を寝かせる必要があるけど、もう俺たちの恋は5年も寝かせた状態で、それに意味があるなんて思えなかった。
たとえこれでどんなに美味しく焼き上がるとしても俺はそんなのは嫌だと思った。
多少不味くたってふたりで食べれば美味しいって事を俺は知っていたから。
あの不格好で焦げたクッキーのように――――。
俺はその間毎日考えていた。どうすれば千歳くんと一緒にいられるのか。進路や将来について相談もして貰えないただの幼馴染なんかじゃなく、もっと千歳くんの傍で千歳くんを支えていくにはどうしたらいいのか。
一番いいのは結婚だけど、あいにく俺たちは同性で結婚はできない。じゃあどうしたら?
『恋人になればいい』
俺は千歳くんの事が本当に好きだったから自分の行きついた答えに心が弾んだ。
何も知らずひとり残されて、ただ待ち続ける事が嫌だった。
千歳くんと恋人になれるなら、連絡がなかったとしても俺は信じて何年でも待っていられる。ただの幼馴染やお隣りさんという繋がりよりは強く繋がれる。そう思っての告白だった。俺が13歳、千歳くんが20歳。
俺の告白を受けて千歳くんも真剣な顔で「修行中はお菓子の事だけ考えていたい。修行を終えて帰って来たら……真剣に考える」って言ってくれたから、俺はその言葉を胸に寂しくても我慢して待っていられたんだ。先の2年間とは違い『約束』をくれたから。
何事にもきっちりとしている千歳くんはいい加減な事は言わないと信じられたから。
今度は国内だから外国に比べて連絡を取るハードルだって低いはずだった。
だから少しは期待していた。だけど千歳くんからの連絡は一度もなかった。
でもきっと忙しいんだって思って我慢できたんだ。修行を終えて帰って来たら晴れて俺たちは恋人になれるって思ってた。自分がフラれる事なんて少しも考えていなかった。だって千歳くんは俺の元を離れるまではいつもいつだって優しかった。俺を抱きしめて頬にキスしてくれた。そんな事好きじゃないとしないはず。
だけど――千歳くんは答えをくれない。恋人にもなれないし、かと言ってフラれもしない。そんな宙ぶらりんの状態だ。
クッキーだってサクサクで美味しく作る為には生地を寝かせる必要があるけど、もう俺たちの恋は5年も寝かせた状態で、それに意味があるなんて思えなかった。
たとえこれでどんなに美味しく焼き上がるとしても俺はそんなのは嫌だと思った。
多少不味くたってふたりで食べれば美味しいって事を俺は知っていたから。
あの不格好で焦げたクッキーのように――――。
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