4 / 7
(2)
しおりを挟む
次の休み時間、さっそくG組にたっくを見に行った。
俺はA組なのでお互いの教室は結構離れている。だから気づかなかったのかな…?でも小学校も中学校も同じ学校だったなんて…いくらなんでも気づかな過ぎじゃない?俺がぼんやりしてた…?それともたっくんが意図的に俺の事避けてた―――?
こっそり教室を覗くと確かに成長したたっくんの姿があった。
友人らしいαたちと談笑していた。
笑顔がキラキラと輝いて見える。
好き。
芦崎が言うように本当に海外に行くって言ったのは嘘だった…?
―――どうして?
そんなの答えは分かり切ってる。俺の事が嫌だったからだ。
ずっとずっと不安だった。
番にしてって言ってみたはいいけどすぐに間違いだったって気づいたんだ。
恋焦がれていたたっくんにやっと会えたというのに辛くて悲しくて…でも好き過ぎて、たっくんの成長した姿に心臓がドクンと跳ねた。
ついさっき治まったばかりなのに発情期が来てしまった。
発情期はわりとメンタルに影響を受けやすい。
俺なんかは結構不規則で二、三ヶ月ない事や連続して何日も続く事も珍しくなかった。こうやって終わったばかりなのにまた始まってしまう事も。
ぶわりと香りが広がっていく。
ばたばたと倒れていくαたち。
たっくんは真っ赤な顔をして手で鼻と口を押さえていた。
すぐに俺の姿を認め、見開かれる瞳。
こんな風には会いたくなかったな……。
ぽろりと涙が零れた。
やっぱり俺ではダメだって事なんだね……。
たっくんの事本当に大好きだった……。
大好きだったから信じて何年も待っていられたのに――。
俺はそれ以上そこにいる事ができなくて、きついフェロモンを垂れ流しながら走って逃げた。
俺の通った後にはバタバタとと倒れたαたちの屍の山。
走って走って途中足が縺れて倒れてしまい、そのまま起き上がる気力もなくその場で蹲って子どもように泣いた。
「うぇ―――――ん…っ」
「――大丈夫…?」
顔を上げると先輩が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
俺が弱っている時、いつも傍にいてくれる先輩。
「どうしたの?何で泣いてるの?誰かにいじめられた?Ωは愛すべき存在なのに――」
眉を顰め俺を泣かしたであろう人物に対して怒りを露わにする。
先輩の怒っている顔は初めて見る。
俺の為に怒ってくれる優しい先輩。
「ひっくひっく…」
先輩は俺の事を抱きしめていつものように頭を優しく撫でてくれた。
俺はその温もりに小さい頃のたっくんの事を思い出していた。
たっくんもいつもこうやって抱きしめて頭を撫でてくれてた。
「好き」っていつも言ってくれてたのに…。
こんな時でさえ目の前の先輩よりたっくんの事を求めてしまう。
涙が更に溢れてきて止まらない。
「ねぇ…僕が守ってあげようか…?キミさえよければ僕のパートナーにならない…?」
「――え…?」
「僕はβだからαのように番う事はできないけれど、僕ならキミを悲しませないし守ってみせる。だから―――」
先輩は優しい。
先輩の手を取れば確かに悲しくはないかもしれない。
でも……先輩に抱きしめられて優しい気持ちにはなるけど、ドキドキしたりはしないんだ。
悲しくはなくても幸せにはなれない。
たとえこの先たっくんと番えなかったとしてもたっくん以外は考えられない。
俺の番はたっくんだけだから。
俺はA組なのでお互いの教室は結構離れている。だから気づかなかったのかな…?でも小学校も中学校も同じ学校だったなんて…いくらなんでも気づかな過ぎじゃない?俺がぼんやりしてた…?それともたっくんが意図的に俺の事避けてた―――?
こっそり教室を覗くと確かに成長したたっくんの姿があった。
友人らしいαたちと談笑していた。
笑顔がキラキラと輝いて見える。
好き。
芦崎が言うように本当に海外に行くって言ったのは嘘だった…?
―――どうして?
そんなの答えは分かり切ってる。俺の事が嫌だったからだ。
ずっとずっと不安だった。
番にしてって言ってみたはいいけどすぐに間違いだったって気づいたんだ。
恋焦がれていたたっくんにやっと会えたというのに辛くて悲しくて…でも好き過ぎて、たっくんの成長した姿に心臓がドクンと跳ねた。
ついさっき治まったばかりなのに発情期が来てしまった。
発情期はわりとメンタルに影響を受けやすい。
俺なんかは結構不規則で二、三ヶ月ない事や連続して何日も続く事も珍しくなかった。こうやって終わったばかりなのにまた始まってしまう事も。
ぶわりと香りが広がっていく。
ばたばたと倒れていくαたち。
たっくんは真っ赤な顔をして手で鼻と口を押さえていた。
すぐに俺の姿を認め、見開かれる瞳。
こんな風には会いたくなかったな……。
ぽろりと涙が零れた。
やっぱり俺ではダメだって事なんだね……。
たっくんの事本当に大好きだった……。
大好きだったから信じて何年も待っていられたのに――。
俺はそれ以上そこにいる事ができなくて、きついフェロモンを垂れ流しながら走って逃げた。
俺の通った後にはバタバタとと倒れたαたちの屍の山。
走って走って途中足が縺れて倒れてしまい、そのまま起き上がる気力もなくその場で蹲って子どもように泣いた。
「うぇ―――――ん…っ」
「――大丈夫…?」
顔を上げると先輩が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
俺が弱っている時、いつも傍にいてくれる先輩。
「どうしたの?何で泣いてるの?誰かにいじめられた?Ωは愛すべき存在なのに――」
眉を顰め俺を泣かしたであろう人物に対して怒りを露わにする。
先輩の怒っている顔は初めて見る。
俺の為に怒ってくれる優しい先輩。
「ひっくひっく…」
先輩は俺の事を抱きしめていつものように頭を優しく撫でてくれた。
俺はその温もりに小さい頃のたっくんの事を思い出していた。
たっくんもいつもこうやって抱きしめて頭を撫でてくれてた。
「好き」っていつも言ってくれてたのに…。
こんな時でさえ目の前の先輩よりたっくんの事を求めてしまう。
涙が更に溢れてきて止まらない。
「ねぇ…僕が守ってあげようか…?キミさえよければ僕のパートナーにならない…?」
「――え…?」
「僕はβだからαのように番う事はできないけれど、僕ならキミを悲しませないし守ってみせる。だから―――」
先輩は優しい。
先輩の手を取れば確かに悲しくはないかもしれない。
でも……先輩に抱きしめられて優しい気持ちにはなるけど、ドキドキしたりはしないんだ。
悲しくはなくても幸せにはなれない。
たとえこの先たっくんと番えなかったとしてもたっくん以外は考えられない。
俺の番はたっくんだけだから。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
いとおしい
ハリネズミ
BL
人も羨むくらい仲睦まじかった茅野誠と婚約者の長峰結花。
高校を卒業と同時に番う予定だった。
それなのに親友だと思ってたやつに婚約者を奪われてしまった。
いとおしい:苦しく辛い、可愛くて大切に想う
花に酔う
ハリネズミ
BL
二次性も分からないまま突然起こったヒートによって番関係になってしまう二人。
誤解によって歪められてしまった二人の関係はどうなるのか…?
視点未来はM、静流はSで表記しています。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる