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12 本当のあなたで ① @広瀬 涼
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「俺は太郎さんの恋人です」
「俺は太郎さんの事を心配する権利があります」
「俺はまだ高校生で、太郎さんより年下で、頼りないかもしれないけど……それでも俺は太郎さんの事を守りたい」
俺の言葉にいちいち「うん」「うん」と頷いてくれる太郎さん。
俺の気持ちを分かってくれた?
「ごめんなさい――。多分俺も涼くんが今の俺と同じ事言ったら傷ついたし、悲しかったと思う……。本当にごめん……」
「分かってくれたのならいいんです」
俺はやっと微笑む事ができた。
本当に太郎さんが無事でよかった――――。
愛しい存在を抱きしめた腕に力を籠める。
「あの、ね……それで、ね? 俺も言いたい事が……」
今度は太郎さんが言いにくそうにしながらも何か言いたい事があるらしい。
確かに最近何か言いたそうにしてはいたけど――――?
「?」
「なんで――抱いて、くれないの……?」
「!?」
そんな事を言われるとは思っていなくて、あわあわと慌てた。
「――好きなのは分かってる……それは疑っていないよ。だけど抱いてくれないのは――どうして?」
「それは……やっぱりそういうのは太郎さんの姿の時がいいなって思って――。どう言えば太郎さんが納得してくれて、傷つけないで済むかずっと考えていました。それとなく伝えたつもりでしたが、最近の太郎さんは俺の前でゼンさんの姿でばかりいます。勿論ゼンさんも太郎さんなんだから同じだって事は分かってますし、俺の事を気遣っての事だっていうのも分かりますけど――、それでも俺は太郎さんを抱きたい。最初だけじゃなくて、二回目も三回目も――ずっとずっと太郎さんだけを抱きたい」
「は……」
太郎さんの綺麗な瞳から一度は止まったはずの涙が零れた。
「え? あっ泣かないで下さいっ。俺、あの……っ傷つけるつもりなんか――っ」
「ううん」
太郎さんはゆっくりと頭を左右に振ると流れる涙もそのままで微笑んだ。
「そう、だよね。涼くんが俺なんかと付き合ってたら変なレッテルが貼られちゃうって思ったのも本当だけど、やっぱり俺自身が太郎の姿で涼くんの傍に居る事に自信がなかったんだ。涼くんはずっと太郎がいいって言ってくれてたのにね。それに多分ゼンの姿のまま一度でも涼くんに抱かれていたら……きっと後悔してた。ゼンと太郎の時との涼くんの態度の僅かな差に怯えて、傷ついてた。実際に差なんかなくても自分で無理矢理探しちゃってたと思う。ごめ……ううん。ありがとう」
「はい。俺は太郎さんだけを愛してます。この気持ちは何があってもずっと変わりません」
「涼くん、俺もこんなに好きになるのは、これまでもこれから先もずっと涼くんだけだよ」
見つめ合って、そして――。
「帰ろうか」
俺たちは未だ転がったままの男たちをそのままに、手を繋いで夜の散歩を楽しみながら家に帰った。
ああ勿論そのままって言っても本当にそのままにしておいたらこんな寒い時季にストーブはあるもののどうにかなっちゃうから、倉庫の隅にあった毛布を転がる男たちにこんもりと掛けてやった。多分暑苦しいくらいに。ちょっとした意趣返しのつもりだ。
帰ってすぐに俺たちは順番に風呂に入った。俺としては一緒に入りたかったけどまだダメらしい。恥ずかしがる太郎さんが可愛いから今日は我慢だ。でもいつか必ず絶対に。
――先に風呂を済ませた俺は太郎さんを待つ間、緊張がどんどん高まって落ち着かず、うろうろと部屋中を歩き回っていた。そこに太郎さんが出てきて――、俺の鼻から温かいものがタラりと垂れてきた。風呂上がりの太郎さんの姿があまりに刺激的で鼻血を出してしまったのだ。
鼻血はすぐに止まったけど、太郎さんは心配して今日はナシにしようって言いだしたから俺は一生懸命お願いした。別に焦ってする事でもないとは思う。これから先俺たちには時間はたっぷりあるんだ。だけど今日はあんな事があったし、少しだけ不安なんだ。別に変な意味じゃなく太郎さんの身体に少しも傷がついていない事を確かめたい。いくら言葉で訊いても自分の目で肌で確かめて安心したいんだ。
結局は太郎さんが折れて、俺たちは久しぶりの愛の語らいを夜通し行った。本当は一回……いや二回で終わらせるつもりが、俺が離してあげられなかった。
俺はそれだけ太郎さんが攫われた事にショックを受けていたという事なのかもしれない。
抱いてもだいてもまだ足らなくて、気が付けば朝になっていた。
俺の隣りで疲れた様子で眠る太郎さん。
色々なモノで汚れた太郎さんの身体をお湯で濡らしたタオルで丁寧に拭いて、起こしてしまわないようにそうっと抱きしめた。
この愛しい存在を今度は絶対に俺が守る――から。
「俺は太郎さんの事を心配する権利があります」
「俺はまだ高校生で、太郎さんより年下で、頼りないかもしれないけど……それでも俺は太郎さんの事を守りたい」
俺の言葉にいちいち「うん」「うん」と頷いてくれる太郎さん。
俺の気持ちを分かってくれた?
「ごめんなさい――。多分俺も涼くんが今の俺と同じ事言ったら傷ついたし、悲しかったと思う……。本当にごめん……」
「分かってくれたのならいいんです」
俺はやっと微笑む事ができた。
本当に太郎さんが無事でよかった――――。
愛しい存在を抱きしめた腕に力を籠める。
「あの、ね……それで、ね? 俺も言いたい事が……」
今度は太郎さんが言いにくそうにしながらも何か言いたい事があるらしい。
確かに最近何か言いたそうにしてはいたけど――――?
「?」
「なんで――抱いて、くれないの……?」
「!?」
そんな事を言われるとは思っていなくて、あわあわと慌てた。
「――好きなのは分かってる……それは疑っていないよ。だけど抱いてくれないのは――どうして?」
「それは……やっぱりそういうのは太郎さんの姿の時がいいなって思って――。どう言えば太郎さんが納得してくれて、傷つけないで済むかずっと考えていました。それとなく伝えたつもりでしたが、最近の太郎さんは俺の前でゼンさんの姿でばかりいます。勿論ゼンさんも太郎さんなんだから同じだって事は分かってますし、俺の事を気遣っての事だっていうのも分かりますけど――、それでも俺は太郎さんを抱きたい。最初だけじゃなくて、二回目も三回目も――ずっとずっと太郎さんだけを抱きたい」
「は……」
太郎さんの綺麗な瞳から一度は止まったはずの涙が零れた。
「え? あっ泣かないで下さいっ。俺、あの……っ傷つけるつもりなんか――っ」
「ううん」
太郎さんはゆっくりと頭を左右に振ると流れる涙もそのままで微笑んだ。
「そう、だよね。涼くんが俺なんかと付き合ってたら変なレッテルが貼られちゃうって思ったのも本当だけど、やっぱり俺自身が太郎の姿で涼くんの傍に居る事に自信がなかったんだ。涼くんはずっと太郎がいいって言ってくれてたのにね。それに多分ゼンの姿のまま一度でも涼くんに抱かれていたら……きっと後悔してた。ゼンと太郎の時との涼くんの態度の僅かな差に怯えて、傷ついてた。実際に差なんかなくても自分で無理矢理探しちゃってたと思う。ごめ……ううん。ありがとう」
「はい。俺は太郎さんだけを愛してます。この気持ちは何があってもずっと変わりません」
「涼くん、俺もこんなに好きになるのは、これまでもこれから先もずっと涼くんだけだよ」
見つめ合って、そして――。
「帰ろうか」
俺たちは未だ転がったままの男たちをそのままに、手を繋いで夜の散歩を楽しみながら家に帰った。
ああ勿論そのままって言っても本当にそのままにしておいたらこんな寒い時季にストーブはあるもののどうにかなっちゃうから、倉庫の隅にあった毛布を転がる男たちにこんもりと掛けてやった。多分暑苦しいくらいに。ちょっとした意趣返しのつもりだ。
帰ってすぐに俺たちは順番に風呂に入った。俺としては一緒に入りたかったけどまだダメらしい。恥ずかしがる太郎さんが可愛いから今日は我慢だ。でもいつか必ず絶対に。
――先に風呂を済ませた俺は太郎さんを待つ間、緊張がどんどん高まって落ち着かず、うろうろと部屋中を歩き回っていた。そこに太郎さんが出てきて――、俺の鼻から温かいものがタラりと垂れてきた。風呂上がりの太郎さんの姿があまりに刺激的で鼻血を出してしまったのだ。
鼻血はすぐに止まったけど、太郎さんは心配して今日はナシにしようって言いだしたから俺は一生懸命お願いした。別に焦ってする事でもないとは思う。これから先俺たちには時間はたっぷりあるんだ。だけど今日はあんな事があったし、少しだけ不安なんだ。別に変な意味じゃなく太郎さんの身体に少しも傷がついていない事を確かめたい。いくら言葉で訊いても自分の目で肌で確かめて安心したいんだ。
結局は太郎さんが折れて、俺たちは久しぶりの愛の語らいを夜通し行った。本当は一回……いや二回で終わらせるつもりが、俺が離してあげられなかった。
俺はそれだけ太郎さんが攫われた事にショックを受けていたという事なのかもしれない。
抱いてもだいてもまだ足らなくて、気が付けば朝になっていた。
俺の隣りで疲れた様子で眠る太郎さん。
色々なモノで汚れた太郎さんの身体をお湯で濡らしたタオルで丁寧に拭いて、起こしてしまわないようにそうっと抱きしめた。
この愛しい存在を今度は絶対に俺が守る――から。
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