11 / 23
6 最後の賭け
しおりを挟む
なけなしの勇気を出した結果、涼くんがバイトちゃんと仲良く商品を棚に並べているのを見てしまった。
そうなる事を望んでいたはずだった。柄にもなく説教じみた事までして……涼くんの隣りにはあの子のような『本物』がいいに決まってる。
良かったと思わなくてはいけない。
涼くんが幸せならそれでいい。本当は俺が涼くんの事を幸せにしたかったけど、俺じゃあ役不足だったって事だ。どんなに着飾って作り上げてみたって本物には敵わない。
恋の終わりはこんなものかとうそぶいて、空っぽになってしまった心を何かで埋めてしまおうと部屋の隅に積み上げられた苺チョコを手に取った。口の中にひとつ、またひとつと放り込む。
甘いはずなのにしょっぱくて、「ちっとも美味しくなんかない」と呟いた。
それから数日が過ぎ、明日はクリスマスイブ。本当なら涼くんと恋人になって初めてのクリスマスだから絶対に一緒に過ごしたいと思っていた。
壁に掛けられたカレンダーをぼんやりと見つめていると、チリンという音がした。スマホにメッセージが届いたのだ。どうせ会社の誰かが送ったクリスマス会のお知らせだろうと画面を見ると、涼くんからのメッセージだった。だけどそれはいつもとは違って、『会いたい』という初めての恋人らしい内容だった。
最初からこのメッセージが来ていたなら何かが違っていたかもしれない。だけど――。
折角終わらせようとした恋心が「まだもう少し」と。
何度もう終わったのだと自分に言い聞かせてみても、『会いたい』という言葉が涼くんの声で何度も囁く。
この恋を完全に終わらせる為に俺は『賭け』に出てみる事にした。
太郎とゼンでそれぞれ別の場所に涼くんを呼び出す――――。
*****
ゼンとして初めてメッセージを送る。
『お返事できなくてごめんなさい。24日お話があります。19時に〇〇公園に来て下さい♡ ゼン』
送信ボタンをタップし、今度は手紙を書く。
『突然の事ですみません。24日お話したい事があります。よかったら19時にxx公園に来て下さい。待ってます。 小染 太郎』
俺は手紙を書き上げたその足でコンビニに行き、涼くんを探した。いきなり明日会いたいと言われてももう他に約束があるかもしれないし、涼くんのシフトを知っているわけではないのでいない可能性もあった。もしいなかったら俺の賭けはその時点で負けだ。
先にバイトちゃんを見つけ足が竦むがその隣りに涼くんを見つけ、もう彼の姿しか見えない。
これで最後にするから、許して――。無理矢理涼くんに手紙を握らせて驚き固まる涼くんを残し、逃げるようにその場から離れた。
決戦は明日の12月24日。恋人たちのクリスマス。
初めての恋を終わらせるのに相応しい――日。
そうなる事を望んでいたはずだった。柄にもなく説教じみた事までして……涼くんの隣りにはあの子のような『本物』がいいに決まってる。
良かったと思わなくてはいけない。
涼くんが幸せならそれでいい。本当は俺が涼くんの事を幸せにしたかったけど、俺じゃあ役不足だったって事だ。どんなに着飾って作り上げてみたって本物には敵わない。
恋の終わりはこんなものかとうそぶいて、空っぽになってしまった心を何かで埋めてしまおうと部屋の隅に積み上げられた苺チョコを手に取った。口の中にひとつ、またひとつと放り込む。
甘いはずなのにしょっぱくて、「ちっとも美味しくなんかない」と呟いた。
それから数日が過ぎ、明日はクリスマスイブ。本当なら涼くんと恋人になって初めてのクリスマスだから絶対に一緒に過ごしたいと思っていた。
壁に掛けられたカレンダーをぼんやりと見つめていると、チリンという音がした。スマホにメッセージが届いたのだ。どうせ会社の誰かが送ったクリスマス会のお知らせだろうと画面を見ると、涼くんからのメッセージだった。だけどそれはいつもとは違って、『会いたい』という初めての恋人らしい内容だった。
最初からこのメッセージが来ていたなら何かが違っていたかもしれない。だけど――。
折角終わらせようとした恋心が「まだもう少し」と。
何度もう終わったのだと自分に言い聞かせてみても、『会いたい』という言葉が涼くんの声で何度も囁く。
この恋を完全に終わらせる為に俺は『賭け』に出てみる事にした。
太郎とゼンでそれぞれ別の場所に涼くんを呼び出す――――。
*****
ゼンとして初めてメッセージを送る。
『お返事できなくてごめんなさい。24日お話があります。19時に〇〇公園に来て下さい♡ ゼン』
送信ボタンをタップし、今度は手紙を書く。
『突然の事ですみません。24日お話したい事があります。よかったら19時にxx公園に来て下さい。待ってます。 小染 太郎』
俺は手紙を書き上げたその足でコンビニに行き、涼くんを探した。いきなり明日会いたいと言われてももう他に約束があるかもしれないし、涼くんのシフトを知っているわけではないのでいない可能性もあった。もしいなかったら俺の賭けはその時点で負けだ。
先にバイトちゃんを見つけ足が竦むがその隣りに涼くんを見つけ、もう彼の姿しか見えない。
これで最後にするから、許して――。無理矢理涼くんに手紙を握らせて驚き固まる涼くんを残し、逃げるようにその場から離れた。
決戦は明日の12月24日。恋人たちのクリスマス。
初めての恋を終わらせるのに相応しい――日。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
隠れSな攻めの短編集
あかさたな!
BL
こちら全話独立、オトナな短編集です。
1話1話完結しています。
いきなりオトナな内容に入るのでご注意を。
今回はソフトからドがつくくらいのSまで、いろんなタイプの攻めがみられる短編集です!隠れSとか、メガネSとか、年下Sとか…⁉︎
【お仕置きで奥の処女をもらう参謀】【口の中をいじめる歯医者】
【独占欲で使用人をいじめる王様】
【無自覚Sがトイレを我慢させる】
【召喚された勇者は魔術師の性癖(ケモ耳)に巻き込まれる】
【勝手にイくことを許さない許嫁】
【胸の敏感なところだけでいかせたいいじめっ子】
【自称Sをしばく女装っ子の部下】
【魔王を公開処刑する勇者】
【酔うとエスになるカテキョ】
【虎視眈々と下剋上を狙うヴァンパイアの眷属】
【貴族坊ちゃんの弱みを握った庶民】
【主人を調教する奴隷】
2022/04/15を持って、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
前作に
・年下攻め
・いじわるな溺愛攻め
・下剋上っぽい関係
短編集も完結してるで、プロフィールからぜひ!
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
わんこな部下の底なし沼
千環
BL
朝が弱いサラリーマンの鈴井。普段は通勤ラッシュの満員電車を避けるために少し早く起きて出社しているのだが、寝過ごしてしまう日も。
ある朝、そんな満員電車に揺られていると誰か手が臀部に触れて……
※完結済み
気が向いたらポロッと掌編更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる