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運命がたり
3 運命の悪戯がたり ①
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曽祖父の日記はそこからしばらく日付が飛んで、続きが書かれたのは半年後だった。そして何度も消して書き直した跡と涙の跡──だろうか、所々でこぼことしていた。
宗次郎は帰ってすぐに父親に土下座してお金を貸してくれるよう頼み込んだ。宗次郎の父親は、最初は欲しい模型の為にお金を貯めていたのは知っていたが、とうとう我慢ができなくなったのかと苦笑していたが、金額を聞いた途端眉間にギュッと皺を寄せた。
「お前まさかなにか人様の迷惑になるようなことを──」
「違う! 二葉の家がっ! 二葉の為にお金を貸して欲しいんだ! じゃないと二葉が、二葉が──っ」
父親は宗次郎の泣きながらの要領の得ない話にもすぐになんのことを言っているのかピンときていた。二葉の父親である羽鳥 五郎から借金の話を聞いていたからだ。事業の失敗から多額の借金を作り、最初は宗次郎の父親の元に相談にきたのだ。だが額が額なだけに貸すことはできなかった。無理をすれば用意することはできたが、たとえここで借りたお金で全額返済できたところでその先はどうするのか。借金の先が鷹取家に変わるだけだ。下手をすると共倒れになる可能性もあった。そんな賭けに出られるほど鷹取 一馬はお人よしではなく、現実を見ていた。
だが宗次郎が自分の言うことを大人しくきくなら話は違ってくる。実は宗次郎にも見合い話がきていたのだ。相手は国一番の資産家である桜小路家の次女綾子で、綾子はΩでありそろそろ適齢期を迎える為、嫁ぎ先を探していた。そこで同じ年頃のαで浮いた噂のない宗次郎に白羽の矢が立ったのだ。経済的に困っているということはなかったが、鷹取家にとっても悪い話ではなかった。なんといっても潤沢な資金を得たのと同じなのだ。これまで資金不足から諦めていたことにも手を広げられるのだ。
鷹取 一馬は宗次郎にひとつの提案をした。それは晶馬と二葉が恋仲だと知らなかったからこそできた提案であった。宗次郎に桜小路家との縁を結ぶこと。つまりは宗次郎が綾子と婚姻を結ぶことだった。もちろん鷹取 一馬は無理強いをしたいわけじゃなかったのでお見合いという形をとり、それでダメでも約束通り羽鳥家へ一度は金銭による援助をしようと思っていた。鷹取 一馬は血も涙もない悪魔、というわけではないのだ。
そしてすぐに用意された見合いの席で、宗次郎は『運命』に出会ってしまった。桜小路 綾子(Ω)が宗次郎の『運命』だったのだ。
ふたりは目が合った瞬間、雷が落ちたみたいな衝撃が身体中を巡った。この場がなんであるか、なんの為にここのいるのか、誰の為、誰を愛していたのか──ぜんぶが消え、宗次郎の頭の中は目の前の『運命』のことだけだった。
宗次郎はそのまま綾子と番い、蜜月を過ごした。
宗次郎は帰ってすぐに父親に土下座してお金を貸してくれるよう頼み込んだ。宗次郎の父親は、最初は欲しい模型の為にお金を貯めていたのは知っていたが、とうとう我慢ができなくなったのかと苦笑していたが、金額を聞いた途端眉間にギュッと皺を寄せた。
「お前まさかなにか人様の迷惑になるようなことを──」
「違う! 二葉の家がっ! 二葉の為にお金を貸して欲しいんだ! じゃないと二葉が、二葉が──っ」
父親は宗次郎の泣きながらの要領の得ない話にもすぐになんのことを言っているのかピンときていた。二葉の父親である羽鳥 五郎から借金の話を聞いていたからだ。事業の失敗から多額の借金を作り、最初は宗次郎の父親の元に相談にきたのだ。だが額が額なだけに貸すことはできなかった。無理をすれば用意することはできたが、たとえここで借りたお金で全額返済できたところでその先はどうするのか。借金の先が鷹取家に変わるだけだ。下手をすると共倒れになる可能性もあった。そんな賭けに出られるほど鷹取 一馬はお人よしではなく、現実を見ていた。
だが宗次郎が自分の言うことを大人しくきくなら話は違ってくる。実は宗次郎にも見合い話がきていたのだ。相手は国一番の資産家である桜小路家の次女綾子で、綾子はΩでありそろそろ適齢期を迎える為、嫁ぎ先を探していた。そこで同じ年頃のαで浮いた噂のない宗次郎に白羽の矢が立ったのだ。経済的に困っているということはなかったが、鷹取家にとっても悪い話ではなかった。なんといっても潤沢な資金を得たのと同じなのだ。これまで資金不足から諦めていたことにも手を広げられるのだ。
鷹取 一馬は宗次郎にひとつの提案をした。それは晶馬と二葉が恋仲だと知らなかったからこそできた提案であった。宗次郎に桜小路家との縁を結ぶこと。つまりは宗次郎が綾子と婚姻を結ぶことだった。もちろん鷹取 一馬は無理強いをしたいわけじゃなかったのでお見合いという形をとり、それでダメでも約束通り羽鳥家へ一度は金銭による援助をしようと思っていた。鷹取 一馬は血も涙もない悪魔、というわけではないのだ。
そしてすぐに用意された見合いの席で、宗次郎は『運命』に出会ってしまった。桜小路 綾子(Ω)が宗次郎の『運命』だったのだ。
ふたりは目が合った瞬間、雷が落ちたみたいな衝撃が身体中を巡った。この場がなんであるか、なんの為にここのいるのか、誰の為、誰を愛していたのか──ぜんぶが消え、宗次郎の頭の中は目の前の『運命』のことだけだった。
宗次郎はそのまま綾子と番い、蜜月を過ごした。
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