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運命がたり
2 日記がたり ①
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化粧を施され、今にも目を開けて起き出しそうな様子で並んで布団に横たわる曽祖父たちに手を合わせ、挨拶をする。色々な段取りに忙しそうに動き回る母親に遺影になるものを探すように言われ、晶馬は八生と共に久しぶりに曽祖父の部屋に入った。子どものころはよく遊び場にして母親に叱られたものだった。戸を開け、久しぶりに嗅ぐ畳のい草の香りになんとも懐かしい気持ちになる。晶馬はこの香りがとても好きだった。
部屋の中は綺麗に整理されていて、昔と変わらず無駄なものが一切ないという印象を受けた。これならすぐに目当ての物は探し出せるだろう、と戸棚の奥に並ぶアルバムを見つけ開いてみると、曽祖父以外の家族の写真ばかりが収められていて、肝心の曽祖父が写っている写真が一枚もなかった。
他のアルバムも調べてみたが、写っていても見切れていたりと遺影になりそうな写真が見つからない。だが、ない、では済ませられないのでさらに部屋中を探し、一冊の古ぼけた日記帳を見つけた。鍵はあるもののかけられてはいなかった。かけ忘れたのか、それとも──。
晶馬は後ろで写真を探し続けている八生をチラリと見て、中を読んでみることにした。日記は個人的な秘密が書かれているものだ。普通はたとえ鍵がかけられていなくても中を開けたりはしない。それでも読もうと思ったのは、曽祖父が誰か、いや他の誰でもなく晶馬に読んで欲しいと思っている気がしたからだ。昔、まだ晶馬が小さいころ、曽祖父は「大事な物はほれ、ここ、ここに隠しとるんじゃ」と晶馬にだけ教えてくれたことがあったのだ。日記はまさにそこに隠されていた。
晶馬は日記帳に合唱をし、一枚いちまい、丁寧に日記を読んでいく。
時は大正十二年、曽祖父たち、鷹取 宗次郎(α)と羽鳥 二葉(Ω)は仲のいい幼馴染みで友人で、二次性が発現するころにはお互いに抱く好意が友人のそれではないと気がついた。当時は人前でイチャつくなんてことはもっての外だったが、そうでなくても恥ずかしくて、宗次郎たちは親にも友人たちにも自分たちが恋仲であることを隠していた。
人目を忍んで手を繋ぎ、おやつのきんつばを分け合って食べ、回し飲みしたラムネに頬を染めたりと密かにふたりの恋を育てていった。それはまるでままごとのように幼稚で、そしてとても純粋な恋だった──。
部屋の中は綺麗に整理されていて、昔と変わらず無駄なものが一切ないという印象を受けた。これならすぐに目当ての物は探し出せるだろう、と戸棚の奥に並ぶアルバムを見つけ開いてみると、曽祖父以外の家族の写真ばかりが収められていて、肝心の曽祖父が写っている写真が一枚もなかった。
他のアルバムも調べてみたが、写っていても見切れていたりと遺影になりそうな写真が見つからない。だが、ない、では済ませられないのでさらに部屋中を探し、一冊の古ぼけた日記帳を見つけた。鍵はあるもののかけられてはいなかった。かけ忘れたのか、それとも──。
晶馬は後ろで写真を探し続けている八生をチラリと見て、中を読んでみることにした。日記は個人的な秘密が書かれているものだ。普通はたとえ鍵がかけられていなくても中を開けたりはしない。それでも読もうと思ったのは、曽祖父が誰か、いや他の誰でもなく晶馬に読んで欲しいと思っている気がしたからだ。昔、まだ晶馬が小さいころ、曽祖父は「大事な物はほれ、ここ、ここに隠しとるんじゃ」と晶馬にだけ教えてくれたことがあったのだ。日記はまさにそこに隠されていた。
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