5 / 19
キスを集めるキミと スキを編むボクと
⑤
しおりを挟む
それから僕たちの関係が大きく変わるという事はなかったけれど、日奈稀は何人もの子たちとキスをするようになった。
他校の生徒もいたし中には男もいたりして、どの人も(男も)お姫さまみたいに可愛かったけれど日奈稀の『スキ』ではなかったようで、それ以上発展する事はなかった。
ホッとしたと同時にやっぱり僕みたいに普通の『男』では最初からダメだったのだと改めて思った。
隠れてするならまだしも(本当は嫌だけど)、そのほとんどは目の前でされて(目を瞑っちゃうから見てないけど)、たとえそれが小鳥のような唇と唇が触れあうだけのものだったとしても僕は嫌だった。
そしてそれ以上に嫌だったのは、沢山のキスの中にいつか本当に『スキ』を見つけてしまう事だった。こんなに毎日何人もとキスをするのだからきっといずれは見つけてしまう。そうなってしまえば僕と日奈稀の関係も今までのようにはいかないだろう。一番傍にいるのは僕じゃなくて――その子。
今度こそ本当に僕たちの冒険は終わってしまう。
僕の名前は直なのに、ちっとも素直なんかじゃない。
もしもあの時僕が素直にキスを受け入れていたらどうなっていたのかな。受け入れて、そして好きだと伝えたなら日奈稀はどうしてた?
今更考えても仕方がない事なのに後悔ばかりが募るんだ。
僕以外とキスしなかった? それとも僕の事は『スキ』じゃないってはっきりと突きつけられた? それから今と同じように沢山たくさんのキスを目の前で見させられて僕の『スキ』は壊れていったのかな――。
「はぁ……」
小さく溜め息を吐いた。
あの時キスをしてもしなくても結果は変わらないじゃないか。
だったら僕の中の『スキ』を隠してでもキスをして、それを思い出に生きていけばよかったのではないかとさえ考えてしまう。
取り返しのつかない事をぐちぐちと考えてしまうくらい日奈稀が他の人とキスするところなんてもう見たくはなかった。
こんなのはキスを受け入れなかった僕へのただの嫌がらせだ――。そう思う事で痛みに悲鳴を上げ続ける心も渦巻く黒い想いも全部を日奈稀のせいにしようとした。
お姫さまじゃなくなってしまった日奈稀が全部悪いんだ、と。
自身の勇気のなさを棚上げにして。
他校の生徒もいたし中には男もいたりして、どの人も(男も)お姫さまみたいに可愛かったけれど日奈稀の『スキ』ではなかったようで、それ以上発展する事はなかった。
ホッとしたと同時にやっぱり僕みたいに普通の『男』では最初からダメだったのだと改めて思った。
隠れてするならまだしも(本当は嫌だけど)、そのほとんどは目の前でされて(目を瞑っちゃうから見てないけど)、たとえそれが小鳥のような唇と唇が触れあうだけのものだったとしても僕は嫌だった。
そしてそれ以上に嫌だったのは、沢山のキスの中にいつか本当に『スキ』を見つけてしまう事だった。こんなに毎日何人もとキスをするのだからきっといずれは見つけてしまう。そうなってしまえば僕と日奈稀の関係も今までのようにはいかないだろう。一番傍にいるのは僕じゃなくて――その子。
今度こそ本当に僕たちの冒険は終わってしまう。
僕の名前は直なのに、ちっとも素直なんかじゃない。
もしもあの時僕が素直にキスを受け入れていたらどうなっていたのかな。受け入れて、そして好きだと伝えたなら日奈稀はどうしてた?
今更考えても仕方がない事なのに後悔ばかりが募るんだ。
僕以外とキスしなかった? それとも僕の事は『スキ』じゃないってはっきりと突きつけられた? それから今と同じように沢山たくさんのキスを目の前で見させられて僕の『スキ』は壊れていったのかな――。
「はぁ……」
小さく溜め息を吐いた。
あの時キスをしてもしなくても結果は変わらないじゃないか。
だったら僕の中の『スキ』を隠してでもキスをして、それを思い出に生きていけばよかったのではないかとさえ考えてしまう。
取り返しのつかない事をぐちぐちと考えてしまうくらい日奈稀が他の人とキスするところなんてもう見たくはなかった。
こんなのはキスを受け入れなかった僕へのただの嫌がらせだ――。そう思う事で痛みに悲鳴を上げ続ける心も渦巻く黒い想いも全部を日奈稀のせいにしようとした。
お姫さまじゃなくなってしまった日奈稀が全部悪いんだ、と。
自身の勇気のなさを棚上げにして。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
気の遣い方が斜め上
りこ
BL
俺には同棲している彼氏がいる。だけど、彼氏には俺以外に体の関係をもっている相手がいる。
あいつは優しいから俺に別れるとは言えない。……いや、優しさの使い方間違ってねえ?
気の遣い方が斜め上すぎんだよ!って思っている受けの話。
当たって砕けていたら彼氏ができました
ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。
学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。
教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。
諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。
寺田絋
自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子
×
三倉莉緒
クールイケメン男子と思われているただの陰キャ
そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。
お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。
お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる