2 / 19
キスを集めるキミと スキを編むボクと
②
しおりを挟む
教室が少しだけ騒めき近づく気配を感じながらまたか、と僕はそっと目を閉じ小さく息を吐いた。僕のすぐ後ろで交わされる短い言葉、防ぎようのない「ちゅっ」という耳に届く軽い音に胸がぎゅっとなる。
それはキスの音で、僕が自ら手放した――――僕が欲しかった音だ。
*****
あの頃より随分と成長してしまった僕たちは高校生になっていた。
僕がキミを冒険に誘う事を止めて、キミから冒険に誘うでもなく、かと言って僕から離れて行くのでもなくずっと傍に居てくれた。そしていつの頃からだったか何故か距離感がバグってしまっていて、0距離が僕たちの標準になっていた。
話を戻すと、僕はいつものように休み時間に教室でスマホでゲームをしていた。冒険する事を止めてしまった僕はせめてゲームの中だけでも冒険がしたい、と面白そうなゲームを片っ端からやった。
そしてキミはゲームをする僕を背後から覆い被さるように抱きしめていて、時々「そこ違う右。そうそうそっち」なんて、見ていないようでしっかり見ていてアドバイスをくれたりした。
その時だけはちょっとだけ昔のようにふたりで冒険しているように感じられて嬉しかった。
そう、これはキミと僕を繋ぐ『冒険』の代償行為なのだ。
こういう形であってもキミと僕との冒険は続いているのだと僕は思いたかったのかもしれない。
そんな僕にとっては大事な時間に声がかかったのだ。「ねぇ、いい?」って。
キミがこくりと頷く気配がして、僕を背後から抱きしめたままそれに応じた。
何ともシュールな光景ではないだろうか。スマホでゲームをしている男子とそれを背後から抱きしめている男子。僕の事はオブジェかぬいぐるみかなにかだと思ってるのか、気にせずキミにキスをする女子。
ここで勘違いしてはいけないのは、この中の誰も付き合っていないという事と、これがここ最近の日常であり何も特別な事ではないという事だ。
僕の背後に居る人物は名前を平野 日奈稀といって、僕、豊田 直の幼馴染であり冒険仲間で親友、そして――
僕のお姫さまだった男だ。
それはキスの音で、僕が自ら手放した――――僕が欲しかった音だ。
*****
あの頃より随分と成長してしまった僕たちは高校生になっていた。
僕がキミを冒険に誘う事を止めて、キミから冒険に誘うでもなく、かと言って僕から離れて行くのでもなくずっと傍に居てくれた。そしていつの頃からだったか何故か距離感がバグってしまっていて、0距離が僕たちの標準になっていた。
話を戻すと、僕はいつものように休み時間に教室でスマホでゲームをしていた。冒険する事を止めてしまった僕はせめてゲームの中だけでも冒険がしたい、と面白そうなゲームを片っ端からやった。
そしてキミはゲームをする僕を背後から覆い被さるように抱きしめていて、時々「そこ違う右。そうそうそっち」なんて、見ていないようでしっかり見ていてアドバイスをくれたりした。
その時だけはちょっとだけ昔のようにふたりで冒険しているように感じられて嬉しかった。
そう、これはキミと僕を繋ぐ『冒険』の代償行為なのだ。
こういう形であってもキミと僕との冒険は続いているのだと僕は思いたかったのかもしれない。
そんな僕にとっては大事な時間に声がかかったのだ。「ねぇ、いい?」って。
キミがこくりと頷く気配がして、僕を背後から抱きしめたままそれに応じた。
何ともシュールな光景ではないだろうか。スマホでゲームをしている男子とそれを背後から抱きしめている男子。僕の事はオブジェかぬいぐるみかなにかだと思ってるのか、気にせずキミにキスをする女子。
ここで勘違いしてはいけないのは、この中の誰も付き合っていないという事と、これがここ最近の日常であり何も特別な事ではないという事だ。
僕の背後に居る人物は名前を平野 日奈稀といって、僕、豊田 直の幼馴染であり冒険仲間で親友、そして――
僕のお姫さまだった男だ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
兄が届けてくれたのは
くすのき伶
BL
海の見える宿にやってきたハル(29)。そこでタカ(31)という男と出会います。タカは、ある目的があってこの地にやってきました。
話が進むにつれ分かってくるハルとタカの意外な共通点、そしてハルの兄が届けてくれたもの。それは、決して良いものだけではありませんでした。
ハルの過去や兄の過去、複雑な人間関係や感情が良くも悪くも絡み合います。
ハルのいまの苦しみに影響を与えていること、そしてハルの兄が遺したものとタカに見せたもの。
ハルは知らなかった真実を次々と知り、そしてハルとタカは互いに苦しみもがきます。己の複雑な感情に押しつぶされそうにもなります。
でも、そこには確かな愛がちゃんと存在しています。
-----------
シリアスで重めの人間ドラマですが、霊能など不思議な要素も含まれます。メインの2人はともに社会人です。
BLとしていますが、前半はラブ要素ゼロです。この先も現時点ではキスや抱擁はあっても過激な描写を描く予定はありません。家族や女性(元カノ)も登場します。
人間の複雑な関係や心情を書きたいと思ってます。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
オレと親友は、どうやら恋人同士になったらしい
すいかちゃん
BL
大学3年生の中村弘哉は、同棲中の彼女に部屋を追い出されてしまう。親友の沢村義直の部屋に転がり込み、同居生活がスタートする。
ある夜。酔っぱらった義直にキスをされ、彼の本心を知る事になった。
親友だった2人が、ラブラブな恋人同士になる話です。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる