お持ち帰りシンデレラ

ハリネズミ

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俺は秋山の事が好きだ。
過去には女の子としか付き合った事はないし、男に対して恋愛感情を持った事もなかった。これからもないと思う。
だけど、なぜか秋山の事は好きなのだ。
同期入社で、最初は親切なやつだな、くらいの認識だった。
それから少しずつ一緒にいると安心するな、楽しいな、という風に変わっていった。
特に何かきっかけとなるイベントがあったわけじゃなかった。
ただ、段々秋山の事が好きになったのだ。
男とか女とかそういうのも関係なくなるくらい秋山の事が好きだ。
秋山が嬉しそうにしていると心がときめく。
秋山が悲しそうにしていると心が痛む。
こんな事は生まれて初めての経験だった。

俺はあの夜ちゃんと告白をしている。
「秋山、俺お前の事が好きなんだ。本当に好き。付き合ってほしい」
秋山はトロンとした目で俺を見て「俺も好き」って言ってキスしてくれた。
だから俺は受け入れられたと思った。
何度も何度も抱いて、備え付けのゴムがなくなっても熱はおさまらなくて生で秋山の中に精を注ぎ続けた。
秋山も俺に応えて何度も精を放ち、俺を求めてくれた。

なのに…目が覚めたら手袋を片方だけ残して姿を消していたんだ。

最初はわけがわからなかった。
しばらく動く事ができなくて、なんとか身支度をして受付の前を通りかかると秋山が受付にいるのが見えた。
「忘れ物」とか「手袋」という言葉が聞こえてきた。
秋山の様子からこの手袋がすごく大事な物だと分かった。
今すぐ駆け寄って「これ忘れてたぞ」って手袋を渡したかったが、一人取り残された事を思い出し少し意地悪をしたくなった。

昨夜の記憶がないふりをしてしまった。
秋山はどこか安心したような態度で、それがますます気にくわなかった。
昨日の「俺も好き」は何だったんだ?

じくじくと痛む心を誤魔化すようにシンデレラの話をした。
「シンデレラは俺だ」って言って欲しかった。

なのに最後まで誤魔化された。


拗れてしまった俺たちの関係。
今日俺は素面の秋山に告白する。
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