2 / 9
②
しおりを挟む
クラスが別れてしまって数日、校舎の窓から見えた何の変哲もない体育の授業風景に急に怖くなった。俺の傍に居ないラクが他の誰かと楽しそうにしているのが見えたのだ。想像した未来のラクの姿がそこにあった。
今は休み時間の度に会いに来てくれるけど、段々来なくなってしまうかもしれない。そしてこのままクラスが別れたように俺から離れて行ってしまうかもしれない。
そしてその別れは自分で思っていたよりももっと早いのかもしれない。
頭では分かっていた事だった。ラクとの別れも覚悟したし、そうなるべきだと思っていたはずだった。
それが実際に目にする事で急に現実味を帯びて――、覚悟なんてちっともできていなかったと知る。
その日の帰り、そんな事を考えて暗く沈んでいたらラクが言ったんだ。
「ちゆ、僕たち付き合う?ただの幼馴染みだとおかしいかもだけど、恋人なら休み時間の度僕がちゆの所に来るのも、四六時中僕の事考えててもおかしくないんだよ? 会えない時間も僕の事を考えてたら寂しくないでしょ? それに恋人だったらこれから先ずっと一緒にいられるんだ。いいと思わない?」
そう言って小首を傾げ笑った。ラクの言葉は、俺が抱えていた不安に対する答えのように感じた。本当はずっとずっと探していた。ラクの傍に居続けられる方法。考えても考えてもそれは見つからなくて、俺は無理やりにでも諦めようとしていたのに、ラクは簡単に答えをくれた。本当にラクはすごい。
やっぱりラクは俺の王子さまだ。
でも本当に……いい、のかな……?
俺はいつの頃からかラクに対する気持ちが普通の友だちに抱くものとは違うと気づいていた。一番嬉しくて一番怖い存在。
だからラクからこう言われて、俺たちの関係が変わってしまう事に少しの戸惑いはあったけど『これでいつかは離れる未来』がなくなるんだと嬉しくなった。 ずっとずっと一緒に居てもいいんだ。
さっきまであんなに怖かったのに、嬉しくて、恥ずかしくて、そっぽを向きながらもこくりと頷いたんだ。
これでずっと一緒に居られる。魔法はまだ続いている。
そんな始まりだったけど、俺たちは確かに恋人になった、はずだ。
幼馴染みとしてはもう10年以上の付き合いになるけど、恋人としてはまだ始まったばかり。多分今が一番浮かれててはっぴーな時期なんだと思うんだけど、実際は付き合う前と何も変わらない。
手を繋いだりハグしたり、そんな事は小さい頃からしていて特別な意味はない。恋人じゃなくてもできる事だ。
付き合ってする事といえばキス、それにその先の……。
どちらも俺たちはした事がなかった。する気配すらもなかった。
俺たちが付き合うようになってなんとなく調べた『男同士が付き合うとする事』について。ずらりと並んだ文字の中に紛れるようにして出て来たアレ。
恥ずかしくて細かい所は見ずにすぐにウインドウを閉じてしまったから分からないけど、ちらりと見えた多分される方の気持ちよさそうな表情。それが頭から離れなかった。それで分かったんだ。
俺、こんな見た目だけど――実はする方じゃなくてされる方がいいんだ。
――――ラクはどっちなんだろう?
もしかしてラクもされる方? だとしたら……俺たちの関係っていつまで経っても先に進む事はないんじゃないか?
大好きなラクと恋人になれただけで嬉しい。
その先の事を望むのは贅沢なのかもしれない。
そうは思っても俺の中の深い深い所がズキズキと鈍く痛むのを止める事はできなかった。
ラク、ラクはどっち――?
今は休み時間の度に会いに来てくれるけど、段々来なくなってしまうかもしれない。そしてこのままクラスが別れたように俺から離れて行ってしまうかもしれない。
そしてその別れは自分で思っていたよりももっと早いのかもしれない。
頭では分かっていた事だった。ラクとの別れも覚悟したし、そうなるべきだと思っていたはずだった。
それが実際に目にする事で急に現実味を帯びて――、覚悟なんてちっともできていなかったと知る。
その日の帰り、そんな事を考えて暗く沈んでいたらラクが言ったんだ。
「ちゆ、僕たち付き合う?ただの幼馴染みだとおかしいかもだけど、恋人なら休み時間の度僕がちゆの所に来るのも、四六時中僕の事考えててもおかしくないんだよ? 会えない時間も僕の事を考えてたら寂しくないでしょ? それに恋人だったらこれから先ずっと一緒にいられるんだ。いいと思わない?」
そう言って小首を傾げ笑った。ラクの言葉は、俺が抱えていた不安に対する答えのように感じた。本当はずっとずっと探していた。ラクの傍に居続けられる方法。考えても考えてもそれは見つからなくて、俺は無理やりにでも諦めようとしていたのに、ラクは簡単に答えをくれた。本当にラクはすごい。
やっぱりラクは俺の王子さまだ。
でも本当に……いい、のかな……?
俺はいつの頃からかラクに対する気持ちが普通の友だちに抱くものとは違うと気づいていた。一番嬉しくて一番怖い存在。
だからラクからこう言われて、俺たちの関係が変わってしまう事に少しの戸惑いはあったけど『これでいつかは離れる未来』がなくなるんだと嬉しくなった。 ずっとずっと一緒に居てもいいんだ。
さっきまであんなに怖かったのに、嬉しくて、恥ずかしくて、そっぽを向きながらもこくりと頷いたんだ。
これでずっと一緒に居られる。魔法はまだ続いている。
そんな始まりだったけど、俺たちは確かに恋人になった、はずだ。
幼馴染みとしてはもう10年以上の付き合いになるけど、恋人としてはまだ始まったばかり。多分今が一番浮かれててはっぴーな時期なんだと思うんだけど、実際は付き合う前と何も変わらない。
手を繋いだりハグしたり、そんな事は小さい頃からしていて特別な意味はない。恋人じゃなくてもできる事だ。
付き合ってする事といえばキス、それにその先の……。
どちらも俺たちはした事がなかった。する気配すらもなかった。
俺たちが付き合うようになってなんとなく調べた『男同士が付き合うとする事』について。ずらりと並んだ文字の中に紛れるようにして出て来たアレ。
恥ずかしくて細かい所は見ずにすぐにウインドウを閉じてしまったから分からないけど、ちらりと見えた多分される方の気持ちよさそうな表情。それが頭から離れなかった。それで分かったんだ。
俺、こんな見た目だけど――実はする方じゃなくてされる方がいいんだ。
――――ラクはどっちなんだろう?
もしかしてラクもされる方? だとしたら……俺たちの関係っていつまで経っても先に進む事はないんじゃないか?
大好きなラクと恋人になれただけで嬉しい。
その先の事を望むのは贅沢なのかもしれない。
そうは思っても俺の中の深い深い所がズキズキと鈍く痛むのを止める事はできなかった。
ラク、ラクはどっち――?
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる