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第一章 異世界人に転生された双剣士と転生させられた廃ゲーマー
15 ダンジョン上層の攻略④ 死闘
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〔ちっ! 十秒だ! 十秒耐えろ! 来るぞ!〕
シズルの声が空っぽの頭に聞こえてくる。
ドゴッ!
ブレイブの背中に重い衝撃が走った。
「ぐはぁっ!」
ブレイブはケイナを抱えたまま、その場から吹っ飛んだ。
コボルトに背中を蹴り飛ばされたらしい。しかし、彼はケイナを離さない。
ケイナが顔を上げ、ブレイブに何か言っている。
しかし、彼の耳にはキーンという音以外聞こえてこない。
耳に痛みはないので鼓膜が破れている訳ではなさそうだが、聴覚が元に戻るまで時間が必要らしい。
バキッ! ベキッ! ドガッ! ドゴッ!
ケイナを庇うブレイブの背中を、コボルトキングは何度も何度も踏みつける。
「キヒヒヒヒィッ!」
コボルトキングの下卑た笑い声が聞こえる。どうやらブレイブをいたぶって楽しんでいるらしい。
声が聞こえたことから、ブレイブは自分の聴覚が回復したことに気づく。また、同時に体の硬直が回復するのも分かった。
〔よし! 煙幕玉を使え!〕
「え、煙幕玉? ってなんだっけ?」
「よろず屋で買ったアイテムだ。バッグから取り出して地面に叩きつけろ!」
背負いバッグはいつの間にか地面に転がっている。ブレイブはその中から煙幕玉を取り出すと、地面に投げつけた。
ボンッ!
爆発音が鳴ると煙が溢れ出し、ケイナの顔すら見えなくなるほど辺りが真っ白になった。
「ガウゥゥウ!?」
コボルトキングは先程と同じようにブレイブを蹴飛ばそうとするが、標的が見えず空振りする。
〔ブレイブ! お前は気合いでケイナを部屋の隅に運べ!〕
「ケイナを? ……分かった!」
ブレイブはケイナを抱えるとふらふらと立ち上がり、適当な方向へ走り出した。
どこに向かっているかなど分からないが、真っ直ぐ走ればいずれは壁に突き当たる。
予想通り壁にぶつかったブレイブは、震えて動けないケイナをそっと地面に座らせた。
シズルがいつもより暗い声音でブレイブに話す。
〔……僕の計画が甘かった。まだ子供だということを忘れ、ケイナに過剰な期待をして、無理をさせ過ぎてしまった。ブレイブ、彼女にこう伝えてくれないか。ボスは僕達に任せて、お前はゆっくり休んでいろ。この程度の雑魚キャラはすぐに倒してやるってな〕
「そうだな、伝えてやる!」
ブレイブがシズルの言葉をケイナに伝える。
「す、すみま、せん……」
ケイナが悔しそうに顔を歪ませる。
彼女の青色の瞳が潤み、目から涙がこぼれ落ちた。
ブレイブはケイナの頭を優しく撫でる。
ブレイブは立ち上がり、キュアポーションでダメージを回復すると、双剣を抜き放った。
「さて、どうやって倒すんだ?」
先程すぐに倒すと言い切ったシズルに、ブレイブは答えを期待して聞く。
〔はっきり言って、正攻法では倒せないだろう。敵の守りは固く、お前の攻撃はまともに当たらない。だから、相手を疲れさせるしかない。敵の攻撃を受け続け、お前はダメージを受けたらポーションで回復する。それを繰り返す。つまり、消耗戦しかない〕
「まじかよ……」
ブレイブは頭を抱える。
〔そうでなければ、お前が気を失うことだな。僕が代わりに戦えるかも知れない〕
「お前なら倒せるのかよ?」
〔当然だ。僕を舐めるな〕
煙幕玉の煙がついに晴れ、コボルトキングの姿が再び現れた。
「うおぉぉお!」
ケイナが標的にならないよう、ブレイブはコボルトキングに向かって駆け出した。
ブレイブが双剣で攻撃を仕掛ける。
ガギィン!
コボルトキングは手にした盾で、攻撃を受け止める。
そして、別の手に持った刀、〈狼牙〉でブレイブを切りつける。
今度はブレイブがその斬撃を双剣で受け止める。
しかし、その後に飛んできた足蹴りを脇腹に受け、ブレイブは吹っ飛んだ。
「くっ、たしかにこりゃあきつい。なあシズル、気を失うってどうやるんだ?」
〔さあな。ボコボコに殴られれば気を失うんじゃないか?〕
「気を失う前に命を失いそうだぞそれ」
ブレイブはげんなりする。
「まあ、やるだけやってやらぁあ!」
再びブレイブはコボルトキングに駆け出した。
攻撃を仕掛けては防がれ、反対に蹴飛ばされたり、斬撃を受けたりしてダメージを受ける。
ダメージを受けたらキュアポーションで回復する。これを何度も繰り返した。
しばらくして、十本準備してきたキュアポーションが底をついた。
全身がボロボロで、立っているのも辛い。
「キヒヒィッ!」
コボルトキングはブレイブを追い詰めたことに気づいているらしい。
いやらしい顔で笑っている。
「俺が倒れたら頼むぞ、シズル」
〔ああ、任せろ。その前に死ぬなよ〕
ブレイブが頷き、最後の特攻を試みる。
彼が敵に向かって駆け出した、その時──
コボルトキングの肩に、小石がコツンと当たった。
「ガァ……?」
コボルトキングは苛立たしげに、小石が飛んできた方向に顔を向ける。
そこには盾を構えたケイナが立っていた。
「ケ、ケイナ!? 何をしているんだ!?」
ブレイブが思わず叫ぶ。
「わ、私も、戦えます。……戦えるところを、見てもらいたいんです!」
ケイナの体の震えは止まっていない。しかし、その声には力強い意思が感じられた。
「キヒィッ! キヒヒヒヒィッ!」
コボルトキングはその意思を嘲笑う。
そして、ケイナに標的を定めて襲いかかった。
コボルトキングは〈狼牙〉でケイナに切りつける。
ガギィン!
ケイナはその攻撃を盾で完全に防いだ。
追撃の蹴りがくるが、ケイナはそれをバックステップで避ける。
彼女はこれまで学んできた防御役としての技術を十全に発揮し、コボルトキングの攻撃を防ぎ続ける。
「おお! すげぇぞケイナ!」
〔……さすがだな〕
コボルトキングは何度も攻撃を仕掛けるが当たらず、見るからにイライラし始めた。
そして一旦攻撃をやめると、盾を投げ捨て、刀を両手で構えた。
シズルはその構えの意味に気づく。
〔コボルトキングの切り札が来るぞ。〈狼牙〉専用のアーツで、《キラーファング》という一種の突き技だ〕
「ケイナ! アーツが来るぞ! 気をつけろ!」
ブレイブがケイナに叫ぶ。
「わ、分かりました!」
ケイナは防御に集中する。
コボルトキングは〈狼牙〉を構えると、《キラーファング》を放った。
〈狼牙〉の刀身が赤く光り、刀がまるで獰猛な肉食獣の牙のように、上から襲い掛かる。
彼女はそれを盾で受けようとしていたが、直感的に何かを察知したらしい。
盾で受けるように見せて、当たる瞬間にそれをスッと手放し、真下にしゃがみ込んだ。
ズドンッ!
〈狼牙〉の切先が盾に当たると、盾は一瞬で遠くまで吹き飛んだ。
もし彼女が攻撃を受けていたら、あの盾と同じ運命になっていただろう。
しかしケイナは無事だった。すぐに相手から距離をとる。
アーツを放った直後は大きな隙ができる。その隙をブレイブは見逃さない。
彼はすでにコボルトキングの背後に近づいていた。
狙うは唯一装備で守られていない急所、首だ。
レベルが6に上がった際、彼はアーツを一つ覚えていた。そのアーツを双剣で放つ。
「《疾風斬》!」
二振りの剣が白く発光すると、敵の首めがけて凄まじい速さで弧を描く。
ザシュ! ザシュ!
──ゴトッ。
コボルトキングの首は中に舞うと、地面に落ちた。
「おっっっしゃあぁぁぁあああ!!!」
ブレイブは双剣を突き上げて、歓喜の雄叫びを上げる。
ケイナは安心したのか、ヘタっとその場にしゃがみ込んだ。
ついに二人は、第六階層のボスに勝利した。
シズルの声が空っぽの頭に聞こえてくる。
ドゴッ!
ブレイブの背中に重い衝撃が走った。
「ぐはぁっ!」
ブレイブはケイナを抱えたまま、その場から吹っ飛んだ。
コボルトに背中を蹴り飛ばされたらしい。しかし、彼はケイナを離さない。
ケイナが顔を上げ、ブレイブに何か言っている。
しかし、彼の耳にはキーンという音以外聞こえてこない。
耳に痛みはないので鼓膜が破れている訳ではなさそうだが、聴覚が元に戻るまで時間が必要らしい。
バキッ! ベキッ! ドガッ! ドゴッ!
ケイナを庇うブレイブの背中を、コボルトキングは何度も何度も踏みつける。
「キヒヒヒヒィッ!」
コボルトキングの下卑た笑い声が聞こえる。どうやらブレイブをいたぶって楽しんでいるらしい。
声が聞こえたことから、ブレイブは自分の聴覚が回復したことに気づく。また、同時に体の硬直が回復するのも分かった。
〔よし! 煙幕玉を使え!〕
「え、煙幕玉? ってなんだっけ?」
「よろず屋で買ったアイテムだ。バッグから取り出して地面に叩きつけろ!」
背負いバッグはいつの間にか地面に転がっている。ブレイブはその中から煙幕玉を取り出すと、地面に投げつけた。
ボンッ!
爆発音が鳴ると煙が溢れ出し、ケイナの顔すら見えなくなるほど辺りが真っ白になった。
「ガウゥゥウ!?」
コボルトキングは先程と同じようにブレイブを蹴飛ばそうとするが、標的が見えず空振りする。
〔ブレイブ! お前は気合いでケイナを部屋の隅に運べ!〕
「ケイナを? ……分かった!」
ブレイブはケイナを抱えるとふらふらと立ち上がり、適当な方向へ走り出した。
どこに向かっているかなど分からないが、真っ直ぐ走ればいずれは壁に突き当たる。
予想通り壁にぶつかったブレイブは、震えて動けないケイナをそっと地面に座らせた。
シズルがいつもより暗い声音でブレイブに話す。
〔……僕の計画が甘かった。まだ子供だということを忘れ、ケイナに過剰な期待をして、無理をさせ過ぎてしまった。ブレイブ、彼女にこう伝えてくれないか。ボスは僕達に任せて、お前はゆっくり休んでいろ。この程度の雑魚キャラはすぐに倒してやるってな〕
「そうだな、伝えてやる!」
ブレイブがシズルの言葉をケイナに伝える。
「す、すみま、せん……」
ケイナが悔しそうに顔を歪ませる。
彼女の青色の瞳が潤み、目から涙がこぼれ落ちた。
ブレイブはケイナの頭を優しく撫でる。
ブレイブは立ち上がり、キュアポーションでダメージを回復すると、双剣を抜き放った。
「さて、どうやって倒すんだ?」
先程すぐに倒すと言い切ったシズルに、ブレイブは答えを期待して聞く。
〔はっきり言って、正攻法では倒せないだろう。敵の守りは固く、お前の攻撃はまともに当たらない。だから、相手を疲れさせるしかない。敵の攻撃を受け続け、お前はダメージを受けたらポーションで回復する。それを繰り返す。つまり、消耗戦しかない〕
「まじかよ……」
ブレイブは頭を抱える。
〔そうでなければ、お前が気を失うことだな。僕が代わりに戦えるかも知れない〕
「お前なら倒せるのかよ?」
〔当然だ。僕を舐めるな〕
煙幕玉の煙がついに晴れ、コボルトキングの姿が再び現れた。
「うおぉぉお!」
ケイナが標的にならないよう、ブレイブはコボルトキングに向かって駆け出した。
ブレイブが双剣で攻撃を仕掛ける。
ガギィン!
コボルトキングは手にした盾で、攻撃を受け止める。
そして、別の手に持った刀、〈狼牙〉でブレイブを切りつける。
今度はブレイブがその斬撃を双剣で受け止める。
しかし、その後に飛んできた足蹴りを脇腹に受け、ブレイブは吹っ飛んだ。
「くっ、たしかにこりゃあきつい。なあシズル、気を失うってどうやるんだ?」
〔さあな。ボコボコに殴られれば気を失うんじゃないか?〕
「気を失う前に命を失いそうだぞそれ」
ブレイブはげんなりする。
「まあ、やるだけやってやらぁあ!」
再びブレイブはコボルトキングに駆け出した。
攻撃を仕掛けては防がれ、反対に蹴飛ばされたり、斬撃を受けたりしてダメージを受ける。
ダメージを受けたらキュアポーションで回復する。これを何度も繰り返した。
しばらくして、十本準備してきたキュアポーションが底をついた。
全身がボロボロで、立っているのも辛い。
「キヒヒィッ!」
コボルトキングはブレイブを追い詰めたことに気づいているらしい。
いやらしい顔で笑っている。
「俺が倒れたら頼むぞ、シズル」
〔ああ、任せろ。その前に死ぬなよ〕
ブレイブが頷き、最後の特攻を試みる。
彼が敵に向かって駆け出した、その時──
コボルトキングの肩に、小石がコツンと当たった。
「ガァ……?」
コボルトキングは苛立たしげに、小石が飛んできた方向に顔を向ける。
そこには盾を構えたケイナが立っていた。
「ケ、ケイナ!? 何をしているんだ!?」
ブレイブが思わず叫ぶ。
「わ、私も、戦えます。……戦えるところを、見てもらいたいんです!」
ケイナの体の震えは止まっていない。しかし、その声には力強い意思が感じられた。
「キヒィッ! キヒヒヒヒィッ!」
コボルトキングはその意思を嘲笑う。
そして、ケイナに標的を定めて襲いかかった。
コボルトキングは〈狼牙〉でケイナに切りつける。
ガギィン!
ケイナはその攻撃を盾で完全に防いだ。
追撃の蹴りがくるが、ケイナはそれをバックステップで避ける。
彼女はこれまで学んできた防御役としての技術を十全に発揮し、コボルトキングの攻撃を防ぎ続ける。
「おお! すげぇぞケイナ!」
〔……さすがだな〕
コボルトキングは何度も攻撃を仕掛けるが当たらず、見るからにイライラし始めた。
そして一旦攻撃をやめると、盾を投げ捨て、刀を両手で構えた。
シズルはその構えの意味に気づく。
〔コボルトキングの切り札が来るぞ。〈狼牙〉専用のアーツで、《キラーファング》という一種の突き技だ〕
「ケイナ! アーツが来るぞ! 気をつけろ!」
ブレイブがケイナに叫ぶ。
「わ、分かりました!」
ケイナは防御に集中する。
コボルトキングは〈狼牙〉を構えると、《キラーファング》を放った。
〈狼牙〉の刀身が赤く光り、刀がまるで獰猛な肉食獣の牙のように、上から襲い掛かる。
彼女はそれを盾で受けようとしていたが、直感的に何かを察知したらしい。
盾で受けるように見せて、当たる瞬間にそれをスッと手放し、真下にしゃがみ込んだ。
ズドンッ!
〈狼牙〉の切先が盾に当たると、盾は一瞬で遠くまで吹き飛んだ。
もし彼女が攻撃を受けていたら、あの盾と同じ運命になっていただろう。
しかしケイナは無事だった。すぐに相手から距離をとる。
アーツを放った直後は大きな隙ができる。その隙をブレイブは見逃さない。
彼はすでにコボルトキングの背後に近づいていた。
狙うは唯一装備で守られていない急所、首だ。
レベルが6に上がった際、彼はアーツを一つ覚えていた。そのアーツを双剣で放つ。
「《疾風斬》!」
二振りの剣が白く発光すると、敵の首めがけて凄まじい速さで弧を描く。
ザシュ! ザシュ!
──ゴトッ。
コボルトキングの首は中に舞うと、地面に落ちた。
「おっっっしゃあぁぁぁあああ!!!」
ブレイブは双剣を突き上げて、歓喜の雄叫びを上げる。
ケイナは安心したのか、ヘタっとその場にしゃがみ込んだ。
ついに二人は、第六階層のボスに勝利した。
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