上 下
1 / 1

私のことなど……

しおりを挟む

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 「申し訳ない…………本当に申し訳ない…………いや、これは、俺が悪いんじゃないんだ!あっちが、俺には妻がいることを知っておきながら、俺のことを誘惑したんだ!」

 夫は、耳が痛くなるような不倫の言い訳を言い続けた。

 私は、どう反応してよいか困った。

 というか、もう、私には、感情というものがない。

 もう、何が何だか分からないのである。

 必死に言い逃れしようとしている夫の顔を見て、ため息をついた。

 「侯爵殿。もう、良いのです。私はそれまでの女だったということで、私なんぞ気にせず、どうぞ、お相手の女性とお幸せになってください……」

 「ち、違うんだ!分かってくれ!あっちも俺と恋愛関係になるつもりはなかったらしいんだ!頼む!」

 私は、振り向くこと無く、黙って家を出た。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...