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12. 大変でも楽しめる理由
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管を繋げることに成功した後は、地下水脈にとどくだけの管をひたすらつないだ。
時間をかけてゆっくりと冷ます手間があるから、時間だけが過ぎていく。
「そろそろお昼にしましょう」
「うん、そうしよう」
太陽は真南から光を僕達に浴びせている。
そして空腹を知らせる音がソフィアの方から聞こえて来た。
「お腹、空いてたんだね」
「これだけ魔法を使ったら、空いてしまうわ」
軽口を叩き合いながら、弁当に砂が入らないように水魔法で囲いを作る。
管の方は思っていた以上に丈夫だけど、ポッキリと折れたら嫌だから、平らにならした砂の上に置いてある。
食事中も水魔法を使い続けるのは、流石に頭が疲れるからね。
「今日も豪華だね……」
「そうね。お母さんが張り切っちゃったみたい」
ソフィアは苦笑いを浮かべているけど、どこか嬉しそうだ。
それだけ贅沢な食事は貴重なのだろう。
早くこの食事を日常のものにしたいな。
そんな風に思いながらサンドイッチを食べきった僕は、次の作業に移ることにした。
これからするのは、管を地下水脈に差し込むことだ。
「このまま真っ直ぐ穴を空けてもらってもいいかな?」
「こんな感じで良いかしら?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
ソフィアが地面に丸い穴を空けていくのと同時に、僕が管を差し込んでいく。
こうすれば砂が崩れずに済むから、効率的だと思う。
でも、途中で壁に当たってしまった。
「もうすぐ水脈に当たるよ」
「硬い岩に当たったみたい……」
「もしかしたら、地下水脈は空洞になっている岩の中を流れていたのかもしれない。
穴、空けられる?」
「頑張ってみるわ」
ソフィアがそう口にすると、魔力の気配が一気に強くなる。
そして、管も少しずつ進められるようになった。
「あと少しだよ!」
「うん!」
「よし、空いた!」
そう口にした直後、水が勢いよく管の口から噴き出してきた。
どうやら、思っていた以上に水が勢いよく流れていたらしく、僕の背丈ほどもある太さの激流は迫力が凄い。
これだけの水なら、帝都で暮らす十万を超える人々の水を賄っても余るに違いない。
「すごいわ! こんなに水が出てくるなんて、夢みたい……」
「成功して良かったよ」
管の出口は、地面を掘ったところに作ってあるんだけど、砂の水はけが良くて水が貯まることは無い。
オアシスに水が貯まっているのが不思議だ。
「あとは畑を作るとことまで繋ぐだけね!」
「そうだね。
頑張って繋いでいこう」
そうして、僕達はひたすら王都に向けて管を繋ぎ続けた。
ソフィアはかなり魔力が多いようで、何度も大爆発を起こしているのに平気な顔をしている。
正直、恐ろしい。
しかし、そのお陰で陽が沈むころには王都の真ん中あたりまで管を伸ばすことが出来た。
「ソフィアちゃん、穴なんて掘って何をしているのかしら?」
「畑を作る準備をしているの」
「畑……?
そんなもの、この国で出来るのね」
「ええ。水魔法使いさんのお陰だわ」
途中で通りかかった人から声をかけられたりもしたけど、殆どは管が冷えるまでの待ち時間だから、良い暇つぶしになっている。
ソフィアは顔が広いらしく、帝国では信じられないくらい話しかけられて、僕は戸惑う羽目になったけどね……。
ちなみに、この管を利用すれば、王都中で帝都にある水道と同じものを使うことも出来ると思う。
だから、途中の管には少し工夫をしていて、後から枝分かれさせられるようになっている。
これだけ水の勢いがあれば、ソフィアの家の三階でも余裕で水を届けられるだろう。
「今日はこの辺で終わりにしよう。
お疲れ様」
「ええ、お疲れ様。
魔力、沢山使ったら疲れちゃった」
「僕も疲れたよ。
しっかり休んで、明日に備えないといけないね」
そんな言葉を交わしながら、玄関から家の中に入る。
すると、夕食が出来上がりそうなのか、美味しそうな香りが漂ってきた。
◇
あれから二日。
帝都の水道のことを話したら、水田と同時に水道も作ることになって、僕は大忙しだ。
ちなみに、水道には蛇口と呼ばれる金属で作られている水の量を調節する物が必要だから、帝国で仕入れてもらうことになった。
蛇口が届くまでは水道を作るのはお休みだから、今は水田を作っている最中だ。
「全部囲ったから、火魔法をお願い」
「分かったわ!」
まずはソフィアが一面を火の海に変え、そこに僕が土と水を貯める分の深さで水の塊を落として、水田の基礎を作る。
あとはゆっくりと冷まして、液体になっている砂を固めるだけだ。
「よし、次に行こう」
「ええ。
次はこの辺りで良いかしら?」
「うん、問題無いよ」
これを何度か繰り返し、広大な水田の基礎を九つ作り上げた。
水を入れるのは蛇口が無いと調整できないから、後回しにするけど、コメの種は手元にあるから、届いたばかりの土を使って苗作りも始めている。
ガラスで作った小さな小屋の中で温度と湿度を調整するのは大変だけど、これが成功すれば一歩前進だろう。
「苗の方は順調かしら?」
「もう少しすれば芽が出ると思うよ」
ソフィアは苗を見るのを楽しみにしているようで、この話をするときは目を輝かせている。
僕は男爵家に居る頃に散々作ってきたものだから何も思わないけど、デザイア王国の人達にとっては目新しいものだから、楽しみにされて当然だと思う。
こんな風に期待されると緊張するけど、たくさんの人から暖かな言葉をかけてもらえるから、冒険者をしていた頃と比べ物にならないくらい、毎日を楽しく過ごせていた。
時間をかけてゆっくりと冷ます手間があるから、時間だけが過ぎていく。
「そろそろお昼にしましょう」
「うん、そうしよう」
太陽は真南から光を僕達に浴びせている。
そして空腹を知らせる音がソフィアの方から聞こえて来た。
「お腹、空いてたんだね」
「これだけ魔法を使ったら、空いてしまうわ」
軽口を叩き合いながら、弁当に砂が入らないように水魔法で囲いを作る。
管の方は思っていた以上に丈夫だけど、ポッキリと折れたら嫌だから、平らにならした砂の上に置いてある。
食事中も水魔法を使い続けるのは、流石に頭が疲れるからね。
「今日も豪華だね……」
「そうね。お母さんが張り切っちゃったみたい」
ソフィアは苦笑いを浮かべているけど、どこか嬉しそうだ。
それだけ贅沢な食事は貴重なのだろう。
早くこの食事を日常のものにしたいな。
そんな風に思いながらサンドイッチを食べきった僕は、次の作業に移ることにした。
これからするのは、管を地下水脈に差し込むことだ。
「このまま真っ直ぐ穴を空けてもらってもいいかな?」
「こんな感じで良いかしら?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
ソフィアが地面に丸い穴を空けていくのと同時に、僕が管を差し込んでいく。
こうすれば砂が崩れずに済むから、効率的だと思う。
でも、途中で壁に当たってしまった。
「もうすぐ水脈に当たるよ」
「硬い岩に当たったみたい……」
「もしかしたら、地下水脈は空洞になっている岩の中を流れていたのかもしれない。
穴、空けられる?」
「頑張ってみるわ」
ソフィアがそう口にすると、魔力の気配が一気に強くなる。
そして、管も少しずつ進められるようになった。
「あと少しだよ!」
「うん!」
「よし、空いた!」
そう口にした直後、水が勢いよく管の口から噴き出してきた。
どうやら、思っていた以上に水が勢いよく流れていたらしく、僕の背丈ほどもある太さの激流は迫力が凄い。
これだけの水なら、帝都で暮らす十万を超える人々の水を賄っても余るに違いない。
「すごいわ! こんなに水が出てくるなんて、夢みたい……」
「成功して良かったよ」
管の出口は、地面を掘ったところに作ってあるんだけど、砂の水はけが良くて水が貯まることは無い。
オアシスに水が貯まっているのが不思議だ。
「あとは畑を作るとことまで繋ぐだけね!」
「そうだね。
頑張って繋いでいこう」
そうして、僕達はひたすら王都に向けて管を繋ぎ続けた。
ソフィアはかなり魔力が多いようで、何度も大爆発を起こしているのに平気な顔をしている。
正直、恐ろしい。
しかし、そのお陰で陽が沈むころには王都の真ん中あたりまで管を伸ばすことが出来た。
「ソフィアちゃん、穴なんて掘って何をしているのかしら?」
「畑を作る準備をしているの」
「畑……?
そんなもの、この国で出来るのね」
「ええ。水魔法使いさんのお陰だわ」
途中で通りかかった人から声をかけられたりもしたけど、殆どは管が冷えるまでの待ち時間だから、良い暇つぶしになっている。
ソフィアは顔が広いらしく、帝国では信じられないくらい話しかけられて、僕は戸惑う羽目になったけどね……。
ちなみに、この管を利用すれば、王都中で帝都にある水道と同じものを使うことも出来ると思う。
だから、途中の管には少し工夫をしていて、後から枝分かれさせられるようになっている。
これだけ水の勢いがあれば、ソフィアの家の三階でも余裕で水を届けられるだろう。
「今日はこの辺で終わりにしよう。
お疲れ様」
「ええ、お疲れ様。
魔力、沢山使ったら疲れちゃった」
「僕も疲れたよ。
しっかり休んで、明日に備えないといけないね」
そんな言葉を交わしながら、玄関から家の中に入る。
すると、夕食が出来上がりそうなのか、美味しそうな香りが漂ってきた。
◇
あれから二日。
帝都の水道のことを話したら、水田と同時に水道も作ることになって、僕は大忙しだ。
ちなみに、水道には蛇口と呼ばれる金属で作られている水の量を調節する物が必要だから、帝国で仕入れてもらうことになった。
蛇口が届くまでは水道を作るのはお休みだから、今は水田を作っている最中だ。
「全部囲ったから、火魔法をお願い」
「分かったわ!」
まずはソフィアが一面を火の海に変え、そこに僕が土と水を貯める分の深さで水の塊を落として、水田の基礎を作る。
あとはゆっくりと冷まして、液体になっている砂を固めるだけだ。
「よし、次に行こう」
「ええ。
次はこの辺りで良いかしら?」
「うん、問題無いよ」
これを何度か繰り返し、広大な水田の基礎を九つ作り上げた。
水を入れるのは蛇口が無いと調整できないから、後回しにするけど、コメの種は手元にあるから、届いたばかりの土を使って苗作りも始めている。
ガラスで作った小さな小屋の中で温度と湿度を調整するのは大変だけど、これが成功すれば一歩前進だろう。
「苗の方は順調かしら?」
「もう少しすれば芽が出ると思うよ」
ソフィアは苗を見るのを楽しみにしているようで、この話をするときは目を輝かせている。
僕は男爵家に居る頃に散々作ってきたものだから何も思わないけど、デザイア王国の人達にとっては目新しいものだから、楽しみにされて当然だと思う。
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