43 / 46
43. デートのようです③
しおりを挟む
カフェに入った私達は、個室の席に案内された。
外にはいつの間にか行列が出来ていたけれど、アドルフ様は予約してくれていたみたいで、並ばずに入れている。
……というよりも、貴族にはあまり知られていないみたい。
「アドルフ様、このお店はどこで知られたのですか?」
「自分で探した」
「え……? そこまでしてくださったのですか?」
どうして知っているのか気になったから問いかけたのだけど、予想外の答えが返ってきて困惑してしまう。
ヴィオラや侍女から聞いたという答えを予想していたのに……。
「婚約者の好みに合わせて調査をするのは当たり前のことだろう?」
「ここまでしてくださる方は少ないと聞きますわ」
「そうなのか。皆、こうしていると思っていたよ」
言葉を交わしながら、メニューを裏返す私。
このお店のメニューの数は少ないみたいで、頑張れば今日だけで全種類食べられそうね。
でも、そんなことをしてしまったら、夕食を食べきれなくなってしまう。それに、余計なお肉が付いてしまって、大変な思いをする事にもなってしまうわ。
だから、今日は1つだけ食べることに決めた。
残りのメニューは、またアドルフ様と来た時に楽しめば良いのよね。
ここに来るのが今回だけなら、頑張って全種類食べるけれど、ここは王都の中。気が向けばいつだって来ることが出来る。
「サーシャ、決まったかな?」
「ええ。これにしますわ」
「分かった」
そう口にしてから、私が指差したメニューを2つ注文するアドルフ様。
もしかして、同じものを食べようとしていたのかしら?
それとも、私に合わせてくれたの……?
気になるけれど、この質問はやめた方が良いわよね……。
「今月の末に王宮パーティーがあることは知っているか?」
「ええ。パーティーで何かありますの?」
「その時のエスコート役だが、俺に任せてもらえないだろうか?」
「私は大丈夫ですわ。でも、エスコートになると、その……密着することも多くなるので、アドルフ様が耐えられるか心配です」
アドルフ様にエスコートされること自体は歓迎なのだけど、彼にはまだエスコートされたことが無いから、大丈夫なのか心配になってしまう。
そういえば、前回の人生でもエスコートされたことは無かったような気がするわ……。
「……。
多分大丈夫だ」
「今の間は……」
「気にしないでくれ。しっかりエスコート出来る。
後で証明するよ」
かなり心配になってしまったところで、注文していたパフェが運ばれてきた。
それからは、明るい話題をお互いに出して、パフェを楽しむことになった。
「すごく美味しいですわ。また来たいです」
「気に入ってもらえて良かった。もちろん、また一緒に来よう」
「ありがとうございます」
お互いに笑顔を浮かべる私達。
このパフェの甘さは少し控えめだけれど、そのお陰であと3つくらいは食べられそうな気がする。
本当に美味しいから、つい勢いが付いてしまった。
「美味しそうに食べるのだな」
「えっと……はしたないですよね」
「むしろ好ましいと思っているよ。
美味しいものは美味しそうに食べるべきだろう。
女性はよく、細々としか食べないが、あれでは不満に思われていると錯覚してしまう」
不味いと思ったけれど、どうやらアドルフ様には好意的に映っていたらしい。
私のお父様も国王陛下も、美味しいものは美味しそうに食べる人だから、あまり気にしていなかったのよね……。
そんな言い訳をしたところで、失態は失態だから反省しなくちゃ。
「そんな考え方もありますのね」
「むしろ、俺のような考え方をする人は多いと思う。
場面次第では、淑やかな食べ方も必要だが、二人きりの時は楽しそうにしてもらった方が嬉しい。
可愛い顔も見られるからな」
「むぐっ……!?」
突然の発言に驚いて、むせる私。
可愛いって、いきなり言われても困るのよ……。
「大丈夫か!? とりあえず、お茶を飲め」
すぐに反応したアドルフ様が空になっていたティーカップにお茶を注いでくれた。
それを受け取って、飲み込みながら癒しの力を使ったから、咳は出さずに済んだ。
「ありがとうございます。助かりました」
「焦らなくていい。好みのペースで食べてくれ」
さっきまで私の気持ちに敏感だったのに、どうして今は落ち込んでいるのかしら?
余計に恥ずかしいわ。
外にはいつの間にか行列が出来ていたけれど、アドルフ様は予約してくれていたみたいで、並ばずに入れている。
……というよりも、貴族にはあまり知られていないみたい。
「アドルフ様、このお店はどこで知られたのですか?」
「自分で探した」
「え……? そこまでしてくださったのですか?」
どうして知っているのか気になったから問いかけたのだけど、予想外の答えが返ってきて困惑してしまう。
ヴィオラや侍女から聞いたという答えを予想していたのに……。
「婚約者の好みに合わせて調査をするのは当たり前のことだろう?」
「ここまでしてくださる方は少ないと聞きますわ」
「そうなのか。皆、こうしていると思っていたよ」
言葉を交わしながら、メニューを裏返す私。
このお店のメニューの数は少ないみたいで、頑張れば今日だけで全種類食べられそうね。
でも、そんなことをしてしまったら、夕食を食べきれなくなってしまう。それに、余計なお肉が付いてしまって、大変な思いをする事にもなってしまうわ。
だから、今日は1つだけ食べることに決めた。
残りのメニューは、またアドルフ様と来た時に楽しめば良いのよね。
ここに来るのが今回だけなら、頑張って全種類食べるけれど、ここは王都の中。気が向けばいつだって来ることが出来る。
「サーシャ、決まったかな?」
「ええ。これにしますわ」
「分かった」
そう口にしてから、私が指差したメニューを2つ注文するアドルフ様。
もしかして、同じものを食べようとしていたのかしら?
それとも、私に合わせてくれたの……?
気になるけれど、この質問はやめた方が良いわよね……。
「今月の末に王宮パーティーがあることは知っているか?」
「ええ。パーティーで何かありますの?」
「その時のエスコート役だが、俺に任せてもらえないだろうか?」
「私は大丈夫ですわ。でも、エスコートになると、その……密着することも多くなるので、アドルフ様が耐えられるか心配です」
アドルフ様にエスコートされること自体は歓迎なのだけど、彼にはまだエスコートされたことが無いから、大丈夫なのか心配になってしまう。
そういえば、前回の人生でもエスコートされたことは無かったような気がするわ……。
「……。
多分大丈夫だ」
「今の間は……」
「気にしないでくれ。しっかりエスコート出来る。
後で証明するよ」
かなり心配になってしまったところで、注文していたパフェが運ばれてきた。
それからは、明るい話題をお互いに出して、パフェを楽しむことになった。
「すごく美味しいですわ。また来たいです」
「気に入ってもらえて良かった。もちろん、また一緒に来よう」
「ありがとうございます」
お互いに笑顔を浮かべる私達。
このパフェの甘さは少し控えめだけれど、そのお陰であと3つくらいは食べられそうな気がする。
本当に美味しいから、つい勢いが付いてしまった。
「美味しそうに食べるのだな」
「えっと……はしたないですよね」
「むしろ好ましいと思っているよ。
美味しいものは美味しそうに食べるべきだろう。
女性はよく、細々としか食べないが、あれでは不満に思われていると錯覚してしまう」
不味いと思ったけれど、どうやらアドルフ様には好意的に映っていたらしい。
私のお父様も国王陛下も、美味しいものは美味しそうに食べる人だから、あまり気にしていなかったのよね……。
そんな言い訳をしたところで、失態は失態だから反省しなくちゃ。
「そんな考え方もありますのね」
「むしろ、俺のような考え方をする人は多いと思う。
場面次第では、淑やかな食べ方も必要だが、二人きりの時は楽しそうにしてもらった方が嬉しい。
可愛い顔も見られるからな」
「むぐっ……!?」
突然の発言に驚いて、むせる私。
可愛いって、いきなり言われても困るのよ……。
「大丈夫か!? とりあえず、お茶を飲め」
すぐに反応したアドルフ様が空になっていたティーカップにお茶を注いでくれた。
それを受け取って、飲み込みながら癒しの力を使ったから、咳は出さずに済んだ。
「ありがとうございます。助かりました」
「焦らなくていい。好みのペースで食べてくれ」
さっきまで私の気持ちに敏感だったのに、どうして今は落ち込んでいるのかしら?
余計に恥ずかしいわ。
65
お気に入りに追加
3,347
あなたにおすすめの小説

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。
水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。
その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。
そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる