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31. 親戚でも緊張します
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あの後すぐに、我慢できなくなった私は人目が限られている教室に逃げ込んだ。
でも、ここでも私の思い通りにはなってくれなかった。
「お怪我は大丈夫ですか?」
「顔色が少し悪い気がする。俺達は何も見ていないから、ゆっくり休んでくれ」
「サーシャ、無事で良かった」
私を探しに来たらしいアドルフ様のお顔が近くにある。
こんなの、全く休まらないわ。
「意識さえ保てれば、どんな怪我をしても大丈夫ですから」
「そうなのかもしれないが、心配なものは心配なんだ」
「本当に大丈夫ですのに。私、これでも2階から無事に飛び降りることだって出来ますのに……」
アドルフ様に介抱される私。
元気だから必要の無いことなのに……。
「サーシャ様、これから状況の確認のためにお話しを伺いたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ、構い……」
「辛い思いをした直後に取り調べか? 感心しないな。
少しは休ませたい。疲労で倒れたらどうする?」
私が頷こうとしたら、アドルフ様に遮られてしまった。
疲れているのは事実だから、この配慮は嬉しい。
でも、早く情報を出した方が良い気もするのよね……。
「は、はい。では明日、騎士団の本部にお越し頂けないでしょうか?
サーシャ様が切り付けられた件については大勢が目撃していますのでお尋ねしませんが、毒の方は詳しく調べたいと思っています。
そちらの水筒を我々に預けて頂けないでしょうか?」
「分かりました」
頷いてから、差し出された袋に水筒を入れる私。
「ご協力ありがとうございます。では、我々はこれで失礼します」
そう口にしてから騎士団の方々がこの場を後にすると、入れ替わりで私達のクラスを受け持っている担任の先生が入ってきた。
「皆さん、本日の授業は全て中止になりました。速やかにお帰り下さい」
授業中止を告げられて、教室の前の方からは歓喜の声が上がっていた。
この中止になった分の授業は、長期休みの期間に代わりに受けることになるから面倒なのに、そのことを分かっていないらしい。
もう決まっている予定があるから、変えないといけなくなりそうね……。
◇
翌朝。
今日は休日だから、本来ならのんびりしていられるはずだったけれど、取り調べを受けることになったから平日のように朝から外行きの準備をしている。
「騎士団に行くだけでしたら、簡素なドレスにいたしますね」
「ええ、それでお願いするわ」
ダリアがドレスを選んでくれている間に、私はアドルフ様に宛てて送る手紙を仕上げていく。
といっても、昨日のうちに書いておいた文章を確認してから、封筒に入れるだけのことだけれど。
「お待たせしました。どちらにされますか?」
「こっちでお願い」
「畏まりました」
封筒が開いてしまわないように、適当な本を積み上げて重しにしてから、着替えを始める私。
今日選んだのは、少しオレンジがかった明るい色のドレスで、飾り気はあまり無い。
でも、これでも礼を欠いたりはしないし、そもそも騎士団相手に飾り立てる必要も無いから、最低限にしている。
着替えが終わったら、いつも通り家族みんなで朝食をとる。
今日もお母様はお茶会に呼ばれているみたいで、外行きのドレスに身を包んでいる。
休日なのに、お父様が礼服を着ているのは珍しいわね……。
「お父様、今日はどちらに行かれるのですか?」
「陛下と会うことになったんだ」
気になって問いかけると、そんな言葉が飛び出してきた。
お父様にとっての王家は義実家だから、行く機会は山ほどあるのよね。
でも、普段は礼服ではなく、普通の余所行きの服を着ているから、今回は政治的な意味で行くのだと思う。
「私も王宮に行くことになってるわ。例のリリアさん、少し厄介なことになりそうなの」
「そうでしたのね……」
「陛下が感謝していたよ。拘束に貢献してくれてありがとうって。
近いうちに、サーシャも王宮に行くことになると思う。身内としてではなく、功績者としてね」
「覚悟を決めておきますわ」
お父様に満面の笑顔で言われて、処刑される前の気分になる私。
政治的な意味で王宮に招かれるのは、すごく緊張するのよね……。
でも、ここでも私の思い通りにはなってくれなかった。
「お怪我は大丈夫ですか?」
「顔色が少し悪い気がする。俺達は何も見ていないから、ゆっくり休んでくれ」
「サーシャ、無事で良かった」
私を探しに来たらしいアドルフ様のお顔が近くにある。
こんなの、全く休まらないわ。
「意識さえ保てれば、どんな怪我をしても大丈夫ですから」
「そうなのかもしれないが、心配なものは心配なんだ」
「本当に大丈夫ですのに。私、これでも2階から無事に飛び降りることだって出来ますのに……」
アドルフ様に介抱される私。
元気だから必要の無いことなのに……。
「サーシャ様、これから状況の確認のためにお話しを伺いたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ええ、構い……」
「辛い思いをした直後に取り調べか? 感心しないな。
少しは休ませたい。疲労で倒れたらどうする?」
私が頷こうとしたら、アドルフ様に遮られてしまった。
疲れているのは事実だから、この配慮は嬉しい。
でも、早く情報を出した方が良い気もするのよね……。
「は、はい。では明日、騎士団の本部にお越し頂けないでしょうか?
サーシャ様が切り付けられた件については大勢が目撃していますのでお尋ねしませんが、毒の方は詳しく調べたいと思っています。
そちらの水筒を我々に預けて頂けないでしょうか?」
「分かりました」
頷いてから、差し出された袋に水筒を入れる私。
「ご協力ありがとうございます。では、我々はこれで失礼します」
そう口にしてから騎士団の方々がこの場を後にすると、入れ替わりで私達のクラスを受け持っている担任の先生が入ってきた。
「皆さん、本日の授業は全て中止になりました。速やかにお帰り下さい」
授業中止を告げられて、教室の前の方からは歓喜の声が上がっていた。
この中止になった分の授業は、長期休みの期間に代わりに受けることになるから面倒なのに、そのことを分かっていないらしい。
もう決まっている予定があるから、変えないといけなくなりそうね……。
◇
翌朝。
今日は休日だから、本来ならのんびりしていられるはずだったけれど、取り調べを受けることになったから平日のように朝から外行きの準備をしている。
「騎士団に行くだけでしたら、簡素なドレスにいたしますね」
「ええ、それでお願いするわ」
ダリアがドレスを選んでくれている間に、私はアドルフ様に宛てて送る手紙を仕上げていく。
といっても、昨日のうちに書いておいた文章を確認してから、封筒に入れるだけのことだけれど。
「お待たせしました。どちらにされますか?」
「こっちでお願い」
「畏まりました」
封筒が開いてしまわないように、適当な本を積み上げて重しにしてから、着替えを始める私。
今日選んだのは、少しオレンジがかった明るい色のドレスで、飾り気はあまり無い。
でも、これでも礼を欠いたりはしないし、そもそも騎士団相手に飾り立てる必要も無いから、最低限にしている。
着替えが終わったら、いつも通り家族みんなで朝食をとる。
今日もお母様はお茶会に呼ばれているみたいで、外行きのドレスに身を包んでいる。
休日なのに、お父様が礼服を着ているのは珍しいわね……。
「お父様、今日はどちらに行かれるのですか?」
「陛下と会うことになったんだ」
気になって問いかけると、そんな言葉が飛び出してきた。
お父様にとっての王家は義実家だから、行く機会は山ほどあるのよね。
でも、普段は礼服ではなく、普通の余所行きの服を着ているから、今回は政治的な意味で行くのだと思う。
「私も王宮に行くことになってるわ。例のリリアさん、少し厄介なことになりそうなの」
「そうでしたのね……」
「陛下が感謝していたよ。拘束に貢献してくれてありがとうって。
近いうちに、サーシャも王宮に行くことになると思う。身内としてではなく、功績者としてね」
「覚悟を決めておきますわ」
お父様に満面の笑顔で言われて、処刑される前の気分になる私。
政治的な意味で王宮に招かれるのは、すごく緊張するのよね……。
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