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21. 違和感を感じます
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婚約に向けた話し合いは順調に進んでいった。
けれども、私は不安を感じずには居られなかった。
前回の人生で失った治癒の力が、今回の人生で失われないだなんて都合の良いことは起こらないと思っているから。
だから、話が纏まる前に問いかけることにした。
「お話の途中で申し訳ありませんわ。もしもの話ですけれど、私が治癒の力を失ったらどうされますか?」
「僕は気にしませんよ。貴女との婚約を望んだ理由は、治癒の力ではありませんから」
「そうでしたのね」
治癒の力を失っても大丈夫と言われたから、そのまま婚約を受け入れようと思った。
婚約解消してすぐに他の方と婚約を結ぶことはあまり良く無いけれど、パールサフ家が私に有利な噂を流すと約束してくれた。
これからどうなるか分からないけれど、現状では最良の選択を出来た気がするわ。
ちなみに、今回の婚約では私も学院を卒業出来るように配慮してもらえるから、前回の人生のような悲惨な目には遭わないと思っている。
それなのに、不安が消える気配はしない。
「では、条件の確認に移りましょう」
「はい」
この後は、お互いに条件に納得した上で婚約の書類にサインをした。
また婚約解消になったらバツニになってしまうから、その時は潔く修道院にでも入ろうと思う。
「サーシャ嬢、これからはサーシャと呼んでも良いかな?」
「もちろんですわ。これから、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しく」
どういうわけか、女性が苦手なはずのアドルフ様は私に笑顔を向けてくれている。
きっと作り物の笑顔よね! そうに違いないわ……!
◇
アドルフ様と婚約を結んだ日の翌朝。
私はアドルフ様の馬車に乗って学院に向かっていた。
婚約者と通うのは普通ではあるのだけど、女性が苦手なアドルフ様から誘われると思わなくて、今も困惑している。
もしかしたら、女性が苦手なのは嘘なのでは?
普通にお話している時に、そんな疑いを抱くほどだった。
けれども、学院に着いてからの振る舞いで、その疑問は晴れることになった。
「……どうされましたか?」
「……なんでもない」
あからさまに婚約者のいないご令嬢の側を避けて歩くアドルフ様。
本人はそういうつもりで動いていないみたいだから、この行動は無自覚だと思う。
ちなみに、今の私はエスコートどころか手も繋がれていない。
それなのに、ギリギリ肩が当たらない距離で隣り合って歩いてる感じなのよね……。
この距離感はお昼休みの時も、ヴィオラとお茶会をするためにパールサフ邸に向かう時も同じだった。
ちなみに、今日のリリア様はアドルフ様を誘惑しようと頑張っていたらしい。
このことはアドルフ様から直接聞いたのだけど、ダリアも目撃していたから間違い無さそうだ。
何度追い払っても、すぐに纏わりついてくるみたいで、今は疲れ切った様子だった。
「急に誘ってごめんなさい。どうしても話したいことがあったのよ」
今は人払いを済ませた部屋でヴィオラと向かい合っている。
お茶会とは名ばかりで、形は完全に密談ね……。
「何かあったのかしら?」
「ええ。私には、今とは違う人生の記憶があるみたいなの。前世と言うべきかしら?
昨日の夜、その夢を見てしまったわ。信じて貰えると良いのだけど……」
お茶を飲んでから、不安そうに口にするヴィオラ。
前世の記憶があるだなんて言っても、普通は信じて貰えないもの。
「信じるわ。私も似た夢を見たことがあるから」
「そうだったのね。理解が早くて助かるわ。
私から話すね?」
「お願い」
頷く私。
それから、ヴィオラは夢のことを語り始めた。
けれども、私は不安を感じずには居られなかった。
前回の人生で失った治癒の力が、今回の人生で失われないだなんて都合の良いことは起こらないと思っているから。
だから、話が纏まる前に問いかけることにした。
「お話の途中で申し訳ありませんわ。もしもの話ですけれど、私が治癒の力を失ったらどうされますか?」
「僕は気にしませんよ。貴女との婚約を望んだ理由は、治癒の力ではありませんから」
「そうでしたのね」
治癒の力を失っても大丈夫と言われたから、そのまま婚約を受け入れようと思った。
婚約解消してすぐに他の方と婚約を結ぶことはあまり良く無いけれど、パールサフ家が私に有利な噂を流すと約束してくれた。
これからどうなるか分からないけれど、現状では最良の選択を出来た気がするわ。
ちなみに、今回の婚約では私も学院を卒業出来るように配慮してもらえるから、前回の人生のような悲惨な目には遭わないと思っている。
それなのに、不安が消える気配はしない。
「では、条件の確認に移りましょう」
「はい」
この後は、お互いに条件に納得した上で婚約の書類にサインをした。
また婚約解消になったらバツニになってしまうから、その時は潔く修道院にでも入ろうと思う。
「サーシャ嬢、これからはサーシャと呼んでも良いかな?」
「もちろんですわ。これから、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しく」
どういうわけか、女性が苦手なはずのアドルフ様は私に笑顔を向けてくれている。
きっと作り物の笑顔よね! そうに違いないわ……!
◇
アドルフ様と婚約を結んだ日の翌朝。
私はアドルフ様の馬車に乗って学院に向かっていた。
婚約者と通うのは普通ではあるのだけど、女性が苦手なアドルフ様から誘われると思わなくて、今も困惑している。
もしかしたら、女性が苦手なのは嘘なのでは?
普通にお話している時に、そんな疑いを抱くほどだった。
けれども、学院に着いてからの振る舞いで、その疑問は晴れることになった。
「……どうされましたか?」
「……なんでもない」
あからさまに婚約者のいないご令嬢の側を避けて歩くアドルフ様。
本人はそういうつもりで動いていないみたいだから、この行動は無自覚だと思う。
ちなみに、今の私はエスコートどころか手も繋がれていない。
それなのに、ギリギリ肩が当たらない距離で隣り合って歩いてる感じなのよね……。
この距離感はお昼休みの時も、ヴィオラとお茶会をするためにパールサフ邸に向かう時も同じだった。
ちなみに、今日のリリア様はアドルフ様を誘惑しようと頑張っていたらしい。
このことはアドルフ様から直接聞いたのだけど、ダリアも目撃していたから間違い無さそうだ。
何度追い払っても、すぐに纏わりついてくるみたいで、今は疲れ切った様子だった。
「急に誘ってごめんなさい。どうしても話したいことがあったのよ」
今は人払いを済ませた部屋でヴィオラと向かい合っている。
お茶会とは名ばかりで、形は完全に密談ね……。
「何かあったのかしら?」
「ええ。私には、今とは違う人生の記憶があるみたいなの。前世と言うべきかしら?
昨日の夜、その夢を見てしまったわ。信じて貰えると良いのだけど……」
お茶を飲んでから、不安そうに口にするヴィオラ。
前世の記憶があるだなんて言っても、普通は信じて貰えないもの。
「信じるわ。私も似た夢を見たことがあるから」
「そうだったのね。理解が早くて助かるわ。
私から話すね?」
「お願い」
頷く私。
それから、ヴィオラは夢のことを語り始めた。
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