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18. 社交界では失態です
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あれから暫くして、私達はお昼休みを迎えた。
リリア様は相変わらず殿方に声をかけて回っていて、お陰で私が声をかけられることは無かった。
私に近付こうとする人を優先して声をかけているみたいだから、私から殿方の気配を消そうとしているらしい。
でも、中にはリリア様の邪魔をすり抜けてくるお方もいた。
正直に言って、今は殿方と友人関係になるつもりも無いから迷惑なのだけど……。
「リリア様の誘惑にかからないお方なら、浮気もしないはずです。独り身以外の道も考えてみては如何でしょうか?」
「確かにそうなのよね……。でも、愛人を作らないお方なんていらっしゃるのかしら?」
「旦那様が良い例ですが、あのレベルで出来たお方はなかなか居ませんよね……」
ダリアに相談に乗ってもらっているのだけど、私が望む人の条件が厳しすぎて、当てはまる人なんて思いつかない。
真面目に婚約者探しをしている人なら、この考え方は行き遅れになってしまう。
一生独り身でも生きていくことは出来るけれど、治癒の力が邪魔なのよね……。
でも、あの悪夢が本当なら、いくら未来を変えても私は力を失うはずだから、命を狙われることも無いかもしれない。
やっぱり、1人で生きていくのが正解な気がしてきたわ。
でも、その覚悟を決めたら、今度は家族の温かさが浮かんでしまって決めきれない。
そう思ってしまった時、隣の席のヴィオラが声をかけてきた。
「私のお兄様はどうかしら?」
「アドルフ様は良いお方だとは思っているわ。女性が苦手なところを除いたら……」
「苦手なのに顔は良いから言い寄られているのよね。愚痴は言っていないけれど、嫌がっているわ」
「それ、私が近付いたら追い返されて終わりよ」
ヴィオラのお兄様は容姿が整っていて、その上に成績も学年で1番だ。
けれども婚約者はまだ居なくて、ご令嬢達が狙っているらしい。
女性が苦手なことは公言されていないから、知らずに声をかけている人が多い。
私はヴィオラの屋敷でお茶会をした時に聞いたのだけど。
「サーシャなら大丈夫よ。お兄様は色仕掛けがとにかく嫌いなだけだから」
「そんな単純ではないと思うのだけど……」
「とりあえず、学院が終わってからでも話をしてみない?」
グイグイと寄ってくるヴィオラ。
少し前にも、こんなやり取りがあったのだけど……。
まさか、私にアドルフ様を狙わせようとしているの?
「ヴィオラ、もしかして私とアドルフ様に関係を持たせようとしてる……?」
「バレてた?」
「バレバレよ。どうして近付けようとするの?」
「まだ未来の話になるけれど、お兄様はそこそこ人望がるの。
だから、知り合いになっておけば、一人で生きていく時に役立つと思うの。侯爵家との繋がり、魅力的じゃない?」
どこまでが本当なのかは分からないけれど、ヴィオラが言っていることは正しい。
貴族の家を出た女性が1人で生きていことは、実は難しい。
というのも、女性は爵位を授かれないから、家を出た時点で平民になってしまう。
田舎なら問題ないのだけど、都会だと「何か罪を犯した人」という目で見られてしまうのよね……。
貴族から平民になるのは殆どが罪を犯した人だから、こういう印象になってしまうらしい。
「確かに、繋がりはあった方が良いわよね……。でも、嫌われないか心配だわ」
「サーシャなら大丈夫よ。あんなことをしたら、保証出来ないのだけど……」
そう言いながら、とある人を指差すヴィオラ。
指先を辿ると、ちょうどアドルフ様がリリア様に声をかけられているところが目に入った。
「リリア様、すごいですね。こんな娼婦のような真似、脅されても出来ません」
思わず、といった様子でダリアが声を漏らす。
「そうね。関心してしまうわ」
「あれは……酷いですわね」
そんな言葉をヒソヒソと交わしていると、アドルフ様の近くからパスカルが手を振ってきている姿が目に入った。
私も手を振り返すと、こちらに近付いてきた。
婚約者様も一緒のようね。
「姉様、席が空いてなかったので、隣良いですか?」
「ヴィオラ、良いかしら?」
「ええ」
「大丈夫よ」
ヴィオラに確認を取ってから、大丈夫だと告げる私。
すると、パスカル達は私達の向かい側に座った。
ヴィオラに目を全く合わせていないのは、婚約者様への配慮ね。
徹底してるわね。
けれど、そのパスカルの後ろに迫る影が見えた。
「パスカル様ぁ、その女なんか放っておいて、わたしご一緒しませんかぁ?」
アドルフ様を誘惑しようとしていたリリア様の声に、顔をしかめる私達。
あまりの不快感を隠すことなんて出来なかった。
……不快感を表に出すだなんて、社交界では許されないことだから、もっと表情を作る練習をしないといけないわね。
リリア様は相変わらず殿方に声をかけて回っていて、お陰で私が声をかけられることは無かった。
私に近付こうとする人を優先して声をかけているみたいだから、私から殿方の気配を消そうとしているらしい。
でも、中にはリリア様の邪魔をすり抜けてくるお方もいた。
正直に言って、今は殿方と友人関係になるつもりも無いから迷惑なのだけど……。
「リリア様の誘惑にかからないお方なら、浮気もしないはずです。独り身以外の道も考えてみては如何でしょうか?」
「確かにそうなのよね……。でも、愛人を作らないお方なんていらっしゃるのかしら?」
「旦那様が良い例ですが、あのレベルで出来たお方はなかなか居ませんよね……」
ダリアに相談に乗ってもらっているのだけど、私が望む人の条件が厳しすぎて、当てはまる人なんて思いつかない。
真面目に婚約者探しをしている人なら、この考え方は行き遅れになってしまう。
一生独り身でも生きていくことは出来るけれど、治癒の力が邪魔なのよね……。
でも、あの悪夢が本当なら、いくら未来を変えても私は力を失うはずだから、命を狙われることも無いかもしれない。
やっぱり、1人で生きていくのが正解な気がしてきたわ。
でも、その覚悟を決めたら、今度は家族の温かさが浮かんでしまって決めきれない。
そう思ってしまった時、隣の席のヴィオラが声をかけてきた。
「私のお兄様はどうかしら?」
「アドルフ様は良いお方だとは思っているわ。女性が苦手なところを除いたら……」
「苦手なのに顔は良いから言い寄られているのよね。愚痴は言っていないけれど、嫌がっているわ」
「それ、私が近付いたら追い返されて終わりよ」
ヴィオラのお兄様は容姿が整っていて、その上に成績も学年で1番だ。
けれども婚約者はまだ居なくて、ご令嬢達が狙っているらしい。
女性が苦手なことは公言されていないから、知らずに声をかけている人が多い。
私はヴィオラの屋敷でお茶会をした時に聞いたのだけど。
「サーシャなら大丈夫よ。お兄様は色仕掛けがとにかく嫌いなだけだから」
「そんな単純ではないと思うのだけど……」
「とりあえず、学院が終わってからでも話をしてみない?」
グイグイと寄ってくるヴィオラ。
少し前にも、こんなやり取りがあったのだけど……。
まさか、私にアドルフ様を狙わせようとしているの?
「ヴィオラ、もしかして私とアドルフ様に関係を持たせようとしてる……?」
「バレてた?」
「バレバレよ。どうして近付けようとするの?」
「まだ未来の話になるけれど、お兄様はそこそこ人望がるの。
だから、知り合いになっておけば、一人で生きていく時に役立つと思うの。侯爵家との繋がり、魅力的じゃない?」
どこまでが本当なのかは分からないけれど、ヴィオラが言っていることは正しい。
貴族の家を出た女性が1人で生きていことは、実は難しい。
というのも、女性は爵位を授かれないから、家を出た時点で平民になってしまう。
田舎なら問題ないのだけど、都会だと「何か罪を犯した人」という目で見られてしまうのよね……。
貴族から平民になるのは殆どが罪を犯した人だから、こういう印象になってしまうらしい。
「確かに、繋がりはあった方が良いわよね……。でも、嫌われないか心配だわ」
「サーシャなら大丈夫よ。あんなことをしたら、保証出来ないのだけど……」
そう言いながら、とある人を指差すヴィオラ。
指先を辿ると、ちょうどアドルフ様がリリア様に声をかけられているところが目に入った。
「リリア様、すごいですね。こんな娼婦のような真似、脅されても出来ません」
思わず、といった様子でダリアが声を漏らす。
「そうね。関心してしまうわ」
「あれは……酷いですわね」
そんな言葉をヒソヒソと交わしていると、アドルフ様の近くからパスカルが手を振ってきている姿が目に入った。
私も手を振り返すと、こちらに近付いてきた。
婚約者様も一緒のようね。
「姉様、席が空いてなかったので、隣良いですか?」
「ヴィオラ、良いかしら?」
「ええ」
「大丈夫よ」
ヴィオラに確認を取ってから、大丈夫だと告げる私。
すると、パスカル達は私達の向かい側に座った。
ヴィオラに目を全く合わせていないのは、婚約者様への配慮ね。
徹底してるわね。
けれど、そのパスカルの後ろに迫る影が見えた。
「パスカル様ぁ、その女なんか放っておいて、わたしご一緒しませんかぁ?」
アドルフ様を誘惑しようとしていたリリア様の声に、顔をしかめる私達。
あまりの不快感を隠すことなんて出来なかった。
……不快感を表に出すだなんて、社交界では許されないことだから、もっと表情を作る練習をしないといけないわね。
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