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17. 防壁役が消えたので

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 それからしばらく歩いて、教室に入った私達はいつもの席に腰を下ろした。

 場所の決まりは無いけれど、地位の高い人が床が高くなっている後ろ側に座るのが慣例になっていて、初日に決まった席は学期が変わるまでは同じになる。
 学院の中では爵位よりも成績を重視するようになっているから、ここでの地位は成績が優先される。

 私達のクラスは30人で、1番地位が高いのは試験で毎回1位のユリウス第二王子殿下で、その次の次がヴィオラになっている。私は上から4番目だから、ヴィオラの隣になれてるのよね。
 リリア様も同じクラスだけれど、席は前の方だ。

 オズワルド様は学年が違うからここには居ないけれど、真ん中よりは後ろの席らしい。
 もうどうでもいいけれど。
 
「それにしても、今日はすっごく注目されているわね……」
「私のせいよね。ごめんなさい」
「人気者になると、こんな感じなのね。すこし楽しいわ」

 この高くなっている席からは教室の中が良く見えるのだけど、私達に向けられる視線はユリウス殿下よりも多い。
 そのユリウス殿下はというと、私達の後ろに回り込んできて声をかけてきた。

「サーシャ、男達が君を狙っている。何かあったら手を貸すから、言って欲しい」
「お気遣いありがとうございます。本当に困ったら助けてもらいますね」
「そうか、分かった。あと、毎回言っているが、従兄妹なんだから敬語は要らないだろ……」
「ここでは他人の目がありますので、我慢してください」
「分かった」

 呑み込みが早いのはいつものことだけど、このやり取りも毎回しているのよね……。
 学習能力は……あるはずなのに、おかしいわ。
 
「サーシャ、これから大変になりそうね」
「そうね。困ったわ」

 私を狙っているご令息が大勢いるという悲しい現実。
 今は殿方と関わりたくないのに、これは悪夢かしら?

 死ぬよりはマシだけど、悪夢は悪夢なのよ。

「バツイチの私を狙う理由なんて無いと思うのだけど?」
「理由なら山ほどあるわよ。
 まず、その容姿ね。同性の私から見ても整った顔だと思うのだから、殿方の目から見ても好印象ね。
 それに、癒しの力を持っていてる王女の娘というのも大きいわね。こっちは政略的な意味になるけれど、とにかく狙わない理由は無いのよ」
「うう……言葉で現実を伝えられると頭が痛いわ」

 この問題は、私の周囲からの印象にも関わるのよね。
 異性に好かれる人って、同性から嫌われやすいから……。

「そうか、浮気されたばかりだから関わりたくないのか。
 あ、俺も関わったらダメか」
「ユリウス殿下は大丈夫ですわ」
「それは良かった。とりあえず、あの馬鹿達に注意してくるよ」
「ありがとうございます」

 皮肉なことに、今まではオズワルド様が防壁になっていたから、殿方から好意を向けられることは無かったけれど。
 残念なことに今はその防壁が無いから、好意向けられ放題なのよね。

 ユリウス殿下が注意してくださったら、幾分かはマシになると思うけれど……。
 私が格好の的なのは変わらなくて……。

 バツイチなのに。
 的の真ん中には必ず×バツ印を描くのと関係あるのかしら?


 深刻な問題に頭を抱えたくなってしまう。
 けれど、私達の興味はとある声によって変わることになった。

「グレンさまぁ、今日はわたしと一緒に昼食にしませんかぁ?」
「もちろん良いよ」

 リリア様が伯爵令息のグレン様に声をかけている。
 状況だけ見ればそうなるのだけど……。

「これで3人目ね。一体何人を誘惑したら気が済むのかしら?」
「まさか、婚約者の居ない殿方を全員狙っているとか……?」
「有り得そうね」

 幸運にも、私の防壁になってくれそうな人がいて、笑みが漏れそうになってしまった。
 これなら一生独り身でも友人を増やして、楽しくお茶会をしたり出来そうね!
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