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2. 私が死んだ理由②
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倒れる時に近くにあった花瓶を倒してしまって、大きな音が響いた。
けれどもそのことを気にしていないリリア様は、嫌な笑みを浮かべたまま私に近付いてくる。
「サーシャ様、大丈夫!? よろけてしまったのね!」
「うぅ……」
また激痛が襲ってきて、呻き声を漏らしてしまう私。
「貴女が流産すれば私が正妻になれるはずなの。恨むならオズワルドを恨んでね?」
耳元でそんなことを言われた気がするけれど、何かを言い返す余裕なんか無かった。
「サーシャ、立てるよな?」
「無理です……」
腰の辺りに広がる液体の感覚に、嫌な予感がする。
痛みもさっきと比べものにならない。
「すごい音がしましたが、大丈夫ですか?」
「ああ。サーシャがよろけて、花瓶を割ってしまっただけだ。驚いて粗相をしたようだが」
「旦那様、これは粗相ではありません。赤ちゃんが産まれそうな時に出るものです」
平然とした様子のオズワルド様に怒っているダリア。
このままだとダリアの身が危ないわ……。
そう思っていたけれど、オズワルド様の反応は予想と違っていた。
「そうか、産まれるのか! サーシャ、産まれるならそうと最初から言ってくれ。
そろそろ産まれるのか?」
「そんな簡単に産まれませんよ。とにかく、今はサーシャ様を寝室に運んでください!
無理なら私がお連れしますが?」
「わ、分かった」
私の苦しむ様子を見て、ようやく危機感を覚えたのかしら?
オズワルド様は初めてダリアの要求を受け入れてくれた。
正直、オズワルド様に抱き上げられても安心なんて出来なかった。
けれども今は彼とダリアしか頼れない。
「まだ痛むのか?」
「はい……」
「サーシャ様、お水をお持ちしました。飲めますか……?」
「ありがとう」
ティーポットにお水を入れて持ってきてくれたダリアにお礼を言って、少しだけ口に含む。
さっきからの痛みで身体に力が入ってしまって、今は汗も出てしまっている。
だから、冷たいお水は嬉しかった。
そもそものお話、お茶なんて高級品はこの家に無いのだけど……。
「それから旦那様とリリア様はここから出てください!」
「俺は夫なのにか?」
「その自覚があるならお医者様を呼んでください」
「私、お産について勉強したいわ」
「ダメです。サーシャ様に敵意のある方は入れさせられません」
あの場面を目撃していないはずなのに、ダリアは私を守ろうと必死に動いてくれている。
「何よ、勝手に決めつけて!」
「オズワルド様の赤ちゃんを殺そうとしたこと、知ってますからね?」
初めて見るダリアの剣幕に気押されたのかしら?
リリア様がそれ以上何かを言ってくることは無かった。
「サーシャ様、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「大丈夫よ……」
痛くなったり収まったりを繰り返していたのに、今はずっと痛むようになっている。
痛みに耐えようと思うと、自然と力が入ってしまう。
けれども、すぐに息が上がってしまって、力を入れ続けられない。
「ゆっくりで大丈夫です。また落ち着いたら力を入れましょう」
「分かったわ」
女に学は要らないと言われ書庫に入ることが許されなかった私には、こういう時の知識はほとんど無い。
でも、ダリアは掃除の時に少しずつ知識を入れてくれたみたいね。
体勢から力の入れるタイミングまで、間違っているとは思えなかった。
でも、知識があったところで私の体力はもう限界。
「ごめんね……。私、もうダメかも……。
せめてこの子は無事に産んであげたかったわ」
腰の周りには赤いものが少しずつ広がっているのが目に入った。
こんなに痛いのだから、血が出ていて当然。
今の私に治癒の力が使えればなんとかなったのかもしれないけれど、この一年の間に使えなくなってしまった。
遠のく意識を引き止めようと思っても、無理そうだ。
「サーシャ様! しっかりしてください!」
「分かってるわ。でも、もう無理よ……。力が入らないの」
手を握って声をかけ続けてくれるダリアには申し訳ないけれど、多分もう生きていられない。
お母様、お父様。先立つことをどうかお許しください。
頭の中で謝る私。
どれくらいの時間が経ぎたのか分からないけれど、産声を聞く前に意識を手放してしまった。
けれどもそのことを気にしていないリリア様は、嫌な笑みを浮かべたまま私に近付いてくる。
「サーシャ様、大丈夫!? よろけてしまったのね!」
「うぅ……」
また激痛が襲ってきて、呻き声を漏らしてしまう私。
「貴女が流産すれば私が正妻になれるはずなの。恨むならオズワルドを恨んでね?」
耳元でそんなことを言われた気がするけれど、何かを言い返す余裕なんか無かった。
「サーシャ、立てるよな?」
「無理です……」
腰の辺りに広がる液体の感覚に、嫌な予感がする。
痛みもさっきと比べものにならない。
「すごい音がしましたが、大丈夫ですか?」
「ああ。サーシャがよろけて、花瓶を割ってしまっただけだ。驚いて粗相をしたようだが」
「旦那様、これは粗相ではありません。赤ちゃんが産まれそうな時に出るものです」
平然とした様子のオズワルド様に怒っているダリア。
このままだとダリアの身が危ないわ……。
そう思っていたけれど、オズワルド様の反応は予想と違っていた。
「そうか、産まれるのか! サーシャ、産まれるならそうと最初から言ってくれ。
そろそろ産まれるのか?」
「そんな簡単に産まれませんよ。とにかく、今はサーシャ様を寝室に運んでください!
無理なら私がお連れしますが?」
「わ、分かった」
私の苦しむ様子を見て、ようやく危機感を覚えたのかしら?
オズワルド様は初めてダリアの要求を受け入れてくれた。
正直、オズワルド様に抱き上げられても安心なんて出来なかった。
けれども今は彼とダリアしか頼れない。
「まだ痛むのか?」
「はい……」
「サーシャ様、お水をお持ちしました。飲めますか……?」
「ありがとう」
ティーポットにお水を入れて持ってきてくれたダリアにお礼を言って、少しだけ口に含む。
さっきからの痛みで身体に力が入ってしまって、今は汗も出てしまっている。
だから、冷たいお水は嬉しかった。
そもそものお話、お茶なんて高級品はこの家に無いのだけど……。
「それから旦那様とリリア様はここから出てください!」
「俺は夫なのにか?」
「その自覚があるならお医者様を呼んでください」
「私、お産について勉強したいわ」
「ダメです。サーシャ様に敵意のある方は入れさせられません」
あの場面を目撃していないはずなのに、ダリアは私を守ろうと必死に動いてくれている。
「何よ、勝手に決めつけて!」
「オズワルド様の赤ちゃんを殺そうとしたこと、知ってますからね?」
初めて見るダリアの剣幕に気押されたのかしら?
リリア様がそれ以上何かを言ってくることは無かった。
「サーシャ様、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「大丈夫よ……」
痛くなったり収まったりを繰り返していたのに、今はずっと痛むようになっている。
痛みに耐えようと思うと、自然と力が入ってしまう。
けれども、すぐに息が上がってしまって、力を入れ続けられない。
「ゆっくりで大丈夫です。また落ち着いたら力を入れましょう」
「分かったわ」
女に学は要らないと言われ書庫に入ることが許されなかった私には、こういう時の知識はほとんど無い。
でも、ダリアは掃除の時に少しずつ知識を入れてくれたみたいね。
体勢から力の入れるタイミングまで、間違っているとは思えなかった。
でも、知識があったところで私の体力はもう限界。
「ごめんね……。私、もうダメかも……。
せめてこの子は無事に産んであげたかったわ」
腰の周りには赤いものが少しずつ広がっているのが目に入った。
こんなに痛いのだから、血が出ていて当然。
今の私に治癒の力が使えればなんとかなったのかもしれないけれど、この一年の間に使えなくなってしまった。
遠のく意識を引き止めようと思っても、無理そうだ。
「サーシャ様! しっかりしてください!」
「分かってるわ。でも、もう無理よ……。力が入らないの」
手を握って声をかけ続けてくれるダリアには申し訳ないけれど、多分もう生きていられない。
お母様、お父様。先立つことをどうかお許しください。
頭の中で謝る私。
どれくらいの時間が経ぎたのか分からないけれど、産声を聞く前に意識を手放してしまった。
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