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39. ガークレオンside 減刑のために
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同じ頃、クリムソン家の者が王宮にある貴人牢を訪れていた。
逃げ出そうと思えないほど厳重に警備されているこの場所であっても、身体検査を受けた者に限って面会をすることが出来る。
しかし牢の壁には小さな穴があけられており、ここでの会話は全て監視される。
この事実は騎士団の中でも限られた人物しかしらないため、ガークレオンもこの事実は知らない。
だから面会中にこんなことを口にすることも出来ていた。
「裁判官の買収は済んだのか?」
「もちろんです。裁判官は無罪を約束してくれました」
当然、この会話も王家側に筒抜けである。
牢とは言っても、ここは客室に近い造りになっていて、出入口には柵ではなく重厚感のある扉になっている。
そして、牢の外の音は全く聞こえないから、彼らは完全に油断することになった。
ちなみに賄賂を渡して裁判官を買収する行為も、法で禁じられている。
しかし下手に取り締まると貴族達の反感を買うこともあるため、迂闊に取り締まることが出来ていないのが現状だ。
「そうか。よくやってくれた。
これで家から追い出されずに済む」
「シルフィーナ様のことはもう良いのですか?」
「彼女のことはもう諦めた。俺に靡くことはもう無いだろうからな」
そんなことを口にするガークレオンは、次にシルフィーナを狙ってしまえば公爵家の長になる道が途絶えると自覚していた。
未練は感じているものの、シルフィーナにはもう勝てない。そのことを身をもって感じていたから。
誤算があるとするなら、裁判官が国王に変わっていることだけ。
それ以外は彼の思惑通りだった。
「左様ですか。では、代わりになる女性を見繕っておきます」
「頼んだ」
無罪になれば廃嫡されることも無くなる。
だから、ガークレオンは自らの思い描く理想の女性を想像して、期待に胸を膨らませていた。
――そんな都合の良い貴族令嬢は居ないというのにも関わらず。
それから数時間後、すっかり陽が落ちた頃にガークレオンの元に一通の手紙が届いた。
「要件はこれだけですので、失礼します」
先ほどとは別のクリムソン家の者は、手紙を置くとすぐに牢を後にした。
普通なら考えられない雑な対応に苛立ちを覚えつつ、ガークレオンは手紙の封を切った。
「父上からか……」
手紙の内容を見ていく内に、少しずつ顔色を悪くしていく。
そこには、彼にとって絶望的な内容が描かれていた。
『結論から先に記す。ガークレオン、お前はもうクリムソン家の者ではない。平民となるお前はただの他人だ』
そんな文章から始まっているから、一目見ただけで絶望するのには十分だったけれど、ガークレオンは希望を捨てずに手紙を読み進めた。
『裁判官を買収しようとしたようだが、お前の裁判は陛下が裁判長を務められる。
賄賂などという無駄な金は、きっちりと請求させてもらう。払えぬなら、例え鉱山であっても働きなさい』
しかし、いくら読み進めても彼にとって不都合なことしか書かれていなかった。
「何故だ……。何故上手くいかない……」
絶望から頭を抱える彼が、己の過ちが原因だと気付くのには時間がかかりそうだった。
逃げ出そうと思えないほど厳重に警備されているこの場所であっても、身体検査を受けた者に限って面会をすることが出来る。
しかし牢の壁には小さな穴があけられており、ここでの会話は全て監視される。
この事実は騎士団の中でも限られた人物しかしらないため、ガークレオンもこの事実は知らない。
だから面会中にこんなことを口にすることも出来ていた。
「裁判官の買収は済んだのか?」
「もちろんです。裁判官は無罪を約束してくれました」
当然、この会話も王家側に筒抜けである。
牢とは言っても、ここは客室に近い造りになっていて、出入口には柵ではなく重厚感のある扉になっている。
そして、牢の外の音は全く聞こえないから、彼らは完全に油断することになった。
ちなみに賄賂を渡して裁判官を買収する行為も、法で禁じられている。
しかし下手に取り締まると貴族達の反感を買うこともあるため、迂闊に取り締まることが出来ていないのが現状だ。
「そうか。よくやってくれた。
これで家から追い出されずに済む」
「シルフィーナ様のことはもう良いのですか?」
「彼女のことはもう諦めた。俺に靡くことはもう無いだろうからな」
そんなことを口にするガークレオンは、次にシルフィーナを狙ってしまえば公爵家の長になる道が途絶えると自覚していた。
未練は感じているものの、シルフィーナにはもう勝てない。そのことを身をもって感じていたから。
誤算があるとするなら、裁判官が国王に変わっていることだけ。
それ以外は彼の思惑通りだった。
「左様ですか。では、代わりになる女性を見繕っておきます」
「頼んだ」
無罪になれば廃嫡されることも無くなる。
だから、ガークレオンは自らの思い描く理想の女性を想像して、期待に胸を膨らませていた。
――そんな都合の良い貴族令嬢は居ないというのにも関わらず。
それから数時間後、すっかり陽が落ちた頃にガークレオンの元に一通の手紙が届いた。
「要件はこれだけですので、失礼します」
先ほどとは別のクリムソン家の者は、手紙を置くとすぐに牢を後にした。
普通なら考えられない雑な対応に苛立ちを覚えつつ、ガークレオンは手紙の封を切った。
「父上からか……」
手紙の内容を見ていく内に、少しずつ顔色を悪くしていく。
そこには、彼にとって絶望的な内容が描かれていた。
『結論から先に記す。ガークレオン、お前はもうクリムソン家の者ではない。平民となるお前はただの他人だ』
そんな文章から始まっているから、一目見ただけで絶望するのには十分だったけれど、ガークレオンは希望を捨てずに手紙を読み進めた。
『裁判官を買収しようとしたようだが、お前の裁判は陛下が裁判長を務められる。
賄賂などという無駄な金は、きっちりと請求させてもらう。払えぬなら、例え鉱山であっても働きなさい』
しかし、いくら読み進めても彼にとって不都合なことしか書かれていなかった。
「何故だ……。何故上手くいかない……」
絶望から頭を抱える彼が、己の過ちが原因だと気付くのには時間がかかりそうだった。
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