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28. 助けに来てくれた人
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あの場所から空を飛んで逃げ出した私は、街道から少し離れたところでこの街がどこにあるのかを調べることから始めた。
今すぐにこの街から離れたいという気持ちはあるけれど、逃げる方向を違えることがあってはいけないから。
聞き込みが出来そうな場所は、空から探したらすぐに見つかった。
でも、人々で賑わっている場所に降りると、周囲の視線を集めることになってしまった。
「お嬢さん、どこかの商会の方ですか? この辺りは治安があまり良くないから、護衛はつけた方がいいですよ」
「心配ありがとうございます。目立たない恰好ではありますけど、護衛はいるので大丈夫ですわ」
「そうですか。余計なことを言ってしまってごめんなさいね」
声をかけてきた老婦人は私のことを心配してくれているみたいだけど、貴族の者とは思われていないみたいだった。
でも、ドレスを身に纏ってる今の恰好だと目立ってしまうことに気付いてしまった。
「私からもお尋ねしてもいいですか?」
「もちろん。私に分かることだったら答えますよ」
「ありがとうございます。この街でおすすめのお土産を教えて欲しいですわ」
王国内の街の名前と特産品の知識は入っているから、怪しまれないようにお土産について問いかけてみる。
でも、私が予想していた言葉とは違う答えが返ってきた。
「私もカーグレスに来るのは初めてだから、お土産は分からないわ」
「そうでしたのね。ありがとうございました」
軽くお礼をしてから、再び空に戻る私。
周囲の人たちが驚いている様子だったけれど、気にしないで離れることにした。
ちなみに、ここカーグレスはクリムソン公爵家が抱えている領地で二番目に栄えている街で、王都からは馬車で二日かかる距離にある。
王都から伸びてきた街道はここで三つに分かれていて、隣国に向かう道とセレスト公爵領へ向かう道、そして五つほどある伯爵家の領地に向かう道に分かれている。
街道整備は王家が中心になって行っているから、どの道も石で整えられていて歩きやすくなっているから、空から見たら街道の場所はすぐに分かった。
最初は王都に真っすぐ向かおうと考えたのだけど……。
「大変だ! なんでか分からないけど王家から騎士団が派遣されてきた! 領主様の息子が捕まった!」
アルバート様が助けに来てくださったのね……!
「なんだって!?」
「場所を教えろ!」
「教えたところで行けないぞ。全部騎士団に封鎖されてる」
騒ぎが下の方から聞こえてきたから、ガークレオン様の手から逃れた場所に戻ることにした。
あの場所にアルバート様がいると信じて。
でも、その場所には私が乗せられていたもの以外の馬車は見当たらなかった。
代わりに縄で縛られ拘束されているガークレオン様の姿と、王家直属の騎士団の方々が制圧している様子しか見えない。
アルバート様の姿だって見えなかった。
でも、彼の魔力の気配だけは感じられたから、私はゆっくり地面に降りていった。
「上だ!」
「殿下! 空にいました!」
まだ周りに建物の屋根よりも高い場所にいるのに、もう気付かれたらしい。
その直後、アルバート様の声が聞こえてきた。
「分かった。
待て、全員空を見るな! 見続けたら後で罰する!」
どうして空を……?
一瞬疑問に思ったけれど、その理由はすぐに分かった。
下からだとスカートの中が……。
慌てて近くの屋根に乗って視線を遮ったけれど、もう手遅れな気がした。
「無事で良かったよ」
ふわふわと私の前に浮かんできたアルバート様が手を差し出してくる。
彼は浮かぶだけで移動は出来ないから、その手を引き寄せる私。
「中、見ましたか……?」
「いや、僕の場所からは見えなかった。でも、真下からだと見えると思ったから、咄嗟に見るなと指示を出したんだ」
「そうでしたのね。良かったですわ」
「本当に良かったよ。シルフィーナが無事で」
そんな言葉をかけられたと思ったら、抱きしめられていた。
私もアルバート様の背中に手を回す。
でも……そうしていたら、今まで耐えられていた恐怖心が一気にこみ上げてしまって。
涙を堪えることなんて出来なかった。
今すぐにこの街から離れたいという気持ちはあるけれど、逃げる方向を違えることがあってはいけないから。
聞き込みが出来そうな場所は、空から探したらすぐに見つかった。
でも、人々で賑わっている場所に降りると、周囲の視線を集めることになってしまった。
「お嬢さん、どこかの商会の方ですか? この辺りは治安があまり良くないから、護衛はつけた方がいいですよ」
「心配ありがとうございます。目立たない恰好ではありますけど、護衛はいるので大丈夫ですわ」
「そうですか。余計なことを言ってしまってごめんなさいね」
声をかけてきた老婦人は私のことを心配してくれているみたいだけど、貴族の者とは思われていないみたいだった。
でも、ドレスを身に纏ってる今の恰好だと目立ってしまうことに気付いてしまった。
「私からもお尋ねしてもいいですか?」
「もちろん。私に分かることだったら答えますよ」
「ありがとうございます。この街でおすすめのお土産を教えて欲しいですわ」
王国内の街の名前と特産品の知識は入っているから、怪しまれないようにお土産について問いかけてみる。
でも、私が予想していた言葉とは違う答えが返ってきた。
「私もカーグレスに来るのは初めてだから、お土産は分からないわ」
「そうでしたのね。ありがとうございました」
軽くお礼をしてから、再び空に戻る私。
周囲の人たちが驚いている様子だったけれど、気にしないで離れることにした。
ちなみに、ここカーグレスはクリムソン公爵家が抱えている領地で二番目に栄えている街で、王都からは馬車で二日かかる距離にある。
王都から伸びてきた街道はここで三つに分かれていて、隣国に向かう道とセレスト公爵領へ向かう道、そして五つほどある伯爵家の領地に向かう道に分かれている。
街道整備は王家が中心になって行っているから、どの道も石で整えられていて歩きやすくなっているから、空から見たら街道の場所はすぐに分かった。
最初は王都に真っすぐ向かおうと考えたのだけど……。
「大変だ! なんでか分からないけど王家から騎士団が派遣されてきた! 領主様の息子が捕まった!」
アルバート様が助けに来てくださったのね……!
「なんだって!?」
「場所を教えろ!」
「教えたところで行けないぞ。全部騎士団に封鎖されてる」
騒ぎが下の方から聞こえてきたから、ガークレオン様の手から逃れた場所に戻ることにした。
あの場所にアルバート様がいると信じて。
でも、その場所には私が乗せられていたもの以外の馬車は見当たらなかった。
代わりに縄で縛られ拘束されているガークレオン様の姿と、王家直属の騎士団の方々が制圧している様子しか見えない。
アルバート様の姿だって見えなかった。
でも、彼の魔力の気配だけは感じられたから、私はゆっくり地面に降りていった。
「上だ!」
「殿下! 空にいました!」
まだ周りに建物の屋根よりも高い場所にいるのに、もう気付かれたらしい。
その直後、アルバート様の声が聞こえてきた。
「分かった。
待て、全員空を見るな! 見続けたら後で罰する!」
どうして空を……?
一瞬疑問に思ったけれど、その理由はすぐに分かった。
下からだとスカートの中が……。
慌てて近くの屋根に乗って視線を遮ったけれど、もう手遅れな気がした。
「無事で良かったよ」
ふわふわと私の前に浮かんできたアルバート様が手を差し出してくる。
彼は浮かぶだけで移動は出来ないから、その手を引き寄せる私。
「中、見ましたか……?」
「いや、僕の場所からは見えなかった。でも、真下からだと見えると思ったから、咄嗟に見るなと指示を出したんだ」
「そうでしたのね。良かったですわ」
「本当に良かったよ。シルフィーナが無事で」
そんな言葉をかけられたと思ったら、抱きしめられていた。
私もアルバート様の背中に手を回す。
でも……そうしていたら、今まで耐えられていた恐怖心が一気にこみ上げてしまって。
涙を堪えることなんて出来なかった。
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