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22. 感覚の正体
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あの後、私に対して慰謝料を支払うように要求するために、正式な文書が送られた。
慰謝料の支払いがされなかったら本当に対立が起こってしまうけれど、もう仕方ないことだと割り切ることにしている。
レベッカはというと、本当に殿方全員が怖くなってしまったみたいで、お父様相手でも少し怯えている様子だった。
すごく複雑な気持ちだけれど、今のレベッカは私しか頼る人がいない状況になってしまっている。
見捨ててもいいのだけど、突き放すことなんて出来なかった。
アルバート様は「見捨てたら恨まれるかもしれない」と言っていたから、これで正解だと思っている。
でも、お父様に対しては複雑な気持ちのまま。
「お父様、私のことはどう思っているのですか?」
「もちろん大切に思っているよ」
「では、何故私が辛い思いをしていても仕事を優先していたのですか?」
「家の面目が立たなかったら、シルフィーナにも悪いと思っていたんだ。それで傷付けてしまったのなら、申し訳ない」
そんな会話をしたのだけど、どうしても私よりも家のことを大切に思っているものと感じてしまった。
あの時、私のことを顧みてくれていたら、こんな大変なことにはならなかったのに……。
でも、過去のことばかり見ていても何も出来ないのよね……。
だから、今はアルバート様との時間を大切にしていこうと思っている。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
昨日はアルバート様の部屋でお茶をしていたから、今日は私の部屋でお茶をすることに決めているのだけど……。
「何か嫌なことでもありましたの?」
「ああ、父上にこっ酷く叱られてね。何故目の前でシルフィーナに復縁を迫られても黙っていたんだって。
僕からも文句を言うべきだった。あの時は何も出来なくて済まなかかった」
「一緒に居てもらえるだけで心強かったのですから、大丈夫ですわ。でも、次は私と一緒に戦って頂けると嬉しいです」
彼の謝罪に、そんな言葉を返す私。
アルバート様は少し表情を緩めてから、こう口にした。
「分かった。必ず一緒に戦うと誓うよ」
「ありがとうございます。心強いですわ」
笑顔を浮かべて、お礼を口にする私。
それからお茶の用意をアルバート様と一緒に進めたのだけど……。
「アルバート殿下、シルフィーナ様。お知らせしたいことがありますので、入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。鍵は開いているわ」
アルバート様と頷き合ってから許可を出す。
それからすぐに部屋に入ってきた侍女さんは、こんな恐ろしいことを口にした。
「セレスト公爵夫人がシルフィーナ様に会わせるようにと王城前に来ていますが、如何なさいますか?」
「追い返せ。いや、決して戻って来れぬように、丁寧に馬車に乗せて送り返すように」
私が答えを出すよりも早く、そんなことを口にするアルバート様。
お義母様には絶対に会いたくなかったから、この答えは嬉しかった。
「承知しました。では、失礼致します」
一礼してから部屋を後にする侍女さん。
お義母様が王宮に入ることは出来ないはずなのだけれど、少しだけ嫌な感覚を覚えた。
でも、その感覚もすぐになくなったから、すっかり陽が落ちるまでアルバート様とのお茶を楽しむことが出来た。
☆
その夜。
私はまた夢を見た。
六人の精霊さん達に囲まれて、魔法を教えてもらう夢。
「今教えたのはね、魔法じゃなくて呪いだよ」
「呪い……?」
「うん。幻惑を見せたりするための呪い。悪魔と契約しないと人間には絶対に使えないんだ。でも、対策はあるから安心してね?」
中々扱えなくて苦戦していたら、そもそも私には使えないものだったみたい。
でも、幻惑以外にも、一時的に昏睡させたり、首を絞められた時のような苦しみを与えられたり……とにかく恐ろしいものばかりだった。
精霊さん達は悪魔と契約しなくても呪いを扱えるみたいで、どんなものなのか詳しく教えてくれた。
呪いは発動まで時間がかかること、魔法が使われていないのに魔力の流れが起きていること、精霊の加護を持っていたら嫌な感覚が起こること。
精霊さん達と私達人間とでは感覚が違うみたいで、言葉にして説明することは出来ないらしい。
でも、直前に嫌な感覚を覚えていたことを思い出して、怖くなってしまった。
「シルフィーナが思った通りだよ」
「今ね、この王宮の人達に呪いがかけられてるの」
「眠って起きれなくなる呪いだよ」
「対策は、光の精神防御魔法だけだよ」
「発動の瞬間にかけ続けていないと効果は無いわ」
次々と口にされる危機に、頭を抱えたくなってしまう。
対策はあるけれど……精神防御の魔法は使用者と触れている人にしか効果が無いというのが厄介なところ。
そして、呪いがいつ発動するのかは、精霊さん達にも分からないらしかった。
「どうすればいいの?」
「僕たちはね、シルフィーナが無事なら何でもいいんだけど、守りたい人がいたら手を離さないで」
「そう、分かったわ。忠告ありがとう」
そう口にした時、夢が途切れた。
目を開けると、すっかり見慣れた天井が視界に映る。
外はまだ陽が登る前で、薄暗かった。
慰謝料の支払いがされなかったら本当に対立が起こってしまうけれど、もう仕方ないことだと割り切ることにしている。
レベッカはというと、本当に殿方全員が怖くなってしまったみたいで、お父様相手でも少し怯えている様子だった。
すごく複雑な気持ちだけれど、今のレベッカは私しか頼る人がいない状況になってしまっている。
見捨ててもいいのだけど、突き放すことなんて出来なかった。
アルバート様は「見捨てたら恨まれるかもしれない」と言っていたから、これで正解だと思っている。
でも、お父様に対しては複雑な気持ちのまま。
「お父様、私のことはどう思っているのですか?」
「もちろん大切に思っているよ」
「では、何故私が辛い思いをしていても仕事を優先していたのですか?」
「家の面目が立たなかったら、シルフィーナにも悪いと思っていたんだ。それで傷付けてしまったのなら、申し訳ない」
そんな会話をしたのだけど、どうしても私よりも家のことを大切に思っているものと感じてしまった。
あの時、私のことを顧みてくれていたら、こんな大変なことにはならなかったのに……。
でも、過去のことばかり見ていても何も出来ないのよね……。
だから、今はアルバート様との時間を大切にしていこうと思っている。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
昨日はアルバート様の部屋でお茶をしていたから、今日は私の部屋でお茶をすることに決めているのだけど……。
「何か嫌なことでもありましたの?」
「ああ、父上にこっ酷く叱られてね。何故目の前でシルフィーナに復縁を迫られても黙っていたんだって。
僕からも文句を言うべきだった。あの時は何も出来なくて済まなかかった」
「一緒に居てもらえるだけで心強かったのですから、大丈夫ですわ。でも、次は私と一緒に戦って頂けると嬉しいです」
彼の謝罪に、そんな言葉を返す私。
アルバート様は少し表情を緩めてから、こう口にした。
「分かった。必ず一緒に戦うと誓うよ」
「ありがとうございます。心強いですわ」
笑顔を浮かべて、お礼を口にする私。
それからお茶の用意をアルバート様と一緒に進めたのだけど……。
「アルバート殿下、シルフィーナ様。お知らせしたいことがありますので、入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。鍵は開いているわ」
アルバート様と頷き合ってから許可を出す。
それからすぐに部屋に入ってきた侍女さんは、こんな恐ろしいことを口にした。
「セレスト公爵夫人がシルフィーナ様に会わせるようにと王城前に来ていますが、如何なさいますか?」
「追い返せ。いや、決して戻って来れぬように、丁寧に馬車に乗せて送り返すように」
私が答えを出すよりも早く、そんなことを口にするアルバート様。
お義母様には絶対に会いたくなかったから、この答えは嬉しかった。
「承知しました。では、失礼致します」
一礼してから部屋を後にする侍女さん。
お義母様が王宮に入ることは出来ないはずなのだけれど、少しだけ嫌な感覚を覚えた。
でも、その感覚もすぐになくなったから、すっかり陽が落ちるまでアルバート様とのお茶を楽しむことが出来た。
☆
その夜。
私はまた夢を見た。
六人の精霊さん達に囲まれて、魔法を教えてもらう夢。
「今教えたのはね、魔法じゃなくて呪いだよ」
「呪い……?」
「うん。幻惑を見せたりするための呪い。悪魔と契約しないと人間には絶対に使えないんだ。でも、対策はあるから安心してね?」
中々扱えなくて苦戦していたら、そもそも私には使えないものだったみたい。
でも、幻惑以外にも、一時的に昏睡させたり、首を絞められた時のような苦しみを与えられたり……とにかく恐ろしいものばかりだった。
精霊さん達は悪魔と契約しなくても呪いを扱えるみたいで、どんなものなのか詳しく教えてくれた。
呪いは発動まで時間がかかること、魔法が使われていないのに魔力の流れが起きていること、精霊の加護を持っていたら嫌な感覚が起こること。
精霊さん達と私達人間とでは感覚が違うみたいで、言葉にして説明することは出来ないらしい。
でも、直前に嫌な感覚を覚えていたことを思い出して、怖くなってしまった。
「シルフィーナが思った通りだよ」
「今ね、この王宮の人達に呪いがかけられてるの」
「眠って起きれなくなる呪いだよ」
「対策は、光の精神防御魔法だけだよ」
「発動の瞬間にかけ続けていないと効果は無いわ」
次々と口にされる危機に、頭を抱えたくなってしまう。
対策はあるけれど……精神防御の魔法は使用者と触れている人にしか効果が無いというのが厄介なところ。
そして、呪いがいつ発動するのかは、精霊さん達にも分からないらしかった。
「どうすればいいの?」
「僕たちはね、シルフィーナが無事なら何でもいいんだけど、守りたい人がいたら手を離さないで」
「そう、分かったわ。忠告ありがとう」
そう口にした時、夢が途切れた。
目を開けると、すっかり見慣れた天井が視界に映る。
外はまだ陽が登る前で、薄暗かった。
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