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9. 完治の方法
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それから少しして、王宮に戻った私達は国王陛下の執務室に来ていた。
ここには執務用の机のほかに、来客対応ができるテーブルとソファも用意されていて、今はそこに腰掛けている。
この場には、国王陛下夫妻とアルバート様と私だけではなく、王宮お抱えのお医者様も姿を見せている。
昨日アルバート様から聞いていた通りなら、この場でお医者様から病気の状態について説明があるらしい。
「それでは、まずは結論から申し上げます」
陛下の合図の後、口を開いたお医者様。
その口から厳かな口調で語られたのは、こんな内容だった。
「今のところは、殿下の病の症状は落ち着いています。ですが、治ってはいません。一時的に落ち着いているだけですが、最初に説明した通り、この病は症状が出ていなければ命を蝕むことはありません。
このまま落ち着いていれば、半年以上生きることが出来るでしょう」
アルバート様の病が落ち着いている理由は、精霊さん達のお陰に違いない。
だから、今度お話出来るときが来たら、しっかりお礼をしようと心に決めた。
「何か質問はございますか?」
「完治の可能性は、まだ無いのですか?」
「残念ながら、今の医学や魔法学では治すことは出来ません」
「……分かりましたわ」
間を置いてから頷く王妃様。アルバート様の病を受け入れられていないという話は本当らしかった。
今の私には、精霊さんにお願いし続けて、加護の力で完治する奇跡を信じることしか出来ない。私のせいではないけれど、申し訳なさと悔しさを感じてしまう。
「治す方法が無いわけではありません。
精霊の愛し子の殿下なら、精霊の加護を得て完治させることも不可能ではないでしょう。ですが、それは我々医者に出来ることではありません」
「分かっていたことだが、奇跡を信じるしかないのだな」
「左様です。力不足で申し訳ありません」
「貴殿の責ではない。感謝はしても、責を問うことは無い」
そんなやり取りの後、お医者様はアルバート様の病を抑える魔法薬を置いてこの場を後にした。
家族水入らずで話をしたいそうで、私も退室することになったのだけど……。
扉を閉める直前に王妃様のすすり泣く声が聞こえてきて、目頭が熱くなるのを感じた。
あれから数分、王宮内の私室に戻ろうと廊下を進む私の元に侍女さんが駆け寄ってきた。
「シルフィーナ様、公爵家から急いで来てほしいとの連絡が入りました」
「……お父様に何かあったのね?」
侍女さんの言葉を聞いて、最悪の事態を想像してしまう。
屋敷で何か大きな問題が起きたら、基本的にお父様が呼ばれることになっている。
けれども、例外もある。お父様に何かあった時は、私やお兄様達が呼び出される。
だから、何を聞かされても取り乱さないように、覚悟を決めてから問い返した。
「詳細は伝えられていませんので、分かりかねます。
それ程の緊急事態なのでしょう。可能性もあります。どうかお気をつけて」
「分かったわ。伝えてくれてありがとう」
馬車と護衛の準備は出来ていると聞いたから、アルバート様にこのことを伝えてから屋敷に向かうことに決めた。
「シルフィーナです。アルバート様に急ぎお伝えすることがありますので、入室の許可をお願いします」
執務室の扉をノックして入室の許可を求めると、すぐに部屋の扉が開けられる。
「何があった?」
「さっき侍女から伝えられたのですけど……」
扉を開けたのがアルバート様だったから、すぐに状況を説明する私。
それを聞いた彼は、一度執務室の中に戻ると陛下にもそのことを話していた。
公爵家は国政にも大きく関わっているから、公爵家の危機は王国の危機と言われることも多い。
だから陛下に報告するのは当然のこと。
でも、アルバート様が陛下から剣を渡されたところを見て、私は驚きを隠せずにいた。
その剣が世界で一振りしか存在しない聖剣と呼ばれているものだったから。
ちなみに、聖杖と呼ばれている魔法具も存在していて、どちらも使用者や他の誰かを守るときに力を発揮するらしい。
そんな剣を託されるような事態だと改めて感じさせられて、少しだけ怖くなってしまった。
「必ず二人で帰って来るように」
「はい。必ず二人で無事に戻ってきます」
戦場に向かう前のようなやり取り。
でも、アルバート様が隣にいるから。覚悟を決めることが出来た。
ここには執務用の机のほかに、来客対応ができるテーブルとソファも用意されていて、今はそこに腰掛けている。
この場には、国王陛下夫妻とアルバート様と私だけではなく、王宮お抱えのお医者様も姿を見せている。
昨日アルバート様から聞いていた通りなら、この場でお医者様から病気の状態について説明があるらしい。
「それでは、まずは結論から申し上げます」
陛下の合図の後、口を開いたお医者様。
その口から厳かな口調で語られたのは、こんな内容だった。
「今のところは、殿下の病の症状は落ち着いています。ですが、治ってはいません。一時的に落ち着いているだけですが、最初に説明した通り、この病は症状が出ていなければ命を蝕むことはありません。
このまま落ち着いていれば、半年以上生きることが出来るでしょう」
アルバート様の病が落ち着いている理由は、精霊さん達のお陰に違いない。
だから、今度お話出来るときが来たら、しっかりお礼をしようと心に決めた。
「何か質問はございますか?」
「完治の可能性は、まだ無いのですか?」
「残念ながら、今の医学や魔法学では治すことは出来ません」
「……分かりましたわ」
間を置いてから頷く王妃様。アルバート様の病を受け入れられていないという話は本当らしかった。
今の私には、精霊さんにお願いし続けて、加護の力で完治する奇跡を信じることしか出来ない。私のせいではないけれど、申し訳なさと悔しさを感じてしまう。
「治す方法が無いわけではありません。
精霊の愛し子の殿下なら、精霊の加護を得て完治させることも不可能ではないでしょう。ですが、それは我々医者に出来ることではありません」
「分かっていたことだが、奇跡を信じるしかないのだな」
「左様です。力不足で申し訳ありません」
「貴殿の責ではない。感謝はしても、責を問うことは無い」
そんなやり取りの後、お医者様はアルバート様の病を抑える魔法薬を置いてこの場を後にした。
家族水入らずで話をしたいそうで、私も退室することになったのだけど……。
扉を閉める直前に王妃様のすすり泣く声が聞こえてきて、目頭が熱くなるのを感じた。
あれから数分、王宮内の私室に戻ろうと廊下を進む私の元に侍女さんが駆け寄ってきた。
「シルフィーナ様、公爵家から急いで来てほしいとの連絡が入りました」
「……お父様に何かあったのね?」
侍女さんの言葉を聞いて、最悪の事態を想像してしまう。
屋敷で何か大きな問題が起きたら、基本的にお父様が呼ばれることになっている。
けれども、例外もある。お父様に何かあった時は、私やお兄様達が呼び出される。
だから、何を聞かされても取り乱さないように、覚悟を決めてから問い返した。
「詳細は伝えられていませんので、分かりかねます。
それ程の緊急事態なのでしょう。可能性もあります。どうかお気をつけて」
「分かったわ。伝えてくれてありがとう」
馬車と護衛の準備は出来ていると聞いたから、アルバート様にこのことを伝えてから屋敷に向かうことに決めた。
「シルフィーナです。アルバート様に急ぎお伝えすることがありますので、入室の許可をお願いします」
執務室の扉をノックして入室の許可を求めると、すぐに部屋の扉が開けられる。
「何があった?」
「さっき侍女から伝えられたのですけど……」
扉を開けたのがアルバート様だったから、すぐに状況を説明する私。
それを聞いた彼は、一度執務室の中に戻ると陛下にもそのことを話していた。
公爵家は国政にも大きく関わっているから、公爵家の危機は王国の危機と言われることも多い。
だから陛下に報告するのは当然のこと。
でも、アルバート様が陛下から剣を渡されたところを見て、私は驚きを隠せずにいた。
その剣が世界で一振りしか存在しない聖剣と呼ばれているものだったから。
ちなみに、聖杖と呼ばれている魔法具も存在していて、どちらも使用者や他の誰かを守るときに力を発揮するらしい。
そんな剣を託されるような事態だと改めて感じさせられて、少しだけ怖くなってしまった。
「必ず二人で帰って来るように」
「はい。必ず二人で無事に戻ってきます」
戦場に向かう前のようなやり取り。
でも、アルバート様が隣にいるから。覚悟を決めることが出来た。
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