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第2章
63. お屋敷改造します
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すっかり使用人さん達も一緒に食事をとるのが定着して、私とグレン様の二人だけで食事をとっていた時よりも賑やかになっている、
同時に情報交換や今日の予定の確認なんかもされているけれど、大事なお話の時は静かにすることも徹底されているから、聞き逃したりはしない。
でも、今日はもう大事な情報は全員に渡っているから、ずっと賑やかなまま食事を終えることが出来た。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかったわ」
「お褒め頂き光栄でございます」
「お昼も楽しみにしているわ」
斜め向かい側に座っている料理長さんにお礼を言って、席を立つ私。
これから魔道具を作る準備をしなくちゃいけないから、まずは書庫に入ってとある魔法について調べることにした。
アルタイス家の書庫は魔法に関する資料だけで言えば王国の貴族の中で一番多いのだけど、ここカストゥラ公爵邸の書庫もほとんど劣らないくらいの数が揃っている。
だから、何もない状態から金属を生み出せるという錬金術の資料も置いてある。
ちなみに、錬金術は金も作れてしまうから、その資料は禁書に指定されている。
金を容易に作れたら、貨幣の価値を大きく変えることが出来てしまって、経済を混乱させられる。
だからどの国でも資料の閲覧には制限がある。
そうは言っても錬金術を使えるのは全属性に適性がある人だけだから、禁術にはなっていないのよね。
誰も扱えないから禁止するものでもない。そういうことらしい。
ここで私が金を生み出したら色々問題になりそうだから、今回は鉄しか作らない。
錬金術は思い描いた形通りの金属を生み出せるものだから、魔道具の試作には丁度いいのよね。
禁書だからアルタイス家には無かったけれど、昨日グレン様から教えてられて初めて存在を知った。
「奥様、ありましたか?」
「ええ。今から覚えるから、少し待ってて」
「畏まりました」
ちなみに、禁書庫に立ち入る権限はグレン様から許可された人しか持っていなくて、今は義両親と私、それに執事長しか立ち入ることが出来ない。
だからカチーナには禁書庫に繋がる扉の前で待ってもらっている。
持ち出しも禁止だから、ここで覚えないといけないのよね。
でも、想像していたよりは簡単だったから、数分もあれば全部理解できた。
試しに小さな鉄の指輪を作ってみると、思い描いていたのと全く同じものが現れた。
これで試作も捗りそうだわ。
「お待たせ」
「早かったですね?」
「思っていたよりも簡単だったの」
サイズもピッタリな指輪を嵌めてから、部屋の外に出る私。
これに小さな魔法陣を刻めば魔道具にもなるのだけど、鉄は錆びてしまうから長持ちはしないのよね。
だから、この指輪は鋳造所に量産を依頼する時の材料にしてもらおうと思っている。
「そうだったんですね。でも、奥様しか扱えないのですよね?」
「ええ。しっかり全部の属性使うようになっていたわ」
私がそう告げると、カチーナは少し残念そうにしていた。
◇
お昼過ぎ。
私が魔道具の試作品を完成させたことはあっという間にお屋敷中に知れ渡った。
今回作った魔道具は、何かが燃えたりしないように物を温めるだけの火魔法と風魔法を組み合わせたもの。
試す前の準備で氷魔法で部屋を冷やしているから、凍えるような寒さになっているのに、試すために移動してきた空き部屋には使用人さん達が大勢集まっている。
防衛体制の視察に行っているグレン様は居ないけれど、みんな期待の籠った視線を私が作ったばかりの四角い箱に向けられている。
「これが部屋を暖める魔道具……」
「穴が開いているから、そこから火が出るのでしょうか?」
「例の髪を乾かす魔道具と同じだと予想します」
みんなが色々な予想をしている間に、私は魔道具に魔力を流していく。
すると魔道具に空いている穴から温かい風が吹き出して、私の足元を撫でていった。
「少し風の音がしますね」
「やはり髪を乾かす魔道具と同じ仕組みでしたね」
「これ、風の向きを変えられるような羽が欲しいですね。
そうすれば、自分が居る場所をしっかり温められます!」
意見も出てきているけれど、数分の間で部屋が心地良い温かさになった。
「暖炉よりも効率的かもしれませんね」
「この短時間で温まるなら、羽は要らないかもしれません」
「今から冬が楽しみです!」
まだ試作なのに、みんな大喜びしてくれている。
それが嬉しくて、つい頬が緩みそうになってしまった。
「これ、馬車にも欲しいです!」
「むしろ先に馬車用に作るべきでしょう。冬場は雪で馬車での移動が難しくなりますが、これがあれば安全に移動できます」
「確かに、今の状況を考えると、冬場でも凍死の危険無く移動できる馬車は欲しいですね。
この温かい風を馬にも当てれば、かなり変わるでしょう」
けれども、話は少し予想外の方向に進んでいて、お屋敷の中に先に置くべきだと言う侍女さん達と、馬車に置くべきだと言う護衛さん達の間に火花が散った気がした。
「冬までに揃えられるようにするから、争わないで大丈夫よ?」
「「ですが、それでは奥様の負担になってしまいます!」」
そんな時、庭師さんが口を挟んできた。
「とりあえず、屋敷には一つあれば十分でしょう。
工事は必要になりますが、庭園と同じように管を繋げば解決します。全部の部屋を暖められて、奥様の負担も下がる。これ以上の解決方法は無いでしょう」
庭師さん達の意見のお陰で、火花もどこかに消えていって、私は馬車の数にお屋敷用の二つを加えた数だけ作ることに決まった。
これからは少し忙しくなりそうだけど、お屋敷がどんな風に変わるのかすごく楽しみだわ。
同時に情報交換や今日の予定の確認なんかもされているけれど、大事なお話の時は静かにすることも徹底されているから、聞き逃したりはしない。
でも、今日はもう大事な情報は全員に渡っているから、ずっと賑やかなまま食事を終えることが出来た。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかったわ」
「お褒め頂き光栄でございます」
「お昼も楽しみにしているわ」
斜め向かい側に座っている料理長さんにお礼を言って、席を立つ私。
これから魔道具を作る準備をしなくちゃいけないから、まずは書庫に入ってとある魔法について調べることにした。
アルタイス家の書庫は魔法に関する資料だけで言えば王国の貴族の中で一番多いのだけど、ここカストゥラ公爵邸の書庫もほとんど劣らないくらいの数が揃っている。
だから、何もない状態から金属を生み出せるという錬金術の資料も置いてある。
ちなみに、錬金術は金も作れてしまうから、その資料は禁書に指定されている。
金を容易に作れたら、貨幣の価値を大きく変えることが出来てしまって、経済を混乱させられる。
だからどの国でも資料の閲覧には制限がある。
そうは言っても錬金術を使えるのは全属性に適性がある人だけだから、禁術にはなっていないのよね。
誰も扱えないから禁止するものでもない。そういうことらしい。
ここで私が金を生み出したら色々問題になりそうだから、今回は鉄しか作らない。
錬金術は思い描いた形通りの金属を生み出せるものだから、魔道具の試作には丁度いいのよね。
禁書だからアルタイス家には無かったけれど、昨日グレン様から教えてられて初めて存在を知った。
「奥様、ありましたか?」
「ええ。今から覚えるから、少し待ってて」
「畏まりました」
ちなみに、禁書庫に立ち入る権限はグレン様から許可された人しか持っていなくて、今は義両親と私、それに執事長しか立ち入ることが出来ない。
だからカチーナには禁書庫に繋がる扉の前で待ってもらっている。
持ち出しも禁止だから、ここで覚えないといけないのよね。
でも、想像していたよりは簡単だったから、数分もあれば全部理解できた。
試しに小さな鉄の指輪を作ってみると、思い描いていたのと全く同じものが現れた。
これで試作も捗りそうだわ。
「お待たせ」
「早かったですね?」
「思っていたよりも簡単だったの」
サイズもピッタリな指輪を嵌めてから、部屋の外に出る私。
これに小さな魔法陣を刻めば魔道具にもなるのだけど、鉄は錆びてしまうから長持ちはしないのよね。
だから、この指輪は鋳造所に量産を依頼する時の材料にしてもらおうと思っている。
「そうだったんですね。でも、奥様しか扱えないのですよね?」
「ええ。しっかり全部の属性使うようになっていたわ」
私がそう告げると、カチーナは少し残念そうにしていた。
◇
お昼過ぎ。
私が魔道具の試作品を完成させたことはあっという間にお屋敷中に知れ渡った。
今回作った魔道具は、何かが燃えたりしないように物を温めるだけの火魔法と風魔法を組み合わせたもの。
試す前の準備で氷魔法で部屋を冷やしているから、凍えるような寒さになっているのに、試すために移動してきた空き部屋には使用人さん達が大勢集まっている。
防衛体制の視察に行っているグレン様は居ないけれど、みんな期待の籠った視線を私が作ったばかりの四角い箱に向けられている。
「これが部屋を暖める魔道具……」
「穴が開いているから、そこから火が出るのでしょうか?」
「例の髪を乾かす魔道具と同じだと予想します」
みんなが色々な予想をしている間に、私は魔道具に魔力を流していく。
すると魔道具に空いている穴から温かい風が吹き出して、私の足元を撫でていった。
「少し風の音がしますね」
「やはり髪を乾かす魔道具と同じ仕組みでしたね」
「これ、風の向きを変えられるような羽が欲しいですね。
そうすれば、自分が居る場所をしっかり温められます!」
意見も出てきているけれど、数分の間で部屋が心地良い温かさになった。
「暖炉よりも効率的かもしれませんね」
「この短時間で温まるなら、羽は要らないかもしれません」
「今から冬が楽しみです!」
まだ試作なのに、みんな大喜びしてくれている。
それが嬉しくて、つい頬が緩みそうになってしまった。
「これ、馬車にも欲しいです!」
「むしろ先に馬車用に作るべきでしょう。冬場は雪で馬車での移動が難しくなりますが、これがあれば安全に移動できます」
「確かに、今の状況を考えると、冬場でも凍死の危険無く移動できる馬車は欲しいですね。
この温かい風を馬にも当てれば、かなり変わるでしょう」
けれども、話は少し予想外の方向に進んでいて、お屋敷の中に先に置くべきだと言う侍女さん達と、馬車に置くべきだと言う護衛さん達の間に火花が散った気がした。
「冬までに揃えられるようにするから、争わないで大丈夫よ?」
「「ですが、それでは奥様の負担になってしまいます!」」
そんな時、庭師さんが口を挟んできた。
「とりあえず、屋敷には一つあれば十分でしょう。
工事は必要になりますが、庭園と同じように管を繋げば解決します。全部の部屋を暖められて、奥様の負担も下がる。これ以上の解決方法は無いでしょう」
庭師さん達の意見のお陰で、火花もどこかに消えていって、私は馬車の数にお屋敷用の二つを加えた数だけ作ることに決まった。
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