40 / 100
第1章
40. 闇医者のようです
しおりを挟む
「良い話をしているところ申し訳ないが、病の元を辿るために協力してもらいたい」
私達の話が少し途切れたところで、そんなことを口にするグレン様。
すると、村の人はこんなことを口にした。
「元々、我々の村はこの辺りの村としか交流がありません。
他の村も同様ですが、先週は王都から返ってきた者が居ました」
「交流が無いというのは、街との往来が無いという事だな?」
村の人の発言に対して、そう問いかけるグレン様。
今の言葉で意味は分かっていたみたいだけど、念のための確認みたい。
「はい。しかし、先週は王都から返ってきた者が居まして……」
「その者は、王都で病に罹ったところを聖女パメラ様に治して頂いたそうなのです。
しかし、どう見ても病は治っていませんでした。顔色が悪いのに、元気に振舞っていました。
不思議だったのは、本人が無理をしている自覚が無かったんです」
その言葉を聞いて、不穏な空気を感じてしまう私。
この病が治らないまま無理をして、一週間経ったということは……。
「我々が休ませたので、幸いにも彼は自力で回復しましたが、そこから病が広まったのです」
最悪の状況を想像してしまったけれど、無事で良かったわ。
けれども一歩間違っていたら取り返しのつかない事になっていたから、この自覚症状が無い状態の原因は探った方が良さそうだ。
「なるほど。病の自覚が無くなったのか。
その人物に会う事は出来るか?」
「はい。呼んできます」
グレン様も同じ考えになったみたいで、その人を呼ぶように指示を出した。
「お待たせしました。彼が王都から帰ってきた者です」
紹介された人からは、人の感覚を狂わせる魔法――幻惑魔法の気配を感じた。
きっと、この魔法で症状を感じられなくなっていたのね。
痛みも苦痛も感じられない状態だから、足の指の骨が折れているのにも気付いていないみたい。
「幻惑の魔法……」
「レイラ、それは本当か?」
うっかり出てしまった私の呟きはグレン様に聞こえてしまっていて、問い返されてしまった。
治癒魔法をかけながら、問いかけに答えようとする。
「はい。私の感覚が違えたことはありませんから、間違いは無いと思います」
「そうか。
君はパメラに治癒魔法をかけて貰ったそうだが、パメラは平民には治癒魔法をかけてくれないはずだ。
一体、どんな手を使った? もしくは、その聖女が偽物か、だ」
グレン様は他の違和感に気付いたみたいで、そんな問いかけをしている。
言われてみれば、あのパメラ様が彼のような平民を治すことを受け入れるとは思えない。
事実として病は治せないから、何もしていないみたいだけど……。
「実はとある商会に貢献をして、大金があったんです。
病を理由に辞めることになったんですが、大金を払えばどんな怪我や病も治してもらえることを耳にしたんです。
まさか、平民の私が王宮に入ることになるとは思いませんでした」
「それなら、偽物の可能性は低そうだ。
あまり考えたくないが、パメラは病を治したと偽って、幻惑の魔法をかけて誤魔化していたことになるな」
「闇医者と同じ手口ですわね……」
一瞬何もしていないと思ったけれど、何もしないよりも酷いことをしていたみたい。
こんなことが許されるだなんて、今の王家は何を考えているのかしら?
グレン様も酷い表情を浮かべて王都の方を睨みつけている。
「これを指示したのが王家なのかは知らないが、今後は王都との往来を無くそう。
情報感謝する。また何かあったら来るが、出迎えは最低限で良い。
俺達はこれから他の街に指示をしに行くから、これで失礼する」
「分かりました。
レイラ様、本当にありがとうございました!」
簡単な挨拶を交わして、私達はブランの背中に乗って村を後にした。
眩しい太陽を直視しないように後ろを向く私。
みるみる離れていく地面と、私から少し離れたところに座っているグレン様が目に入る。
彼も後ろを見ていて目は合わなかったけれど、お願いしたいことがあったから彼に近付いてから口を開いた。
「グレン様。
すぐに終わるのでアルタイス邸に寄っても良いでしょうか?」
「分かった。義父上にこのことを伝えるのだな?」
「ええ。流行り病を領地に入れる訳にはいきませんから」
私の家なら上手く対策出来るはずだけれど、初動は早い方が良いのよね。
だから、ブランに急いでアルタイス邸に向かうようにお願いした。
「しっかり掴まっててね」
「うん」
「ああ」
直後、普段は感じられない加速感に襲われる。
「うわああああ!?」
「グレン様、叫びすぎです」
この感覚に彼は耐えられなかったみたいで、叫び声を上げている。
もうアルタイス領にある屋敷の上に着いているのに……。
下の方では衛兵さん達が何事かと私達の方を見上げている。
そんな中をゆっくり降りていく私達。
「急に来てごめんなさい。お父様はまだ居るかしら?」
「ああ、ここに居る」
後ろを向いていたから気付かなかったけれど、衛兵さんと同じ格好をしていたお父様と目が合った。
なんとか間に合ったみたい……。
私達の話が少し途切れたところで、そんなことを口にするグレン様。
すると、村の人はこんなことを口にした。
「元々、我々の村はこの辺りの村としか交流がありません。
他の村も同様ですが、先週は王都から返ってきた者が居ました」
「交流が無いというのは、街との往来が無いという事だな?」
村の人の発言に対して、そう問いかけるグレン様。
今の言葉で意味は分かっていたみたいだけど、念のための確認みたい。
「はい。しかし、先週は王都から返ってきた者が居まして……」
「その者は、王都で病に罹ったところを聖女パメラ様に治して頂いたそうなのです。
しかし、どう見ても病は治っていませんでした。顔色が悪いのに、元気に振舞っていました。
不思議だったのは、本人が無理をしている自覚が無かったんです」
その言葉を聞いて、不穏な空気を感じてしまう私。
この病が治らないまま無理をして、一週間経ったということは……。
「我々が休ませたので、幸いにも彼は自力で回復しましたが、そこから病が広まったのです」
最悪の状況を想像してしまったけれど、無事で良かったわ。
けれども一歩間違っていたら取り返しのつかない事になっていたから、この自覚症状が無い状態の原因は探った方が良さそうだ。
「なるほど。病の自覚が無くなったのか。
その人物に会う事は出来るか?」
「はい。呼んできます」
グレン様も同じ考えになったみたいで、その人を呼ぶように指示を出した。
「お待たせしました。彼が王都から帰ってきた者です」
紹介された人からは、人の感覚を狂わせる魔法――幻惑魔法の気配を感じた。
きっと、この魔法で症状を感じられなくなっていたのね。
痛みも苦痛も感じられない状態だから、足の指の骨が折れているのにも気付いていないみたい。
「幻惑の魔法……」
「レイラ、それは本当か?」
うっかり出てしまった私の呟きはグレン様に聞こえてしまっていて、問い返されてしまった。
治癒魔法をかけながら、問いかけに答えようとする。
「はい。私の感覚が違えたことはありませんから、間違いは無いと思います」
「そうか。
君はパメラに治癒魔法をかけて貰ったそうだが、パメラは平民には治癒魔法をかけてくれないはずだ。
一体、どんな手を使った? もしくは、その聖女が偽物か、だ」
グレン様は他の違和感に気付いたみたいで、そんな問いかけをしている。
言われてみれば、あのパメラ様が彼のような平民を治すことを受け入れるとは思えない。
事実として病は治せないから、何もしていないみたいだけど……。
「実はとある商会に貢献をして、大金があったんです。
病を理由に辞めることになったんですが、大金を払えばどんな怪我や病も治してもらえることを耳にしたんです。
まさか、平民の私が王宮に入ることになるとは思いませんでした」
「それなら、偽物の可能性は低そうだ。
あまり考えたくないが、パメラは病を治したと偽って、幻惑の魔法をかけて誤魔化していたことになるな」
「闇医者と同じ手口ですわね……」
一瞬何もしていないと思ったけれど、何もしないよりも酷いことをしていたみたい。
こんなことが許されるだなんて、今の王家は何を考えているのかしら?
グレン様も酷い表情を浮かべて王都の方を睨みつけている。
「これを指示したのが王家なのかは知らないが、今後は王都との往来を無くそう。
情報感謝する。また何かあったら来るが、出迎えは最低限で良い。
俺達はこれから他の街に指示をしに行くから、これで失礼する」
「分かりました。
レイラ様、本当にありがとうございました!」
簡単な挨拶を交わして、私達はブランの背中に乗って村を後にした。
眩しい太陽を直視しないように後ろを向く私。
みるみる離れていく地面と、私から少し離れたところに座っているグレン様が目に入る。
彼も後ろを見ていて目は合わなかったけれど、お願いしたいことがあったから彼に近付いてから口を開いた。
「グレン様。
すぐに終わるのでアルタイス邸に寄っても良いでしょうか?」
「分かった。義父上にこのことを伝えるのだな?」
「ええ。流行り病を領地に入れる訳にはいきませんから」
私の家なら上手く対策出来るはずだけれど、初動は早い方が良いのよね。
だから、ブランに急いでアルタイス邸に向かうようにお願いした。
「しっかり掴まっててね」
「うん」
「ああ」
直後、普段は感じられない加速感に襲われる。
「うわああああ!?」
「グレン様、叫びすぎです」
この感覚に彼は耐えられなかったみたいで、叫び声を上げている。
もうアルタイス領にある屋敷の上に着いているのに……。
下の方では衛兵さん達が何事かと私達の方を見上げている。
そんな中をゆっくり降りていく私達。
「急に来てごめんなさい。お父様はまだ居るかしら?」
「ああ、ここに居る」
後ろを向いていたから気付かなかったけれど、衛兵さんと同じ格好をしていたお父様と目が合った。
なんとか間に合ったみたい……。
25
お気に入りに追加
2,348
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる