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第1章

29. サボっていたようです

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 ブランの毛の心配は後にして、今は気配の消し方よね……。

 でも、どうすればやり方が分かるのかしら?

「ブランはどうやって気配を消してるの?」
「身体の奥に閉じ込める感じだよ。身体の外側に出すと威圧になるんだ」

 そんな説明をしてくれたから、早速試してみる。
 すると、村長さんがピクりと動いた。

「そうなのね。これで出来ているかしら?」
「この一瞬で習得されるとは、恐ろしいですな」
「魔力の扱いには慣れているつもりですから」
「慣れているだけでこんなに弱そうな気配を出せるのは、才能ですぞ」

 そんな褒めているのかよく分からないことを言われて、戸惑う私。
 ちなみに気配の消し方は、魔力を全て身体の奥に押し込めてしまえば出来るみたい。

 もしも魔力を探る道具で探されることになったら、役に立ちそうね。
 これくらいなら無意識にでも出来るから、疲れないもの。

 もし魔物を追い払いたいときは、今まで通りに魔力を出せばいいみたいだから、状況で使い分ければ便利そう。
 威圧がどんな物かは分からないけれど、使うことは無いわよね……。

「そろそろ次の村に行こう」
「分かったわ」

 一通り話も聞けたから、他の村で話を聞いた方が良さそうだから、簡単に挨拶を交わしてから空へと舞った。



 それからは、魔物にも遭遇するようになった。
 気配を殺しているお陰かしら?

 でも、目当ての魔物の大群は全く見えない。
 魔物に荒らされた跡がある村も見えない。

 そもそも、魔物は好んで人を襲ったりはしないのよね。

 例外はあるけれど、近付かなければ襲われない。
 もしも魔物に近付かれた時は、襲われてしまうけれど。

 ……結局、領地の端まで言っても、魔物の大群が生まれた痕跡は見つからなかった。

「領地はここまでだから、戻ろう」
「うん、わかった」

 諦めて屋敷に戻る私達。
 帰りも魔物には襲われなくて、お昼前には戻ることが出来た。

 途中で洗濯機にするための鉄の容器も手に入れたから、昼食の時間になるまでに完成させたい。
 というわけで、部屋に戻ってから魔道具を作るための道具を広げて、作業を始めた。

 今の服装は、動きにくいワンピースではなく、ズボンとシャツを着ている。
 男性が着る前提のデザインのものだけれど、ポケットが多いから便利なのよね。

 帽子を深くかぶって髪を隠していたら、男の子に見えるかもしれないわ。

「少し抑えててもらえるかしら?」
「こんな感じで大丈夫ですか?」
「ええ。ありがとう」

 動かないようにするための台の上に筒を乗せて、水を流すための管を繋いでいく。
 それから、底に小さな穴を空けていって、水を流せるようにする。

 あとは私が考えた、捻るだけで水を流したり止めたり出来る栓を付けて……。

「運ぶの手伝ってもらえるかしら?」
「承知しました」

 力持ちの護衛さんの手を借りて、洗い場に近い部屋に洗濯機を置いた。
 ちなみに、この部屋はお手洗いに近いから、要らない水を流すための管を通しやすいのよね。

 要らなくなった水は、地下水路を通って、川に向かっていく。
 だから、地面の上に水溜まりが出来る心配も無いわ。

 おまけに井戸まで往復しないで済むから、かなり楽になると思う。

「この辺で大丈夫でしょうか?」
「ええ、ありがとう」

 場所が決まったら、台の中に石を入れていって、動かないようにしたら完成だわ。
 石はカチーナとブランと手分けして運んだから、数分で終えることが出来た。

「無事に動きますように……!」

 手を合わせてお願いしてから、大量の洗濯物を放り込む。
 それから洗剤を入れて水を満たしたら、水の流れを作る魔道具に魔力を流した。

「……動きましたね」
「ええ。でも、ここで壊れることもあるから、まだ油断出来ないわ」

 それから黙って様子を見守る私達。
 いつの間にか、このことを嗅ぎつけた侍女さん達も集まっていた。

 視線を感じながら、水を抜く栓を開ける私。

「成功だわ」

 顔を上げて口にすると、周りから拍手を送られた。

「これ、どうやって使うのでしょうか?」
「こっちが水を入れる魔道具で、こっちが水の流れを作る魔道具になってるの。
 だから、まず洗濯物と洗剤を入れてから、水を入れるの」
「なるほど」

 侍女さん達全員に向かって、使い方を説明していく。
 途中からは実際に動かしてみて、すすぎ終えてからは、みんなで干したりした。

「手伝ってくれてありがとう
 ところで、みんなの仕事は大丈夫なのかしら?」
「……」

 少し問題もあったけれど、今日くらいは見なかったことにしようかしら?
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